『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 32 巻 「ラストダンス」
いつもの 3 人が表紙を飾りました!
しかし、「スケット団の 3 人が笑っている表紙」は初めてです。いくつもの「初めて」が詰まった最終巻に なりました。
──そう、この物語も終わりなんですよね……。
最後まで湿っぽくならずに、作者が描きたいことを描ききった作品だと思うので、自分も笑いながら(は怖いので無表情で)感想を書きます!
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Reviewer: あじもす @asiamoth,
第 280 話 「ラストダンス 1」
前回のラストでいきなり登場した一丸 龍成(いちまる りゅうせい)は、想像を上回る異常さでした。
新理事長が提案する「学園改造計画書
」は、まるで全校生徒が『暗殺教室』の E 組並の息苦しさです。
ただ、成績順にクラス分け
をするような学校に通ったことは ありませんが、「私立には よくあること」なのでしょうかね?
──そうそう、サラッと書いたけれど、開盟学園高等学校は私立です。
逆に、これだけ自由な校風の私立高校も珍しい気がする。私立と言えば「学業が一番!(キリッ」という印象です。
開盟も元々は規則や服装に厳しい学校だった
けれど、安形 惣司郎が今の自由すぎる校風を作り出しました。たった一人で とんでもないことをしでかしましたね!
SKET DANCE #開盟学園関係 – Wikipedia
そう考えていくと、一丸が やろうとしていることは、元の開盟学園に戻す行為にも思える。
今の開盟に なじめなくなった お堅い教師も多くいるはずです。新理事長の方針に賛同する意見も多いでしょう。
ボッスンも、理事長に「私が経営する 私の学校だ
」と言われたら何も言い返せない。
つい、自分は嫌われているキャラをかばってしまう。
とくに一丸は、「嫌われるためだけに出てきた人物」とは違います。彼の極端すぎる「個性を警戒する教育方針」には理念が ある。しかも、私的な感情──自分の子である友貴(ユウキ)のため──が見えます。
自分の子どもに「【友】だちが【貴】重」といった意味を感じさせる名前を付ける親が、本当に個性を切り捨てようと思うはずが ありません。
とはいえ、ボッスンたちが「本当は理事長もイイ人やから……(震え声」と思わなくて良かった。
普通の高校生だったら、「卒業するから いいや」となっても おかしくない。自分は、そうやって学校の問題を見て見ぬふりしてきました。いまでは何が問題だったのかも思い出せません。
でも、そんなのスケット団じゃないぜ!
第 281 話 「ラストダンス 2」
「スケット団 最後の仕事
」は実に この作品らしい!
バトル・マンガ的に挑戦精神を盛り上げながらも、やることと言えば「ユウキくんを文化祭で楽しませて しゃべらせること」という地味さです! これが良い!
地味ながらも、頭脳派で器用なボッスンにしか解決できないような難問です。ちゃんと主人公が活躍できるラストが待っていました。
これが、「他校の不良生徒が開盟に最後の戦いを挑んでくる」とか「ネットワーク回線から開盟がハッキングされる(どうやって?)」だったら、ヒメコやスイッチが目立って終わる──のも『スケダン』らしいかも……。
出し物を決める場面も地味に楽しい!
今の騒がしい 3-C に進級してから、こうやって同級生同士が かけあいマンザイのように話し合う場面は、意外と少なかったからです。せっかく個性的すぎる面々なのに、ちょっと──いや、 もったいない。
前巻・前々巻と読み返してみると、物の見事に「スケット団と依頼人が わいわいやる話」ばかりです。これこそ『スケット・ダンス』ですケドね。
できれば、早乙女 浪漫が しゃしゃり出てきて「この期に及んで ちゃっかり王子をかっさらっていく企画」を出して欲しかった。
もう、彼女の初恋(?)は終わったのかな……。
「劇場型ウォークラリー
」は最高に おもしろそう!
これは、全国の学校でマネする生徒が多いのでは? ぜひ実行して欲しい! 作品は終了してもファン・レターは作者に届くから、その様子を写真付きで贈ると喜ぶはずです!
ウォーク・ラリーも現実世界での RPG も、すでに定番と言っても良いイベントでしょう。
しかし、その両者を組み合わせて、学校の文化祭で行なうような例は珍しい。参加者はもちろん、作っている生徒たちが一番 楽しいでしょう。
なにより、生徒の心が「一つになった
」感が最高!
第 282 話 「ラストダンス 3」
藤崎 佑助と吉備津 百香が【意味深】です!
カレシ(では まだが)との仲が悪くなった時に、ほかの男性に相談する──。
これって、一番ネっトリとした状況じゃないですかー!
しかも場所は夕焼け(朝焼け?)の河原で、その後の 2 人の行動(ドコへ行ってナニをした!?)をボカすという──読者に想像の余地を残しまくる表現がニクい! このあと、ボッスンの顔がオトナっぽくなった気も!?
真夏の薄い本が厚くなるな──。
島田 貴子のツッコミが的確で良かった。
次のページでギャグにしているけれど、「ユウキくんに 合わせてる
」と言われるほどの案を考えて当然です。そうでもしないと、高校三年生の卒業を前にして退学
(クビ)ですよ!
それでも、「ひとこと言わずには おられない」という島田の性格が表われていて、自分は好きな一コマです。できれば、将来に新聞社で働くことになっても、その公明正大さを忘れずにいて欲しい──。
今回のイベントでは、ヒメコの特性が生かせない。
──最初は そう思っていたら、鬼塚 一愛の国語力をちゃんと使っている。さすがですね!
でも、お話を作ることは、国語の授業では習いません。自分は知りませんが、大学でも専門の科目でしか教えないのでは?
ヒメコが考えすぎた つまらないシナリオは、『斉木楠雄のΨ難』で あった「くそゲーあるあるネタ」みたいです。
でも、設定が くどくて 頭に入って こない
ゲームでも、名作と呼ばれる作品も多い。紙一重です。
たとえば、『スカイリム』を最初にプレイした時も「固有名詞、多ッ!」と思った。字幕付きじゃないと聞き逃すし、それでも覚えられない。でも、おもしろいんだよなー。
野菜の国
の「ベリタブル・ベジタブル
」と言えば!
オレら世代(何年代?)には、当然のように『サラダの国のトマト姫』を思い出します。
あの理不尽なコマンド入力を再び──いや、いっか。
そんなことは さておき。
「レイ■目」のように ふらっ ふら
だったり、照れたり泣き出したり、今回のヒメコは妙に かわいらしかった! ここぞとばかりに(やや個性的な方向へ)女子力を発揮しています!
卒業へ向けて、そろそろ本気で攻めないと本丸が落とせません。あの男には通じないけれど……。
友貴は、明らかにスイッチのために作られた人物です。
それだけに、ちゃんと笛吹 和義も彼らしい仕事をしていました。スケット団が 3 人とも重要な役割を果たしていて見事です。
中学生のユウキからしたら、同じような状況にいる高校生と話せることは、うれしいし貴重でしょう。
ただ、現時点で友貴が「スイッチも しゃべらないこと」を知っているかどうか不明です。昔 ひきこもってた
ことも、今回で初めて語られました。
しかし、スイッチの現状にかかわらず、誰かが語りかけること自体、今の友貴には必要なことです。この点を理事長は──父親は理解していない。
第 283 話 「ラストダンス 4」
まるでミステリィの謎解きです!
ユウキの しゃべらない理由
も いじめの原因
も、今回までで読者に提示されている! ──しかし、自分にはサッパリ分からなかった。
読み返すと、たしかに不思議な演出のコマが目に付きます。ニクい!
スイッチが間男・ボッスンを問い詰める場面は笑った!
とくにボッスンのウソがヘタすぎて良い。話の流れからして「メールで話した」と ごまかせたはず。それなのに、「現役アイドル声優との密会現場
」を思い出して あたふた
していまう。
将来も浮気が できなくて安心ですね!
そして、さりげなく(?)ライアンを出している。
後半の感想でも書きますが、この「ライアン押し」は週刊連載の時から違和感を覚えていました。作者がどの時点で どこまで考えていたのか、想像すると楽しみが広がります!
おわりに
ユウキの謎のヒントに気がつかなかった。
その理由の一つは、「文化祭前日の楽しさ」が まぶしすぎて、その空気だけで腹いっぱいだったからです。ただし、頭には「架空の世界での」が付く。現実世界の文化祭は、ひたすらに面倒くさかったな……。
それに、自分が参加した文化祭では、クラスで おそろいの T シャツをわざわざ作るような、気合いの入ったモノではなかった。みんな、どことなく「やっかいごと」のように感じていた気もします。
「ゲーム」と聞けばファミコン──じゃなくて『パズドラ』を想像するような現代においても、文化祭を楽しむ学生は多いのでしょうか?
自分は「懐古厨」ではないけれど(今のほうが好き)、それでも「学生は昔ながらに こうあって欲しい」という希望めいたモノを持っています。子どもがいたら、押しつけていただろうなぁ。
学生には、学生時代にしかできない遊びや勉強を楽しんで欲しい!