『暗殺教室』 第 100 話 「『死神』の時間」
記念すべき第 100 話です!
──が、とくに増ページでもカラーでもなく、形式的には通常どおりでした。編集部に連載 10 週年を忘れられた『銀魂』よりは数万倍マシだけれど。前回がカラーだから、良いか。
その代わりに、内容がスペシャルでした。
題名どおりに、いよいよ「死神」が本格的に姿を現わしています。彼(?)は いつも急に現われて驚かされるのですが、今回は一番ビックリしました!
こんな人間(?)に E 組は勝てるのだろうか……。
個人の時間と個の力
殺せんせーはイリーナを探しに行かなかった。
この点が疑問で、もしかしたら伏線かとも思っています。つまり、死神の目を欺くための策略ではないか、と。
しかし、あの監禁状態を知っていながら平然としているなんて、殺せんせーの性格からは考えられません。やはり、捕まっている事実を本当に知らないのでしょう。
そもそも、イリーナの自宅を殺せんせーは知らない可能性があります。
普通の「教師」ではないため、イリーナや烏間(と もちろん殺せんせーも)学校側に住所を教えていないかも しれない。
学校ではセクハラ三昧(※)の殺せんせーも、プライベートでは(触)手を出さないだけの分別は ついているでしょう。
(※→それが一番の問題だ!)
冷淡さも利用
一方、烏間 惟臣は分別が つきすぎています!
「冷たすぎる」と言っても良い。たしかにイリーナ・イェラビッチは、経験を積んだ プロフェッショナル
だし一人前の 大人
です。
それでも──、同僚に対する思いやりや優しさをみじんも感じられなかった。
当然、「監禁されている」なんて考えていません。
あんな怒り方をして帰ったのだから、「機嫌を損ねた」としか考えられない。
だから烏間も殺せんせーも、ある意味ではノンキに見えてしまう。あとから「もっと早くに探していれば──」と後悔する顔が目に浮かびます。
それが死神の作戦なのでしょう。
ただし、花束を烏間が渡すことや、直後に冷たい言葉を言うことまでは、さすがに計算外だったに違いない。たぶん、「イリーナの現状を探る」ことまでが計画で、今回は うまく事が運びすぎたのでは?
しかし、神であれば──すべてが計算どおり?
命の意味
ロヴロ・ブロフスキは生きていた!
いや、「死神に生かされた」が正解でしょう。しばらくは手出しができないようにして、烏間たちに「死神の恐ろしさ」を伝えさせるために、わざと命を奪わなかった──と見ました。
これで烏間も、イリーナの身の危険も察したのでは?
もしもロヴロからの連絡が あと数日でも早ければ、イリーナが姿を消して すぐに探しに行ったでしょう。──たぶん、(烏間ではなく)殺せんせーが……。
そこまで考えて恐ろしくなったけれど、ロヴロが早く目を覚ましていたら、また死神が眠らせていたでしょうね。
今後は永遠に──。
安心できる驚異
死神の登場シーンが恐ろしい!
あまりにも自然に教室へ入ってきたので、2-3 コマ読み進むまでは違和感を覚えませんでした。不破 優月の優しそうな視線や、岡野ひなたの親しげな言葉が、読み返すと寒気を感じます!
そのあとの「全員に 平等に 行き渡るよう 小分けに
する」話でも、本当に「授業
」でもしているみたいな穏やかさが怖かった。
この「さりげない狂気」は 松井 優征先生の得意とするところです!
これまで死神の話題が出た時には、ガイコツのイメージで恐がらせて いました。それだけに、安心 できる
死神の姿が、逆に恐るべき存在だとハッキリ分かります。
「警戒できない
存在が一番 怖い
」
──赤羽カルマと奥田 愛美の会話も効果的でした。かなり前の話だけれど、すでに死神の存在は知らされています。作者のなかで、いまの「花屋」の印象も決まっていたのでしょうね。
暗殺教室 第 74 話 「怖い時間」 蚊と闇夜ほど怖いものはない | 亜細亜ノ蛾
おわりに
サッカーの にわかファン
ネタが面白かった!
ツイッターなどを見ても、見事なまでに誰もサッカーの話なんて していません。あれだけ熱狂していた(させられていた)のに?
「普段は 野球派
」という人すら現在では少数派で、テレビ番組の話題(や仕事・育児・学校など自分のこと)しか話さない人が大多数でしょう。そんなもんだ。
今週号の『食戟のソーマ』とも共通点を感じました。
「敵対している相手をも信頼する」と言えば、少年マンガにおけるライバル同士で よく見る場面です。ただし、従来は(純粋な心を持つ)主人公側の特権でした。
ところが、『暗殺教室』も『食戟のソーマ』も、「邪心の塊にしか見えない敵役」が主人公側を信じています。ここが目新しかった。
考えてみれば、純真無垢な心の持ち主のほうが、思考はトレースしやすい。ようするに「だましやすい」わけです。
『HUNTER×HUNTER』でも親子で主役交代劇が あったし、時代は「ひねくれ者の主人公」を求めているのかも?