『進撃の巨人』 17 巻 諫山創 – 親子の縁を斬る

シェアする

諫山創 『進撃の巨人

Wine barrels 招かざる訪問客の──大口を叩く

オレたちの戦いは終わった……!
──といった空気の表紙です。とくにエレンのボケボケした顔が印象的でした。この「他人ごと」な感じは本編でも見られます。
しかし、泥沼の争いは これから始まる──。

規格外の怪物

ロッド・レイスの変化に意表を突かれました。
超大型巨人」よりも巨大な巨人が存在するとは驚きです! しかし、巨体すぎて頭が上がらない姿は、なんとも惨めで哀れにすら見える。まさかのサシャとの「土下座対決」が実現するか!?(しません)

女神の働き

ヒストリア・レイスは多くの仕事を成し遂げました。
まず、グリシャ・イェーガーの濡れ衣を晴らしています。身内を殺害した張本人を弁解することになるとは、「クリスタ・レンズ」時代には考えられなかったでしょう。

そしてヒストリアは、父親と「お別れ」します。
全人類を巻き込む大芝居に なるはずが、ヒストリアが手を下しました。たんなる偶然ですが、運命としか思えません。リヴァイ兵士長にタンカを切ってまで参戦した甲斐が ありましたね! ヒストリアが切ったモノは「肉片」にしか見えなかった。しかし、彼女にはハッキリと父親だと分かっている。それを自覚した上で、よく親子喧嘩に終止符を打てましたね。
ヒストリア自身の手で王冠をつかみ取りました。


孤児院の院長となったヒストリアは楽しそうです。
ヒストリアは「牛飼いの女神様」と呼ばれている。奇跡を起こして民衆を率いながらも、質素な暮らしを送っています。
──たしかに救世主そのものだ!

戦士の憂鬱

久しぶりにエレン・イェーガーが活躍しました!
エレンは まだ、巨人を操る能力をうまく使いこなせて いません。「調査兵団最大の兵力」と呼ばれ期待されても、目を背けることしか できなかった。その あげくに、作戦中に回想に ふけってしまう。
このまま何もせずに終わると思ったら、グリシャに会心の一撃を食らわせました! 下手をすれば自分自身も吹き飛ぶ危険な作戦なのに、よくぞ成し遂げましたね! 火薬の量が ちょっとでも多かったら危なかったな……。


始祖の巨人の力」こと「座標」は扱えるのだろうか。
初代王の思想」に囚われず、なおかつ力の真価を発揮する。──それが可能に なれば、巨人の驚異が一掃されます。
もしも、エレンが座標を持っていたら真の力は使えないとする。たとえば、ロッドが試みたように、ヒストリアが巨人化してエレンを喰うことで達成できたなら──。
エレンは その道を選ぶだろうか?

夢のあと

ケニー・アッカーマンの回想に衝撃を受けました!
リヴァイの本名は、「リヴァイ・アッカーマン」で確定でしょう。リヴァイの母親はクシェル・アッカーマンで間違いない。そして、ケニーとクシェルは兄妹です。
──その上で、まだ「リヴァイの父親はケニー」という可能性も残っている。
しかし、真実が明かされることは──もう二度と無い。


ケニーの夢は最初から閉ざされていました。
ウーリ・レイス対等な世界大いなる夢だとケニーは語っている。初めから資格を持たなかったケニーは、その夢に たどり着くことはない。
──そう知ったときに、ケニーは何を思っただろう。


「人の親には なれない」とケニーは言い残した。
その最期の言葉を聞いたリヴァイは、どう受け取っただろう。ケニーに巨人化の注射を打って延命して欲しかっただろうか。

いずれにせよ、ケニーは立派にリヴァイの父親でした。
育ての親から遺志を受け取り、リヴァイは先へと進んでいく。ヒストリアに殴られても「お前ら ありがとうな」と笑顔で礼を言えました(「女王様ご褒美」に感謝したわけでは ない)。

武器と代償

エレンの硬質化の能力には無限の可能性が あります!
処刑台」を量産できれば、巨人の駆逐も効率よく進むでしょう。大がかりだけれど原始的な兵器は、知恵の足りない巨人にはピッタリです。

しかし、エレンの消耗も気に掛かる。
今は鼻血を出す程度で済んでいます。しかし、硬質化によって「何」を疲労しているのかは分からない。通常の運動のように疲れるだけなのか、それとも命を削っているのか……。
それでも、エレンが自分からは止めないでしょう。

獣の中身

獣の巨人」の正体は、なんと!
──新キャラでした(ズコー)。あの「鎧の巨人」ことライナー・ブラウンを圧倒するほど強い男です。巨人の姿のままで普通に話せているし、この男が現時点では最強でしょう。
メガネが印象的なので、初見ではザックレー総統かと勘違いしました。サディスティックっぽいので、兄弟だったりして……?

獣の巨人の目標は、エレンが持つ「座標」の力です。
つまりはエレンを捕らえて食べようとしている。当然のように超大型巨人のベルトルト・フーバーとライナーも加勢するはず。誰か 1 人でも やっかいなのに、3 人(以上)に襲われて勝ち目は あるのか……。

笑いの帰還

われらのサシャ・ブラウスが帰ってきました!
サシャと言えば、「」「放屁」──じゃなくて「ギャグ担当」ですよ! ここのところ、■殺しに かまけてギャグをお休みしていました。そんなサシャが、久々に はっちゃけています。
土下座しながら下から目線で悪口」という新たな技を生み出しました! 自分を含めて仲間の命を救ったエレンに対してヒドい言いようだ。
にらみを利かせるミカサ・アッカーマンが怖い!

おわりに

いくつかの謎が明かされ、また謎が増えました。
エレンが昔に見た男はキース・シャーディス教官なのか。エルヴィン・スミスが望む「」とは何だろう。獣の巨人たちが座標を手に入れたら、人類が滅ぶほどの事態に陥るのか──。
その答えが出たあとで、また別の謎に悩むでしょう。


セミの小便よか効いてるようだ
──砲撃に対するリヴァイの評価に引っかかりました。あの世界には「セミ」が存在するようです。受け答えからすると、ハンジ・ゾエもセミを知っている(なんとなく受け流しただけ?)。
壁の中にはサルすら生息していないため、「獣の巨人」や「さる(平仮名で表記)」と呼ぶ人が多かった。壁内には家畜以外の動物は いないのでしょう。
それでは、セミは どこにいるのか?

リヴァイは壁の外で蝉の鳴き声を聞いたのだと思う。
そのあとで、エルヴィンあたりに その正体を聞いたのかな。あるいは、リヴァイ自身が文献で調べたのかも しれない。

セミは日本以外にも生息している。
ただ、作中に出てくる古代語(?)が あきらかに片仮名です。以上から、この作品の舞台が(元・)日本である可能性が高まってきました。