『HUNTER×HUNTER』 No.352 「厄介」
「厄介」と言えばヒソカ・モロの代名詞です。
「伸縮自在の愛」(バンジー ガム)は くっつけられた時点で ほぼ終わりになる。ヒソカに攻撃されても防御してもダメです。あるいは、面と向かって堂々と飛ばしてくる。
さらには「薄っぺらな嘘」(ドッキリ テクスチャー)でダマしてきます。奇術師らしいトリッキィな戦法は、鍛え上げられた体術で補完されている。
──しかし問題児は もう一人いた。
- ゴン vs. ヒソカ戦: HUNTER×HUNTER 7 巻 「これから」 2 – 水を見て水をあける | 亜細亜ノ蛾
悪でも心技体
対するクロロ・ルシルフルも厄介者です。
ただでさえ「盗賊の極意」(スキル ハンター)による念能力の収集が手強い。さらには「栞のテーマ」(ダブル フェイス)で能力のコンビネーション技まで使ってきます。両手を使った体術も解放されました。
クロロは慎重な性格まで兼ね備えている。
強者が負ける理由の多くは油断です。臆病者ほど長く生き残る。天空闘技場でウィングの殺気に飛び退いたキルア・ゾルディックを思い出しました。
確実に勝てる条件が揃うまで
待つ
──。ちょうど今週号の『僕のヒーローアカデミア』に出てきた人物にも似ている。自意識過剰なラスボス像は、すでに前世紀の遺物です。
死の印
「番いの破壊者」は そこまで脅威ではありません。
──と前回の感想に書きました。まず、爆発力を増す条件が厳しい(対象に3~5秒程 触れ続ける
)。いくらでも解除のスキがあると考えたからです。
ところが新たな情報が加わりました。
「サン アンド ムーン」は一度 刻印されたら消せない
……! 「ブラック ボイス」と同様に一度でも食らったら終わりです。
ヒソカの「バンジー ガム」も「付けられたら最後」と言われてきました。しかし、それは相手が格下の場合です。クロロにガムをくっつけたところで、逆に接近戦でスタンプを押されてしまう。
「番いの破壊者」の除念は できるだろうか?
除念師であるアベンガネの念獣は、死によってより強まる念
を食べた描写はない。ゲンスルーたちの「命の音」(カウントダウン)解除にも一苦労でした。死者の念ならゴジラ並みの怪物に なるのでは……?
また、アベンガネは消息が不明です。クロロの念を解除した後、幻影旅団に捕まった可能性が高い。もちろん、団長に念を奪われているでしょう。
除念師の存在は貴重です。瀕死のゴン・フリークスを治せる能力者は、ハンター協会でも見つけられなかった。
やはり「番いの破壊者」は刻印されたら最後でしょう。
手札の枚数
クロロは旅団員の能力をいくつ持っているのか?
まずはシャルナークの「携帯する他人の運命」(ブラック ボイス)を使ってきて驚きました。さらにはコルトピの「神の左手悪魔の右手」(ギャラリー フェイク)まで使いこなしている。
この二つの能力は発動さえすれば強力です。
シャルナークほど完全に対象を操作しなくても、戦力を十分に伸ばせる。コルトピみたいに「ビルを50棟分コピー」しなければ、すぐさま実戦で使えます。
しかし、フランクリンの「俺の両手は機関銃」(ダブル マシンガン)は どうだろう? 彼のように「指を切断する」覚悟が なければ、おそらく「豆鉄砲」のような威力になる のでは?
今のところ「スキル ハンター」は発動後の制約が少なそうです。しかし、今後は元の能力の「劣化コピー」という面も出てきそう。
ヒトかモノか
「人間の証明」(オーダー スタンプ)も手強い。
これで団長は生きている人間も死んでしまった死体も「駒」として利用できます(※)。つまりは、観客席の人間を操りながら、刻印を押す機会を狙える。
(イルミ・ゾルディックの針は、頭部に刺せば生者も死者も操作できた。しかも何人も操っている。念を溜める時間がかかる とは言え、並の念能力者の何倍も強力だ)
この能力名は興味深い。
持ち主は別人ですが、なんとなくクロロに似合っています。クロロは何度も「人間」について興味を持っている。クロロは自分を掴むカギ
についても過去に語っていました。
これらを総合すると、まるで「ヒトではない存在」が「ヒト」を知りたがっているように思えます。クロロは暗黒大陸から来た亜人間なのか!?
また、本当にヒトでは なくなったジャイロも思い出します。彼は今どこにいるのか……。
借り物の姿
「転校生」はラブコメ・マンガみたいな能力名です。
「コンバート ハンズ」の元ネタは、映画『転校生』でしょう。原作は『おれがあいつであいつがおれで』です。ドラマ版やマンガ版も有名ですが、もともとは山中 恒氏の児童文学書ですね。
入れ替わり・性転換ネタは繰り返し題材に されてきました。たとえば【以下、3万字を省略】
蜜月の崩壊
いま、流星街は どうなっているのだろう?
キメラ・アントの(自称)女王を駆除した話から出てきていません。あの時は長老たちに依頼され──も せずに幻影旅団は働いている。まだ両者は良好な関係だったに違いない。
- 幻影旅団 vs. キメラ・アントHUNTER×HUNTER 22 巻 「8-1」 1 – 木星と太陽が天を変える | 亜細亜ノ蛾
ところが現在は(クロロ自身が?)長老を消している。
かりに「ギャラリー フェイク」と「オーダー スタンプ」でニセモノの長老を操っているとしても、単純な命令しか与えられない。ゴマカし続けることは不可能です。
つまり、幻影旅団と流星街との関係は完全に決裂したはず。もちろん、旅団員にとって「ふるさとは遠きにありて思ふもの
」(室生 犀星)だと思うけれど。
おわりに
いまになってカストロの偉大さが分かります。
カストロ自身は強化系だったらしい。それなのに、具現化系の「分身」(ダブル)で自分のドッペルゲンガーを作りだしている。人間一人分の念を自在に操作していたのです!
ヒソカですら「分身」の正体に気がつくまでに時間が かかりました。カストロが もっと修行を積めば、ダブルの正体をより完全に隠せたでしょう。強化系を発揮させ、自分よりも強い分身を作れたかも しれない。
惜しい人を亡くしたものだ……。
- ヒソカ vs. カストロ: HUNTER×HUNTER 6 巻 「ヒソカの条件」 2 – 右腕とダンス | 亜細亜ノ蛾