鬼頭莫宏 『のりりん』
(その刃は──丸く収まらない)
「『のりりん』って どんなマンガ?」と聞かれれば、「ラーメン屋の おばさまが語る自転車の うんちく話に萌えるマンガ」と答えます。「なんでラーメン屋?」と聞かれたら、「んがぐぐ」ですけれど。
前巻までの感想はこちらです!
『のりりん』 1~3 巻 鬼頭莫宏 – 性格の悪さが実力差を埋める | 亜細亜ノ蛾
4 巻では、とくに「語り」の傾向が強かった。なにしろ自転車に乗っている場面が すくない。
読者が まったく知らなかった・興味がなかった世界のディープな話を延々と語っていて、それでも面白いのは驚異的です。また、650C 規格の話などは、ロードバイクに詳しい人でも楽しめるはず。
自分の得意なジャンルで たとえると 4 巻は、「キーボードは QWERTY 配列が大多数の現在に、Dvorak 配列や AZERTY 配列の逸品を探す」みたいな話でした。
──まず、「キー配列に種類がある」ことを知っている・意識している人が少数だろうし、上記のアルファベットを見た瞬間に脳が情報を遮断してしまった人が大半のはず。
キーボードに詳しい人は、逆に「いやいやぁー、ここは日本なんだから、親指シフトのことを語ってもらわないと困りますよぉー」などと「たいへん気持ちが良い」口調で しゃべり出したくなる。
どちらの読者にも楽しめる内容で、しかもマンガにしようとなると、とてつもなく難易度が高い。
「人間、生きていれば小説の一本は書ける」といった言葉があって、誰でも得意分野の話なら本 1 冊分くらいは書けるそうです。しかし、マンガはムリだ。描いてみると分かるけれど、4 コマ・マンガですら形にすることは難しい。
恐ろしいほどの話の構成力に酔える一冊でした。
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