『孤独のグルメ』を読もうキャンペーン
今日はゴールデンウィークの最終日、という事で「ゴールデンウィークにマンガを読もうキャンペーン」も最後。ここはとっておきのマンガを──と思ったのですが、ついさっき読み終わった『孤独のグルメ』を紹介します。
未読の方は、まず Wikipedia をご覧いただきたい。
──どうでしょう? おそらくこのマンガの面白さは、まったく全然これっぽっちも判らないと思います。特に「メニュー」で「ぶた肉いため 400 円」とか言われても、ねぇ。しかし、マンガを読み終えてこのページを見ると、ニヤニヤ。おまいら、なに詳細にメニュー解説してんだよ!と。
カルトな人気を誇る本作品ですが、少年マンガにどっぷりハマって「ブリー●面白!」とか「ラ●たん萌えー !!」とかゆってる人には、どうだろう。自分が中高生の時にはまだこの作品は書かれていませんでしたが、はたしてその頃の自分だったら楽しめたか、疑問です。「──オヤジがメシ食ってるのを見て、なにがオモロいの?」とか言っちゃいそう。
そんなわけで、万人に勧められる作品ではないかも知れませんが、読まなくても買うことはできる(© 土屋 賢二)わけで──まぁ、これ以上は自分のクチからは以下略。
きっかけはイン殺
自分はイン殺さんの記事でこの作品を知りました。
そこが不思議なところでね。『孤独のグルメ』というのは、粗筋だけ聞くと凡そつまらない生活漫画にしか感じられない。ところが実際に読んでみるとこれがグルメ漫画以外の何物でもないんだよ。
「粗筋だけ聞くと凡そつまらない」というのはまさにその通りで、xx さんの書評を読んでも「?」だったのですが、なんだか面白そうなことだけは伝わってくる。これは読まねば──と探し回った末に見つけたのは、どうやら貴重な初版本(文庫じゃないほう)でした。ということで、以下のページ数は文庫版とはずれていると思います。
それにしても、「再現画像」て──!(マンガを読んだ人だけが楽しめる一コマ)
詩人・井之頭五郎
それにしても、主人公の井之頭 五郎(いのがしら ごろう)の独白は詩的です。
「朝の 9 時半」から開いている飲み屋で、一番頼みたかったメニューが注文できずに落胆した主人公。そこら中に貼ってあるおつまみの張り紙を、酒が飲めないので恨めしそうに眺めていると、
ごはんがあるのか うん! そうかそうか そうなれば話は違う
ここに並んだ大量のおつまみが すべておかずとして立ち上がってくる
『孤独のグルメ』 p.41
「すべておかずとして立ち上がってくる」なんて、この作品以外では聞く事がない表現です。たかだか飲み屋でご飯を見つけただけで、何か大発見をした様子で、独り静かに興奮する主人公。シヤワセってこういうことなのかも──と、うっかり勘違いしてしまいそう。
先ほどの飲み屋で他の客の注文を聞きながら、
なんだなんだ……みんなこんな朝っぱらから……
……青りんごサワー? 鯛こく? 常連……?
今 ほんとうに 9 時半なのか? なんなんだ この雰囲気は
俺は……夢でも見ているようだ……
『孤独のグルメ』 p.42
──と、独りで勝手に、日常を非日常に変えています。
そうかと思えば、工場地帯のすぐ側を飛ぶ飛行機を見て、
……羽田が近いのか
あんなのが着陸寸前にちょっとしくじってここに突っ込んだら
東京が一回終わるのは 簡単な事だ
まるで 巨人の内臓がむき出しになっているようだ
『孤独のグルメ』 p.80
──と、ちょっと危ない妄想。工場の複雑な配管を見て「巨人の内臓がむき出しになっているよう」なんて、なかなか言えません(FF みたい、はよく聞く)。
あと、公園でカツサンドと缶コーヒーを一人で食べる、というちょっと寂しい食事の際も、
こういうの好きだなシンプルで
ソースの味って男のコだよな
『孤独のグルメ』 p.176
──「輸入雑貨の貿易商」よりも詩人や作家、コピーライタの方が向いているような。「ソースの味って男のコ」ってコピーが付いたカツサンド、食べてみたくないですか?(男女同権が叫ばれる今では、厳しいかも)
とにかく、主人公の食に対する姿勢や、店の客(世間)と自分との距離感に悩む独白が面白い。
うーん……ぶた肉と豚汁で ぶたがダブってしまった なるほど……この店はとん汁とライスで十分なんだな
このおしんこは正解だった 漬かりぐあいもちょうど良い ぶたづくしの中で すっごく爽やかな存在だ
まるで小学校の土曜日に 家で食べるお昼のようだ
なんだかあったかくて いい店じゃないか
『孤独のグルメ』 p.14-p.15
ゆったりとした時間が流れる店内で悩んだり──。
なんていうか……違うな
ここには自分のような商売とはまったく違う時間が流れている……
おそらく自分は こんなふうには生きられないだろう
『孤独のグルメ』 p.35
そうかと思えばデパートの屋上で「青空がおかず」と独りごちたり──。
そうか……都会のぐしゃぐしゃから逃げたければ ここに来ればいいんだな
ここでは青空がおかずだ
『孤独のグルメ』 p.165
まるで、村上春樹の小説に出てきそう。
哲学者・井之頭五郎
この作品の面白さは、主人公の独特な「食の哲学」。
モノを食べるときはね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで 豊かで……
『孤独のグルメ』 p.125
この哲学に土足で入り込んだ者がどうなるか──続きはマンガでどうぞ。
(ところで、このシーンでは店主の背後に「空手家が瓦割りをしている写真」が飾られている。ひょっとしたら店主だろうか。そうだとすると、「アレ」の凄さが判る。芸コマ。)
ref.:
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孤独のグルメ:a Black Leaf
- 作中の魅力的なセリフを引用し、男の、いや、オヤジの美学を紹介
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続・オヤジ塾「孤独のグルメ」に学ぶ大人のマナー:a Black Leaf
- 「ダンディ五郎」の言動に大人のマナーを学ぶ
- 『孤独のグルメ』から、こんなに笑えるツボを引き出せるのが凄い
-
久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』
- 同じグルメマンガとして『美味しんぼ』と比較