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『のりりん』 9 巻 鬼頭莫宏 – 青年 追いやすく 逃げ なりがたし

鬼頭莫宏 『のりりん

勝利が あふれる一杯──と なるのか

ついにレースが始まりました!
開始直前に感じた お祭りのようなワクワク感は どこへやら、走り始めたら真剣勝負で身も心も熱くなります。──もっとも、そのまま お気楽に走っている連中もいるけれど。
タイム・トライアルは そのまま脚力の争いですが、4 時間エンデューロは自転車競技ならではの駆け引きが早くも展開しています! 補給と補水にまで戦法があるなんて面白い!

走る理由

等々力 潤丸子 一典を元気づける場面が良かった!
やっていることに 意味を 見いだせると したら その答えは 自分の中にしか ないだろ」は、シュミで 走っているだけのアマチュア全員に贈る(作者からの)言葉ですね!

老松が言った激励も同じです。
遊びだから な 死ぬ気で行っても 死にゃしねえ時は 死ぬ気でいけ」は、あらゆる趣味を楽しむ人間に向けた声援でしょう。
当然のことながら、いまは公道で山登りをする状況とは違うから、老松は こう言ったわけですね。


それは それとして、トドローのセリフは、もうひとつ面白い点が あります。
桧山さんのことなんて どうでも いいんだよ」と言い切ってしまうと、そもそもノリが このレースに参加している理由が根底から崩れてしまう。
「レース嫌い」のノリは、みんなの後押しで いやいや参加しているわけですが、名目上は「打倒 桧山!」が目標だった。

ということで──、誰よりもトドローがノリのレース参加を望んでいたのだと見ています。
桧山たちのチームに なじめず、いつもひとりで走り続ける等々力にとって、ノリだけが「しっくりくる」コンビなのでしょう。ノリに対してだけはタメぐちだし。

ロード乗りとしてのノリのことは、もちろんリンも お母さんも期待して見ている。しかし、いつもノリの走りを親身になって考えている人物は、何と言っても等々力です。
律義にラーメン屋「輪」へ通い続けているのも、リンの お母さんとも約束を守っているというよりは、あの店に行けば みんなに・ノリに会えるかもしれない──という理由なのでは?

もしかして: KOI

場所は違えども

場所がサーキットに移っても、全員の役割は同じです。
若江 南が はしゃぎまわり、織田 陽子さんが解説役を務め、丸子がケンカを売る。そして、織田 輪は自転車に乗る喜びで充ち満ちています。

しかし、今回のノリは すこし様子が違いました。
タイム・トライアルに負けた後のノリは、いつになく落ち込んでいる。その様子が、『エヴァ』の碇シンジのようでした。
あれだけレースを嫌っていたノリが、けっきょくは全力で勝ちに行こうとする。その「いつもの流れ」は伝統芸のようでした。みんなで よってたかってノリを鍛えようとしていて、何とも幸せ者ですね!

意外な相似

りんの お母さんと東 均の会話が楽しかった。
なにやら悪だくみを考えていそうな陽子さんに「なんで ニヤニヤ してんすか?」と聞く東には、「同じ顔してるヤン!」とツッコミを入れたくなりました。
この 2 人は、「いつも裏でなにかをたくらんでいそうでいて、じつは思ったことをすぐに話してしまう」という点でも似ています。「素直そうで、じつは腹の読めない人」とは正反対ですね(誰?)(オレ)。

同じ顔と言えば、面白い一致が あります。
杏 真理子大田は、男女の性を超えて目が似ていて笑いました。全員「目が線」に なりがちなので、ぱっちりした目の 2 人は妙に目立つ!
もしかして、本当に親類同士だったりして?

鬼的な彼女

オニモモ節が爆発しました!
あの エテゴリラ ギャフンと言わせて?」というセリフは、『タッチ』の「南を甲子園に連れてって」と同じような意味合いが込められています。それなのに、とてもヒロインの励ましには思えない……!

極めつけは「カラモモさん 惚れ直す ね……」に対する「ポキ」という返答ですよ! 「バカップルから将来のカップルに贈る言葉」とも受け取れるから、とくに怒るような発言でもないのに……。もちろん、モモも本当は怒ってはいないけれど、東が本気で「ドキ ドキ」させられたことは事実です。
ただ、カラモモが完全に なじんで きた点では良かったですね。最初からカベやカゲのない集団だったけれど、これからは よりいっそう仲良く遊べそうです。

とうとうノリの前でも本性を現わし始めたカラモモは、ロードの世界でも頭角を現わし始めました。これは本当に「リンのライバル」としての成長が楽しみです!
──当のリンは、何も思っていないけれど。

好敵手は いつも「イヤなヤツ」

桧山の「じつは いい人」臭がスゴい!
トドローもオイちゃんも同じで、「口げんかから始まって仲間になるパターン」が見え隠れします。攻撃の矛先がカラモモさんじゃないという点だけが異なるけれど。
ちょくちょくノリにケンカを売りに来る場面も、落ち込んでいるノリにハッパをかけて励ましているように感じます。

ただし桧山は、ゴミのポイ捨てだけは見過ごせません。
この問題は『なにかもちがってますか』でも取り上げているくらいだから、作者は軽く考えていないはずです。
また、試合中のレース場にゴミを捨てるなんて、事故につながる可能性が高いし、なんらかのペナルティがあっても良いと思う。
勝負の決着が ついて、等々力と老松 同様に仲良くなった後、桧山たちには きちんとゴミの始末をするように誓って欲しい。


門真 洋一と桧山との関係も気になりました。
ドマチは桧山を友だちのように思っているけれど、桧山のほうは まったくドマチには目もくれていません。「シロートくせえ 集団」の一員としか思っていないように見える。
このあたりも、ドマチの「いい人」っぷりを感じます。良い意味でも、悪い意味でも……。


あと、「俺は優しい ぜ」の場面に注目です!
ぞぞ」と寒気が走るモモや、ポカンとしているリンは ともかくとして──、珍しい表情をしている お母さんに笑いました! ──いや、ちょっと恐ろしいか。
桧山は、一番 敵に回してはならない人物に火をつけたのかも。

どこまでも いっしょ

「チーム・カンパイ」のジャージが良いデザインです!
背中に書かれたアイコンの並びが、一番上にビールが来て、その次にラーメンが描かれている。そのデフォルメ具合が愉快です(麺が太くて きしめんみたい)。
リンの おやっさんからしたら、「そこはラーメンを一番にしろよ……(猛獣も逃げ出す眼光)」と思ったに違いない!


全員が同じ服装なので、より「強調」されています。
何がって、女子の胸──のロゴに「ゆがみ」や「カゲ」が できていません。ジャージみょうりに尽きますね!(?)

参考(!?): DASH島の「まな板にしようぜ!」祭り→『艦これ』RJに流れ弾命中 | おたくま経済新聞

おわりに

チーム名が言いにくくて笑えました。
ヒガクマ」は良いとして、「ミナモモ」「ドマミム」はチーム名で応援するとしたら噛みそうですね。マ行が多いなー。

asiamoth: