『バットマン ビギンズ』(Batman Begins)
順番が逆になりましたが、『バットマン ビギンズ』を見ました。
なんというか、本作は「『ダークナイト』の前作」という説明がピッタリ。この映画だけで評価すると、ちょっと弱い感じがします。
大の大人が仮装して夜の街を飛び回る──ということに、『ダークナイト』は(ある程度の)納得を与えてくれました。『──ビギンズ』は、「お金持ちが自己満足でやっている」感じが強いんですよね……。
『ダークナイト』 バットマン対ジョーカー、だけではない : 亜細亜ノ蛾
とはいえ、『ダークナイト』で感動した者としては、前作を見ない手はありません。
ブルースの怒り
ブルースが、「正義感だけでバットマンをやっていない」というのが、『バットマン』という作品のテーマと思います。
ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)は、単純に正義感だけではなく、胸の内には両親を殺された怒りがあり、法に頼れないもどかしさがある。
だからこそ観客は、ほかのヒーローよりも自分たちに近いと感じる、彼を応援する。
ノリの良い執事
執事のアルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン)や、応用科学部のルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)が手を貸すのですが──。どうも、「子どもの正義漢ごっこに手を貸す大人」という風に見えるんですよね……。『──ビギンズ』は。
とくに、アルフレッドの「それにしてもこの男、ノリノリである」感。「こ、コイツが悪の親玉だあー!」と見えてしまいます。
ひょっとしたら、ブルースの父親も(コスプレして)悪と戦ったのでは? いや、もしかするとアルフレッド本人が── !? と思えるくらい、ブルースの仮装趣味(←違う)に理解を示しています。
バットマン誕生
そう、どうも本作で肝心の部分、
「なぜ、ブルース・ウェインがバットマンになったのか」
──を説明する前半の 1 時間が、ちょっと無理があるように感じます。
どうも、お金持ちのお坊ちゃまが、やけを起こして悪の道へ落ちただけ、に見えます。それにしては、成人するまでガマンしていたのか、とも。
影の同盟
ブルースがバットマンになるための力をつけたのは、「影の同盟」という謎の組織。
ヒマラヤ山中にある組織──の割には素人の登山でたどり着けたり、なぜかみんな忍者だったり、親玉が渡辺謙さんだったりします。それはひょっとしてギャグで言ってるのか? とツッコミを入れるべきかどうか、悩むところ。
敵の力を身につける
バットマンは影の同盟から、デビルマンはデーモン(悪魔)から、エヴァンゲリオンはリリスから、戦うための力を得ました。
こういった、敵となる対象がきっかけでなったヒーローは、なにが元祖なんでしょうね?
「正義が悪を倒す」という勧善懲悪ものは、宗教心や道徳心からでしょう。しかし、「悪の力を借りる」なんて退廃的なヒーローは、現代的に思えますね。ただ、その昔から悪に引かれる人は多かったので、起源をたどれば、おとぎ話の世界までさかのぼれそう。
(おっと兄弟。「リリスは敵ではない、そもそも使徒ですらない」などという議論はあとにしてくれい!)
まとめ
いろいろと不満は残りましたが、これで大コケして続編はナシ──にならなくて良かった!。
主役のクリスチャン・ベールも、よく『マシニスト』から体形を復帰したものです。まぁ、『マシニスト』の彼のほうが、本当に「コウモリ男」(骨と皮だけ)に見えましたが……。
『マシニスト』 居眠りする「一年間眠っていない男」 : 亜細亜ノ蛾
ラストシーンも、「悪人でも殺さず」を貫いているはずのバットマンの行動しては、疑問が残りました。
細かく見ると、どう見てもフラグ立ちまくりだった、幼なじみのレイチェル・ドーズ(ケイティ・ホームズ)と、なにかモヤモヤした関係のまま終わるのも現代的。近代のヒーローは、「悪を倒してヒロインと■■■」とは行かないようです。