『バクマン。』 37 ページ 「取締役とトリ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 25 号)
先週号の感想で、平丸の印象を自分は下記のように書いた。
見るからに人付き合いの悪そうでクールな平丸である。きっと、「友だち? 自分には必要ない」などと言いそうだ。グラスを直接手にしないところから、神経質な面も見える。
──どれだけ自分が人を見る目がないか、よく分かるだろう。
平丸一也は、クールな人物ではなかった。なんだか、面白いオニイサンである。サラリーマン時代は、どんな態度で会社へ行っていたのか、ものすごく気になった。
ただ──おそらくは、普通の社員よりも能力があったと想像する。たとえば、営業で外回りなんかをしていたら、本人はイヤダイヤダと言いながらも、「平丸から買いたい」という客が殺到したり。
自分自身は強く望んでいないのに、人よりも多くの才能を持っている──。それが平丸という人物ではないか、と思った。
ひょっとしたら、平丸はワイミーズハウスの出身者かもしれない。こんなジグソウパズルを超高速で完成できたりして。
DEATH NOTEの登場人物 #Lの協力者 – Wikipedia
変な所に 来てしまった
週刊少年ジャンプでの連載を目指す作家は、何人もいる。川口たろう という、それこそ命を賭けて連載を目指した人間もいた。『バクマン。』を読んで、マンガ家になろうとしている読者も大勢いるはずだ。
そのような中で、マンガ家を志望していない平丸という人物を描く意味は、どこにあるのだろうか。
平丸に対して反感を持った人も多いだろう。しかし──今週号を読み進むにつれて、しだいに この人物が好きになってしまった。少しくやしい。
いつものように、「第一印象が最悪で、だんだんと良くなる」という作者のマジックである。
というか、自分は 1 ページ目から始まる「平丸の変顔コレクション」だけで、笑ってしまった。美形なのに面白い顔もできるなんて、ズルい。
働きたくないんだ
平丸のグチが続く。この場面のセリフだけを読むと、本当にどうしようもない男に見える。──実際にそうなのかもしれないが、後半を読むと印象が変わった。それはまた 2-3 日あとで書く(そんな感想書きは、ほかにいない)。
魔が差した
だけで、アッサリと平丸はジャンプでの連載が決まった。──そんなレベルじゃねーぞ! と全力で突っ込みたくなる。
そもそも、マンガを読んだ経験が少ない人が読んで、俺でもやれそうだ
と思えるような作品しかジャンプには載っていない──という意味にも取れる状況だ。
これは、作者からジャンプへの挑戦状なのかもしれない。
このページの平丸は、まるで昔の少女マンガに出てきたキャラクタみたいだ。とくに、エイジから酒を受け取った場面は、そう見える。「読者からのハガキ」コーナあたりからコピーしてきたのではないか、と思うくらいだ。
今回は「平丸語録」の宝庫である。一番の名セリフを引用しよう。
- 平丸一也:
「何故 人間は 働かなくては ならない」
「寝たいだけ寝て 食いたい時に食いたいだけ 食う」
「動物園で 大切に育てられる パンダにでも 生まれたかった」
ということで、「絶対に働きたくないでござる!!!」とパンダが言っていそうな画像を上に載せた。
俺の深層心理か
上に引用した名言を受けて、エイジが平丸に問う。そして、平丸は自分の心理へ目を向ける──。
このコマは深い! まさに、天才同士の会話である。
この 2 人と比べると凡人クラスの亜城木夢叶では、絶句するしかない。読者も同じだ。
ここでもう一つ、平丸先生の素晴らしい言葉を紹介しよう。
- 平丸一也:
- 「吉田氏! 吉田氏は 生きてる事は 楽しいか !?」
人間としての存在理由(raison d’etre・レイゾンデイト)をたずねる、根源的な問いである。
じつは、ここでの「吉田氏」の返し方も、地味にスゴい。
天才は、一人だけでは成り立たないのだ。信者のいない宗教家と同じで、「紙一重」どころか「ナントカ」そのものになってしまう。彼らを支える凡人が必要だ。
平丸が天才マンガ家として成功するかどうかは、担当編集者である吉田の力量にかかっているのだろう。
先ほどは少女マンガみたいだと書いたが、このページでの平丸の描写は『D.Gray-man』のキャラクタみたいになっている。容姿は神田っぽいが、「他人にはドーデモイイことを独りで悩む」言動はアレン・ウォーカーのようだ。シリアスな表情とギャグ顔が混じるところが、ソレっぽい。
そのうち、小畑健先生と星野桂先生とのコラボレーションが見られるのではないか、と想像した。
それにしても、たしかに平丸は話してると 面白い
人物である。現実世界でも、まわりに一人くらいはこんな人がいてほしい。
ウェブ上だと「※ただしイケメンに限る」と言われそうだが、容姿とは無関係に平丸のような人は異性・同性からも好かれると思う。まぁ、程度にもよるが……。
あれこそ芸術です
たっぷりとギャグを描いた後は、一転して(日本で言うところの)ゴシックなフンイキになる。両方とも描けることが小畑さんの強みだ。
新年会だからではなく、たぶん、目の前のアーティストと会うために、蒼樹はいつも以上に着飾っている。めまいがするほどステキだ。
こんな女性から尊敬の念を受けている男は、いったい誰なんだろう?(わざとらしい)
蒼樹は『KIYOSHI 騎士』を強く意識している。表面上は嫌っているように見えるのだが、作者である福田真太に対する好意の裏返しに見えてしまう。そのために、この男と組んで福田を見返したい、というのが真相だと思った。──「よく外れる予想」が売りの自分だが。
ここで、蒼樹紅(あおき こう)の本名が明かされる。名は青木優梨子(あおき ゆりこ)という。ユリからクレナイへと名を変えて理由は、何なのだろうか。──意外と「青と赤」という単純なイメージだったりして。
はっきり していていい
男は、自分に絶対的な自信を持っている。静かな語り口だが、言葉の端から自分を信じる力強さがあふれそうだ。「若きカリスマ」らしい態度である。
このページの蒼樹が とくに美しい。
世間では「美しすぎる」という言葉が、バナナなみに叩き売りされている。この言葉は、蒼樹紅にこそ ふさわしい。
さらに、泣きぼくろと細い眉がギリギリ見えるように描かれた蒼樹の横顔は、「ご飯が何杯でも食べられる」。どういうことかって? それは──