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HUNTER×HUNTER #306 「安堵」 男子三秒会わざれば“凝”して見よ

HUNTER×HUNTER No.306 「安堵」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 21・22 合併号)

(こんな幼虫も、成長すれば蝶に──ならずにこんな蛾になる)

少年マンガが描く永遠のテーマは「成長」です!(断言) 成長と一口に言っても、いろいろありますよね。たとえば──、

第 1 話からじょじょに経験を積んだ主人公が、長い時間をかけて目的を達成したり──、

長期間の修行やらアイテムの入手やらで強くなったり──、

「ひと夏の経験」を経て急に成長したりする。

成長なきマンガは少年マンガではない──とまでは言いませんが(いつまでも学年が変わらなかったりするし)、「マンガに育てられた」という人も多いと思う。自分もその一人です。そういう読者のためにも、友情や努力などの納得のできる理由をつけて、主人公を成長させて欲しいものです。

限界を超えて 舞え !!

ネフェルピトーの“黒子無想(テレプシコーラ)”とは! ──けっきょく、どんな能力なのかハッキリとは描かれませんでした。

そもそもこのマンガ(の作者)は、「マンガとは分かりやすいものであり、読めばすぐ理解できる『答え』が描いてある」──というオヤクソクが通用しないのです。

そこで、衰えつつある自分の眼力(なぜか今回は下書きのように見えるゼェ!)と、つたない理解力とを総動員して、テレプシコーラの本質を考えてみました。

おそらく、シャルナークの“携帯する他人の運命(ブラックボイス)”を自分自身に使った時のように、一時的に筋力などを増強する能力が“テレプシコーラ”なのでしょう。科学者・生物学者的な一面もあるピトーのことだから、薬物を投入しているのかもしれない。

──と思いつつ調べてみたら、Wikipedia にこんな事が書いてある(2010-04-26T22:36:20+09:00 現在)。

黒子舞想(テレプシコーラ)
ネフェルピトーが全力で闘う時に発現させる念能力。バレリーナを模した念人形を出現させ、ピトー自身を操る。能力発動から攻撃までに要する時間は0.1秒を切る。

HUNTER×HUNTERの能力 #キメラアントの能力 ・技 – Wikipedia

うーむ──、こういう「作中には断言されていないこと」に対しては、「──と思われる」と書いて欲しい。「非公式な見解」も、あまりにも大勢が見る場で書くと、まるで「公式な設定」になってしまう。

というか、ピトー自身を操る能力なのであれば、なぜ一コマだけで人形(?)が消えているのだろう。「いや、作画の関係で描いていないだけだ」とは考えにくい。なにしろ、ボロゾウキン──どころか「棒」と化しているカイトや、ゴンが抜いたブーツまで描いてあるのです。

こっちだ ついて 来い

ゴンの頭部から上へ向かって伸びている、一見すると髪の毛のような黒い影は──なんと、髪の毛だった !!(な、なんだってー !!)

前回の時点で、ゴンが「変化」していることは読めましたよね。でも、「成長」とは思いも寄らなかった。

今のゴンは、容姿だけを見るとビスケを思い出します。ビスケは、自分の意思で少女期のような体に変化させている。それに対してゴンは、ピトーを倒せる年齢まで強制的に 成長したらしい。

──なんだか少し、いや、かなりムリのある解釈のような……。

読者としては(自分としては)、少年であるゴンが少年のまま急にレベルアップしてピトーを倒す──、そういう展開を予想したわけです。予想というか、希望か。

ただ──、それでは「修行ってナニ? おいしいの? 崩玉ってリリエンタール?」とも思うわけです。そのため、長期にわたる修行に変わるような説明──言い訳が必要になる。それが今回の「成長」だったのでしょう。

さい しょは グー

いままでも、『H×H』には説明のための描写が多かった。

ゴンやキルアなどの念能力者は大食らいが多く、「常人よりも念使いはエネルギィが必要なのだな」と想像できます。そもそも念能力があれば、外見に似合わない強さを持たせられる。上記のビスケも分かりやすい。

それでも、キメラアントの王直属護衛軍であるピトーを、ゴンの年齢(12 歳?)で倒すにはムリがある。そう考えた作者の取った策が、今回のゴン・急成長でしょう。強化系の能力者であるゴンがピトーを倒すには、どうしても肉体的なレベルアップが必要だった。

──というような言い訳のための説明的な描写って、

「ヒント: 50kg のヨーヨーを何個も入れているパンツ」

で崩壊するんですけどね……。

良かった ……

ピトーが安堵していたという場面を見て、ここからピトーが反撃できるのか、と思いました。

(人間の目から見れば)さんざん非道な行いを繰り返してきたピトーですが、(読者の目から見れば)長い付き合いだし、(ネコミミ好きの目から見れば)ぜひとも生き残って欲しい。しかし──、ちょっと難しそうですね……。

ラストのコマは、「カイトを抱え」ながら、ピトーが自分の強さを認めた場面を思い出します。しかし、あの時のような不気味なコミカルさは、一切──ない。

さて──、これからどうなるのでしょう。

ピトーの所見によると、ゴンは念能力が使えなくなる可能性が出てきました。この状態のまま、王──メルエムのところへゴンはたどり着けるのか? ただ、本当にゴンが念能力を使えなくなると、連載自体が終わってしまうのでは……。

──いや、あくまでも『H×H』は、「ゴンが父親を探しに行く」という話が主軸だったハズ。ゴン自身が念能力を使えなくても、キルアたちが父親探しを手助けしてくれるでしょう。──でも、それで読者がついてくるのか?

また、すべてを出し切る覚悟で戦うゴンは、“百式観音・零の掌”を使ったあとのネテロ会長のような姿になるのかもしれない。そうじゃなくても、現在の「青年期の(ような)ゴン」の姿で固定される可能性もあります。

──もしも読者が離れるとしたら、そのゴンの姿のほうが原因になりそう。

asiamoth:
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