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『恋染紅葉』 第 3 巻 「スレチガイカンチガイ」 飛ぶ小鳥が落とす勢い

恋染紅葉 3』 坂本 次郎×ミウラ タダヒロ

小さくても──大きく響く

春日 小鳥(かすが ことり)が表紙を飾りました!
第 1 巻第 2 巻は表紙の絵が つながっていたのに、この第 3 巻は独立しています。これには「アレ?」と思いました。第 4 巻が集合絵だったら、小鳥の孤独感が一段と強調されそう。


紫之宮 紗奈(しのみや さな)と七里 由比(ななさと ゆい)の見せ場も用意されています!
とくにナナは、まさかの由比の単独回で活躍してくれました! 7 年間も 想い続けてきた相手に忘れられたら、そりゃ怒って当然なのに、ムリにでも笑うナナが いじらしい! そして、悲しいな……。

初恋の幼なじみから忘れ去られる──。
──なんだか どこかで聞いたような話ですねー。

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春日 小鳥の魅力

金髪ツイン・テール! ガチ□リ・キャラ! 微──貧──つつましやかな体形とくれば、まな板鉄板テンプレートのツンデレと相場が決まっています。
──が、小鳥は単純な性格ではなかった。

「じつは家が貧しくて、借金の返済のために がんばっていた」なんて、やっぱり「ここだけ 80 年代」なベタだけど──自分は こういうのに弱いんだー!
お金だけではなく、たぶんコネもなかった小鳥が、なぜアイドルに なれたのか? その事情は不明だけれど──。
AKB48SKE48 などの「1 人見たら 48 人いると思え」な「誰でもアイドルになれそうな時代」の今だから、小鳥のように努力が必要です。

テンプレ丸出しのイジワル小悪魔キャラを強調しておいて、ファンに対する熱意を見せつける! この時間差攻撃で根こそぎ持って行かれました!
「アイドルの握手会」と言えば、アイドルに対しても・ファンに対しても、あまり良い印象を持っていない人が多いでしょう。だからこそ、「トップ・アイドル春日 小鳥」が生きてくる。
おそらくパパラッチしていた黒服は、最初は小鳥のファンだったのでは? 小鳥のために働きたくなる黒服たちの気持ちも分かりますね。

伏線の巧妙さ

、『恋染紅葉』は伏線の張り方が見事です!
前巻から春日の存在を出していたり、パパラッチに別の意味を持たせたり、そもそも小鳥の存在自体が二重・三重の構造だったり──。
シーン 16 「プロジェクト小鳥」の冒頭で流れた DVD の内容も、「台本乙!」と思わせて──といった「アリガチさを逆手に取ったトリック」が絶品でした!

シーン 15 「小鳥は舞い降りた」の「7 ドロップス」を紹介する一枚絵では、ひとりだけ「黒い表情」のメンバが います。連載時から気になっていたら、ここにも ちゃんと「その先」が用意されている。
(『めだかボックス』でも邪悪な表情のアイドルが登場して、「カブってる!」と思ってしまった)

由比の積極性

シーン 14 「制服の下の気持ち」は唐突です!
前後に なんの脈絡もなく、ほぼ番外編というか「ナナのスピン・オフ企画」な感じに楽しめました。本当に、どのヒロインも単独の作品で読んでみたい!

とくに「オール 決めポーズ!?」には笑った!
初恋相手のために努力して、性格も外見も変えている。しかもグラビア・アイドルとしてのプロ意識が強い──という七里ならではの挿話です。恋に まっすぐ──な だけではない由比の良さが表現できている。
でも あの写真は「誰が撮ったんだ?」と気になりました。 最近の遊園地では、撮影のサービスが あるのでしょうかね?

七里が自分の気持ちを翔太に伝えられて良かった。演技が半分とは言え……。次は本心が 100% でアタックして欲しいですね。

紗奈のヘンテコさ

「初めての恋に気がついたヒロイン」もベタですが、サナの場合はワン・クッション置いた演出が良かった。彼女の仕事に対する真剣さと、ヘンテコリンな性格を効果的に見せてくれます。
この場面でも「キメッ!」なポーズで空気をやわらげてくれた七里が素晴らしい!

一方、小鳥と翔太がイチャイチャしている場面の紫之宮は怖かった……。目が完全に笑っていません。むしろ殺意に満ちている──。
恋染紅葉』も『ニセコイ』も『パジャマな彼女。』も、一時期の「ジャンプ」ラブコメ・マンガは全部「病んでる系ヒロイン」が登場するという異常事態でした。
ラブコメものでもヒロインでもないけれど、『SKET DANCE』のスイッチ過去編のアレには勝てないけれど……(勝っちゃダメー!)。

『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 5 巻 感想・2 | 亜細亜ノ蛾

海音、ハジケすぎ!

この巻も海音(うみね)が主役でしたね!(えっ
セブーン ドローップス! ってね(ギトッ★」(キラッ☆ じゃなくて!?)が最高に かわいらしかった! ──そのイケてなさがッ!
海音は、もしもアニメになったら、絶対にダミ声で「──だわさ」口調が似合う声優さんに演じて欲しい! 上の決めゼリフも、絶妙~に「イケてない感じ」を出すべきです!
序盤の「暑…っっ!!(バフッ バフッ」も、「誰得だよ……」な空気を演出して欲しいですね。オレだけが得をすれば良い!
──アニメ化、かぁ……(遠い目)

ネタ・キャラに徹するだけではなく、翔太のために背中を押してあげるところも海音姐さんの良さです!
「本当は海音も翔太を──」という要素を入れなかった点も評価したい。シンプルな三角関係を維持したほうが分かりやすいからです。
──なんて書きながら、自分は海音派なので、「ちっくしょう! 翔太のヤツ……!」なんて家で泣いて自分を慰めている海音(意味深)の妄想で、ドンブリごと食べられますけれど。

幼なじみの女の子が いつの間にか成長していくドキドキ感──は、『恋染紅葉』の主題ではないため、この作品では見られませんでした。残念!
このテーマだけで何杯も ごはんがススムくんなので、作者には別の作品で描いて欲しい!
──別の作品、かぁ……(いや、あるよね!?)

イケてねェ海音姐さんを押しまくってきましたが、ちゃんとキュートな場面も織り交ぜてあって憎い!
とくにシーン 13 「花火」の冒頭がイイネ! タイトル部分の海音は、ちょっと別人に見えるくらいにロリかわいい。やはり絵柄的に 80 年代なニオイが してきます。あの時代だったら、海音がメイン・ヒロインで決まりでしょう!
1 ページめくって、海音にナナが おぶさっているコマは最大の お気に入りです! 昔から友だちだった ふたりの仲の良さ(意味深)が出ていますね!
くすぐり攻撃で「笑いながら怒る女」の海音も最高でした! 海音は感じやすいコ(意味深)なんですね……! 初めて義孝(よしたか)が好きになった瞬間です。

妹、襲来!

葛城 莉子(かつらぎ りこ)も良かった!
翔太に対する「お兄ちゃんが大好き」(意味深)な空気がムンムン出ています。ここが『To LOVEる』だったら、もう とっくに【自主規制】ですねー。

莉子も海音も、まゆ毛や まつげの描き方で、アイドルと一般人との差を出しています。
逆に言えば、それらの部分をメイク・アップでイジレば いくらでも化けられそう。そういう「自分だけが知っている顔」の魅力を出して欲しかった。

おわりに

これだけ魅力的な登場人物が揃っていて、どうして──次の巻で終わってしまうのだろう……。最初から最後まで連載を楽しんだ自分には、サッパリ意味が分かりません。
いろいろ敗因は あるけれど、「ラブコメ多すぎ」と「主人公の魅力」でしょうかね。
あとは、「アイドルと恋愛する」現実味の薄い話なのに、ヒロインたちの仕事熱心さがチグハグだった──とか?


──あー、しまった!!!1
じつはこの記事は、2013/01/08 の時点で書き上げていました。ところが、1 か月後の今日(2013/02/08)になって投稿していないことに気がついたという……。

asiamoth: