クリント・イーストウッド一覧

『アメリカン・スナイパー』 戦争賛美でも反戦でもなく

アメリカン・スナイパー』 ("American Sniper")

Navy Seal V2
戦場に忘れてきた──心と愛

運命の皮肉に心を引き裂かれた男伝記映画です!
戦場での戦闘・銃撃戦が描かれる「戦争映画」であり、「伝説」と呼ばれる「英雄」が登場する。砂煙が舞い重苦しく、張り詰めた空気まで伝わってくるような戦闘シーンがリアルでした。
しかし、クリント・イーストウッド監督が見せる物語は、家族を守りたかった素朴な男の姿です。敵からは「悪魔」と称される男が、家庭では不器用で善良な顔しか見せません。
ある時までは──。

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チェンジリング – 人を傷つけて喜ぶ人間──それは誰だ?

『チェンジリング』 (Changeling)

ポンデリング ショコラとアーモンド
(間違えたリングを交換しにいく話──ではない)

最高に胸くそが悪くなる映画でした。

──って、「できが悪い作品」という意味ではないですよ! 出演者たちの演技も映像も脚本も、すべて一級品です。

ところが、見終わったあとで「あー、面白かったー!」とニッコリできる映画ではありません。映画の中で起こった「史実に基づいた事件」が痛ましくて、エンド・クレジットが流れている時にボーッとしてしまいました。

なにより、犯人に腹が立つ!

でもこれは、クリント・イーストウッド監督と犯人役の役者に対する、最大の賛辞ですよ。最大の惨事でもあるけれど……。


見どころの 1 つは、主演を演じているのがアンジェリーナ・ジョリーであること。セクシィな彼女は、本作品でも「入浴シーン」を披露するのですが──、けっして色っぽくはない。貞淑な母親であるクリスティン・コリンズを見事に演じていました。

彼女の一人息子──ウォルター(ガトリン・グリフィス)が行方不明になるところから、物語は動き始めます。毎日毎日、息子のことを気にかけるクリスティンの元へ、5 か月も経ってからウォルター発見の知らせが届くのですが──、

戻ってきた「ウォルター」は、まったくの別人だった。

ウォルターを名乗る少年──アーサー・ハッチンズ(デヴォン・コンティ)の目的は分かりません。自分は途中まで、ミステリィかと思って観ていました。


もう一つの見どころは、1920 年代後半のロサンゼルスを再現した映像です。クリスティンの勤める電話会社や街並みが、古くて新しくて美しい。

いつもなら、衣装の内側からあふれんばかりの肉体美を誇るアンジェリーナ・ジョリーだけれど、この時代の洋服を身につけると、おしとやかに見えます。彼女の変わった一面を見るためだけにでも、ぜひご覧ください。

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