バクマン。 #18-1 「ライバルと友達」 服部の説得と折れない二人

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『バクマン。』 18 ページ 「ライバルと友達」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 03 号)

「面白きことは良きことなり!」

最近読んだ小説に出てきたセリフだ。けだし至言である。

年を取ってくると面白さの上限を決めてしまいがちだ。やる前・見る前から「だいたいこれくらいの面白さだろう」と決めつけてしまう。世に可能性を見いだすのは子どもの仕事だ、と言わんばかりに。その結果、「面白きこと」を自分の中で勝手に消してしまう。

しかし、そんな人の思いとは別に、面白いことは世にあふれている。マンガもその一つだ。

今週号の『バクマン。』で起こった事件には、今後の話の広がりを感じさせて、たいへん面白い。十分に想定できた展開ではあるが、文句なしに楽しめた。

面白さには底がない。──そう素直に思った。

それしか描けない

オープニングでのサイコー・シュージンと服部との「対決」は迫力がある。お互いに一歩も譲らない。

こういう場面は、「やりたいから、やりたいんです!」「ダメだから、ダメだ !!」のような、理屈のない我の張り合いになりがちだ。見苦しい。しかし、この作者が書く話には、そんな心配は無用である。──まぁ、筋道を通そうとするのは、三人とも男だからだ──と事を荒立てるようなことを書いてみる。

(明日に書く予定の)後半の感想でも改めて語るつもりだが、服部の主張のほうが理にかなっている。と思う。

サイコーにはアニメ化を急ぐ理由があるが、それはマンガとは関係がない。そのため、「人気が出やすい・アニメ化されやすい」王道にこだわってる──それだけに思えるのだ。サイコーとシュージンがマンガにかける情熱を何度も見てきたが、マンガを愛しているからではなく、けっきょくは私利私欲のため──そう見えてしまう。

──今週号の新妻エイジを見て、さらに深く感じた。

有望な新人

「王道」への移行を決意した「亜城木夢叶」だが、彼らの「邪道」作品を推す者は服部のほかにもいる。さりげなく「僕は新妻より亜城木派です」などと言う編集者を登場させたりして、編集部と二人との意向の差を感じた。

ここで、二人が王道へ向かうことを、作者は「良いこと」として描いているのか、分からなくなってきた。

たしかに、もともと邪道を勧めたのは服部だ。シュージンの書いた話が、たまたまジャンプらしくなかった。サイコーの絵も少年マンガらしくない。そこに光る物を見た服部が、二人の進む道を決めた。

大人が子どもの道を示す。子どもが自分の意志で別の道を行く。──それだけを見ると、ジャンプマンガというか、少年が主人公の話としては良さそうだ。「王道で頂点を目指す」という困難な目標も、立派に聞こえる。

ただ、よく考えて欲しい。ジャンプでは王道マンガが人気を取っている、というのは先人たちが築いた道である。サイコーとシュージンは、先人たちのあとを追っているに過ぎない──というのは言い過ぎだろうか。

二人には、二人しか描けない世界で頂点を目指して欲しかった。そして、邪道を受け入れられる器が今のジャンプ読者にはない、と納得できるのも悲しい。

まぁ、『重機人間ユンボル』の面白さを理解できなかった時点で、ジャンプ読者には何も期待しないけれど……。

(というか、最近では『To LOVEる -とらぶる』すら後ろに載っていて、「そこまでバトルだけが好きか!」と思った)

新妻エイジの新連載

前代未聞というか、誰も考えつかないことをエイジは平気な顔でやった。ただ──自分のデビュー作くらいは自分で決めたい、という気持ちも分かる。

完全に蚊帳の外であるサイコーとシュージン・服部は ともかく、編集部は野次馬を含めて ざわめいている。そんな中、編集長の落ち着きは さすがだ。格好いい。たしかにこの場面では、あわてたり怒ったりしても、何も解決しない。緊急時でもすぐに的確な指示を出せる──だからこそ編集長なのだ。

──と言いながら、取り乱す編集長を一度は見てみたい、とアマノジャクな自分は思う。

編集部に行くぞ

雄二郎の独白によって、エイジがとぼけてる可能性に気付かされた。なるほど、本気かどうか分からない とんでもない発言を、過去にエイジは していた。単純に思いついたことをすぐに口にしている、と思っていたが、演技かもしれない。

本当に良い意味で読者を裏切ってくれる作者だ。完全な脇役であるアシスタントにも非凡さが見える、と前回の感想で書いた。それなのに、アシスタントの二人は あっさりとリタイヤしそうだ。いつもそうだが、まるで先を読ませない。

ページが進むたびに雄二郎が情けなく思えてくる。天才・エイジの担当には頼りない。しかし、服部のように自分の意見をハッキリと言っても、衝突するだけだろう。そういう意味では、エイジに合っている。情けない理由だが……。

さて、いよいよエイジが集英社へ到着、そしてサイコーとシュージンとの初対面! というところで、感想は次回へ続く……。

コメント

  1. hiro より:

    はじめまして。いつも楽しくブログを見させてもらっております。
    当方、10話前後で「バクマン。」にはまってからというもの、感想サイトさんを探してふらふらとネットをさまよっていたところで、ようやっと貴サイトに辿りつきました。内容が密で、ボリュームたっぷりの感想が素晴らしいですね!
    服部さんびいきの身には、積極的に彼の動向を取り上げてもらって嬉しいかぎりです。
    特に今週のジャンプ。エイジとの遭遇は熱い展開でしたね。 先が気になって仕方ありません。
    管理人様の筆は、この展開をどう表すのでしょうか。
    これからも陰ながら応援しております。バクマン。およびハンター、そしてスケット・ダンスの感想更新を管理人様がこれからも取り組んでくださることを心より祈っております。
    「面白きことは良きことなり!」森見登美彦の有頂天家族ですよね? 至言だと思います。

  2. asiamoth より:

    hiro さん初めまして! うれしい お言葉をありがとうございます !!
    『バクマン。』の面白さを少しでも多くの人に伝えたい──その一心で細々と続けています。本作品に比べればまだまだ「内容が密」とは言えない感想なので、もっと面白くしますよ!(言うは易し)
    最近になって読んだ『有頂天家族』の感想もお楽しみに……。