『バクマン。』 97 ページ 「ラストと暗号」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 38 号)
「PCP」から明知に向けた挑戦状が登場しました。
シュージンが作ったこの挑戦状は、暗号文になっている。もっとも素晴らしい点は、暗号を解く過程を考えて作られていることです。「ここまでは推理されても大丈夫」と計算されている。
制作者は小学生──という設定がムリに感じるくらい、完成度が高いです。でも、小学校のころから優秀だったシュージンなら、これくらいは当時でも思いついたかもしれませんね。
この前 作るって言ってた 暗号
初めてこの挑戦状メールを見た時には、次のようにおバカな推理を組み立てました。
「イカを取り上げる──海産物が手がかりか!」
──うん、まぁ、8 割くらいは作り話だケド。
推理されちゃって いいのかよ?
暗号文の答え・その 1 は、正確には「スプリンクラ」でした。長音(ー)なし。もしかして、「PCP」のメンバには、森博嗣先生のファンがいるのでしょうか。
森博嗣さんと言えば──、ミステリィについて、下のように語っていました。
殺人だからこそ、犯人も必死でやってるはずだからこうしたはずだ、と探偵が推理できるのです。
それが単なるいたずらだとしたら、推理が成立しなくなってしまう。
つまり、殺人は単に境界条件として用いられているわけです。
『森博嗣のミステリィ工作室』 p.101
「PCP」が出した挑戦状は、「いたずら」と言われても仕方がない。しかし、「PCP」も明知も、お互いに真剣になっている。だからこそ、推理する明知の姿が成り立つのです。
つまりは、真剣さが境界条件になる。
砂場のそいつ
この暗号文を読んで、わざわざ行間開けてる
行に注目して、以下を 取り上げて
の部分に気づく。そこまでは分かる人も多いでしょう。
問題は、正体を暴きたい事でしょ う
の「う」だけ改行されている──その不自然さに注目するかどうかです。「う」の行以外は、行末を意識した文体で書いてある。考えろどこまで計算通りか
──もヒントになっていたわけです。
人間は、目の前に示された謎があった場合に、ひとつでも謎が解決すると、ほかは見ない。そのことを利用した、二重トリックですね。
面白いよシュージン!
花火大会の打上げ花火を背景にして、逆光でロケット花火を手に持つマコトは、メチャメチャ格好いい! 絵的にもバッチリだし、話も最高です。
服部も、トリックにのめり込んでいますね。
ただ──、いつものことですが、こうやって何ひとつ不安な点がないと、逆に不安になる。何か落とし穴がないか、と。
新妻エイジと秋名愛子(岩瀬)が、『PCP』のシリーズ初期にどんな反応をするか。それがカギになりそうです。思わぬ反撃がありそうな気がする……。
それとも、悔しがるエイジと岩瀬が見られるかも。
それならそれで、面白い。