『バクマン。』 124 ページ 「考察と挑発」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 15 号)
大場つぐみ・小畑健の前作である『DEATH NOTE』には、お菓子の大好きな天才が何人も出てきました。劇中の彼らは、甘い物ばかり食べている。彼らの育った環境では、糖分しか与えていなかったのでは──と思うくらい。
『バクマン。』の世界にも多くの天才がいます。しかし、新妻エイジと平丸一也(・七峰透)は、とくに甘い物が好きには見えません。
ところが──、お菓子大好きで才能のある人がついに登場しました! 今回の話を見て、「もしかして、L たちと中井は、同じところの出身なのでは!!!?」と思った人は──いないだろうなぁ……。
最高に 気分いいよ
七峰は、中井のことを戦力の一部
としか思っていなかった! 前回の感想で自分は、この 2 人は良いコンビだと書いただけにショックです。
『有意義な学園生活に必要なそれ』は、2 話目も絶好調でした。第三者の目から見れば、それは明らかに中井の力です。七峰に足りない部分を、中井の画力は補ってくれる。
「イニシャル N」の 2 人は、理想的なコンビに見えるけれど──、七峰の心には誰も入れない。
表面上は人当たりが良くて、実際の仕事ぶりはビジネスライクという七峰は、プロとしては理想なんですけどね。読者からすると共感ができない。
同じく、中井の気持ちは理解できるけれど、いまの彼を見ていると──応援できないよなぁ……。
しかし──、たとえば、中井と平丸との外見を入れ替えたら、どうでしょう。チョコレートをバリバリ食らう姿も、蒼樹 紅に 未練タラタラ
なところも、多くの人が「かわいい」と見るはず。
逆に、「中井を着た平丸」だったら、いろんな言動が許せませんね。──けっきょく人間は、外見で判断されるのか……。
3 話目 9 位?
『有意義』は、ビックリするくらいに順位が落ちましたね! 今回はずっと、七峰が変顔でニヤニヤしていると思ったのに……。このマンガは、いつでも急展開です。
小杉編集は、読者アンケートの結果を独自に分析して持ってきました。編集者なら当然の仕事──とは言いにくい。七峰の仕事場では、小杉は「51 人目」──どころか「原稿の運び屋」と化していました。並の神経なら、ふてくされて何もしたくなる。
このような状況でも、小杉は七峰と一緒に作品を作りたいのですね。ネームや原稿に手も口も出せないのならば、編集部しか持っていない情報を使う。この小杉の働きは素晴らしい!
ガクッて 落ちたな…
サイコーとシュージンは、『有意義』の順位が下がったことを冷静に話し合っています。その話し方が「自分の好きな作品にあれこれ文句を言うようなファン」みたいで面白い。
2 話目までは危機感を持って『有意義』を分析していた 2 人は、この場面ではむしろ、七峰のことを気づかっている。
──ライバルに心配されたら終わりです。
3 話目… 7 位です
七峰は、またウソをつきました。さすがに 9 位まで落ちてしまうと、たとえば「3 位です」とは言えませんね。ウソにウソを重ねていくことになるのか……。
思えば七峰は、初登場のころから猫をかぶっていました。展開に激流が続く『バクマン。』だから、すぐに正体を出したけれど、それは一部の登場人物と読者しか知りません。
つまり、ずっと他人をだましながら七峰は生きている。彼の人生は、いつから こうなったのでしょうかね? 「亜豆が声優を目指した理由」と一緒で、「七峰のウソつき人生: 序」も描かれないのだろうな……。
逃げ腰になってる人はなんなの?
全員が仲間のように感じた「判定人」たちも、離れていく者が増えました。チャットの内容も荒れている。最初のころに感じた一体感は、もうありませんね。
自分は、考えながら文章を書くのが好きで、(ほぼ)リアルタイムで反応が返ってくるチャットが苦手です。そのため、この「七峰ひとりがマイクで話すシステム」が存在するのか知りません。近未来(たしか 2015 年)では流行しているのかな?
普通に「ボイス・チャット」を描けば良かった気もするけれど、文字だけで交流する無機質さ・冷たさを演出したのでしょうか。それとも──、何人も「判定人」の顔を設定するのがメンドウなだけだったりして。
『PCP』に勝つことと、『PCP』と似せることが、いつの間にか七峰の中では同じになっています。
同じ雑誌で連載しながら、ほかのマンガと同じようなネタを描くなんて、現実世界の「ジャンプ」では あり得ません。そんなことをしたら、両作品とも悪影響が出るだけです。七峰と「判定人」は、その判断もできなくなっているのか……。
どうせやるなら、『幕張』みたいに亜城木先生をマンガの中に出しておちょくる──と速攻で終わる。