『バクマン。』 47 ページ 「矛盾と理由」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 35 号)
自分は「叙述トリック」が大好物です。
ミステリィ作品の常として、作品名を上げて「このトリックが好き」と言えないのがツラいところですね。ネタバレになるので詳しく書きませんが、森博嗣さんの さりげないトリックが好き。人によっては、トリックの存在に気がつかないほど、コッソリと毒が仕込んであります。
さて、今回の『バクマン。』にも、叙述トリックと取れる場面がありました。これも、気付かない人がいたのでは? 下のほうで書いた、佐々木の発言です。
退院するまで
本来であれば残念な入院も、2 人にとっては良い記念になる──。何ともステキな話です。
亜豆からすると、早く病気が治って欲しい一方、面会ができるから退院まで長引いて欲しい──という もどかしさも良いですね。
いままでにも何度か、サイコーへ夢が叶うまで 会わないって 嫌?
といった質問を亜豆は してきました。
──これって、どう考えても「やっぱり、いつでも会いたい」と亜豆が言っているように聞こえます。ハッキリそう言わないのは、オトメゴコロでしょう。それを分からないサイコーはニブい。
どうなんでしょうね?
学校の教科で「国語・算数・理科・人の心や空気を読む」とあれば、最後だけは毎年「1」を取り続ける自分のことだから、みなさんとは解釈が違うかもしれませんね。
たとえば、ここでサイコーが「──うん! やっぱり、亜豆さんと毎日会いたい!」などと言えば、「! ひ、ひどい!! せっかくここまで約束を守ってきたのに……」と涙ぐむ亜豆、そして破局──という展開も あり得るのでしょうか。──ないと思うなぁ……。
何を 言ってるんだ
サイコーが病室で仕上げた原稿の分は載せる、と編集長が認めたことは、すこしだけ意外でした。港浦の熱意に負けた、というワケでもないでしょう。
前にも書きましたが、本当にサイコーに原稿を描かせたくないのであれば、「たとえ完成しても受け取らない」という態度に出るしかない。
この時点では 31 号に掲載の 18 話は受け取る、という佐々木の決定に甘さを感じました。──まぁ、ご存じの通り、後半で ひっくり返されましたが……。
ほどほどなら
医師の判断には驚きました。前号までは、絶対に安静と言っていたのに……。
まぁ、まさか お医者さんも、そこまでムチャをするとは思っていないのでしょうね。──って、あれ? ムチャをしたからこそ、いまサイコーは病院のベッドにいるわけで……。なんだか違和感があります。
お邪魔して おります
自分と同じくらいに空気が読めない港浦のことだから、ここで言うような 場所ではない
という言葉を勘違いしたかもしれません。すなわち「ん? ──あ、むかし不倫していた、ということか !?」などと……。
佐々木編集長にとっても、あまり思い出したくない過去でしょうね。川口たろうの「肩たたき」をしたのは佐々木ですし。
あんまり 根詰めても
サイコーの母親によると、サイコーの父親は全面的にマンガ家への道を認めているようです。それが男の生きる道、ということでしょうか。たとえ、同じ道を進んだ兄が死んでいても……。
悪いようには しません
と佐々木は言う──。ここに注目です。この一言が最後に効いてくるとは、思いも寄りませんでした。
32 号の『TRAP』休載をもう一度副編と 話し合
う、という話もトリックなのです。どういう事かと言うと──。