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『ニセコイ』 vol.1 「ヤクソク」

two lovers point locks 5 愛の錠は──鍵をかけたままが良い?

ニセコイ』は、古味直志(こみ なおし)氏が描くラブコメ・マンガです! 前作の『ダブルアーツ』は──正直あまり読んでいなかったのですが、この作品は第 1 話から引きつけられました。

さて、ラブコメとは何でしょう?

コメディ作品の基本は「勘違い」です。登場人物が A のことを B だと思い込むことで話が広がる。読者を勘違い(認識違い)させるとミステリィ作品になりますね。じつは視点の違いだけで両者は似ている。

恋愛作品の基本は「すれ違い」です。「ボーイ・ミーツ・ガール」という言葉があるけれど、好きな者同士が出会って一瞬で恋に落ちていたら、「週刊少年ジャンプ」では連載が取れません。だからガンガンすれ違いまくる。

コメディと恋愛が合わさったラブコメ作品である『ニセコイ』は、勘違いと すれ違いの嵐が吹き荒れます! その上、「分かりやすいベタなノリ」が軽妙で楽しい!

しかし、それだけの作品では、わざわざ自分が何時間も使って感想を書いたりはしません(何様!?)。

ある種のミステリィ的な要素──「10 年前に主人公と約束した女の子は誰だ?」の謎で、読者をグイグイ引っ張っていきます。この謎も「志村ァー! うしろ うしろ!!」な見え見えでベッタベタと思わせて──。

ところで、第 1 巻の帯にはデカデカと「始まる、恋物語 !!」と書いてあります。──同じ雑誌に いらっしゃる『偽物語』と『恋物語』の作者・西尾維新先生に怒られるでェ! だから『ニセコイ』は片仮名にしたのかな。

それでは、軽々と読める感想をどうぞ!

第 1 話 「ヤクソク」

ザクシャ イン ラブ(愛を 永遠に)」という誓いの言葉から本作品は始まりました。

子どものころに言った「結婚 しよう」というプロポーズは、普通は「ほかの友だちより ちょっと好き」程度の意味でしかありません。その約束をずっと覚えていられるなんて、けっこう難しいと思う。


主人公は(ラーメン屋の名前みたいな)一条楽(いちじょう らく)で、少しだけ 個性的(ヤクザ)な「集英組」の家族たちに囲まれています。

料理が得意でケンカが弱く、おまけに髪にはヘア・ピンを差している。──もう、いつ「楽って 女装が似合うよな(ごくり……)」な王道展開が やって来てもおかしくないナヨナヨした主人公に見えます。

ところが、ヤクザたちにも物怖じせずに、自分の夢を語ったり怒鳴り散らしたりする(いつも同じ屋根の下で暮らしているから当然だけれど)。好きな女の子の前でも態度が男らしい。

ラブコメでアリガチだった「なんで こんなヤツが持てるんだ?」は、今の時代には もう古いですね。『To LOVEる』以降は、「スペック盛りだくさんで優しい男だから、当然のようにモテる」です!


華々しく登場した桐崎千棘(きりさき ちとげ)がメイン・ヒロインです。

「転校生の女の子と主人公の男の子が初対面でゴッツンコ!」というベタな展開ながら、この場面を冒頭のカラーに(パンチラありで)持ってこないところに、作者のセンスと作品の方向性を感じました。

名前と同様に性格もトゲトゲしい桐崎は、もう完全に声が『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレーの声(宮村優子さん)で再生されます! 旧エヴァであることが重要ですよ!

──同じ人も多いのでは?


もう 1 人のヒロインは小野寺小咲(おのでら こさき)です。ちょっと真面目に読んでいないとフル・ネームが分からない不遇な人物でありながら、控えめの登場回数が印象づけに効果的ですね。

どうしても千棘だと頭のリボンに目が行くけれど、小野寺のおかげで特徴的な制服に気づきました。シンプルながら、細いネクタイとタイ止めが目立ちます。女の子がタイを止める場面を想像すると楽しい!

エロg ──美少女ゲームだったら、肩の周りにゴツい肩パッドを付けたり、腰のあたりに過剰な装飾を付けてしまうでしょうね。「これ、どうやって着るんだよ……」とツッコミをいられたり。


約束の女の子は誰か」という主題は、「ちりばめられた ヒント」から すでに解かれているような気もしますが──、そんなに単純な話でも なかったのでした……。

10 年前に女の子とした約束をいつまでも覚えているのも、未練がましいと言えばその通り。男らしくないと思われそう。

その約束を「大事なこと」として語る小野寺を見て、一条は ますます彼女を好きになったでしょうね。桐崎とは対照的に、小野寺は全方向から「好きになるしかない子」です!

第 2 話 「シツモン」

冒頭で書いた「すれ違い・勘違い」は、半分は語呂合せで出したようなもので、ラブコメの王道と言えば「鈍感」でしょう。

集英組もビーハイブも、ニブいにも ほどがある! でも そうじゃなかったら、いまごろ血で血を洗って街中スッキリ! の大抗争でしたね。まだクロードは勘が鋭いほうだけれど、それでも常人の半分くらいです。

そして主役のカップルは、もっと鈍感だった。

ちょっとばかり(アジア大陸の面積くらい)純粋すぎるビーハイブの幹部はクロードといい、ある意味では彼が『ニセコイ』の影の主役でしょう。なぜなら、彼のおかげで(せいで)楽と千棘の「ニセコイ」が成り立っている。

もしも この作品にクロードがいなければ、一条は桐崎と いがみあったまま、小野寺ともモヤモヤした日々を過ごしつつ、一流大学を目指して勉強する日々でした。ありがとう、クロード!


ド派手な画面で気がつきにくいけれど、今回は「ずっと同じ場所で話しているだけ」という『SKET DANCE』みたいな話でした。会話劇でも見せ方で迫力が出せる!

うれし恥ずかしい「みんなの前で恋バナを語る話」をギャグとして描いているから、読んでいるほうまでニヤニヤしてきます。「ボシュウゥ…」となっている桐崎千棘が かわいらしい!

縁側で楽と千棘が話す場面も良かった。同じような環境で 2 人とも恋するヒマなんて なかったから、珍しく楽の前で しおらしくしている千棘が最高です! 「嫌いじゃ ないけど?」の表情が素晴らしい!

休日に朝から「恋人」がデートの誘いに来たり、第三者から見たら何一つ問題のない光景です。ところが、(ようやく下の名前が判明した)小野寺によって、予知能力者じゃなくても嵐の予兆が見える……!

第 3 話 「ハジメテ」

私服姿の桐崎がキュートです! いわゆるジャンパ・スカートに なるのかな。

このブログの品格(?)的に書きにくい話題ですが──、個人的にはジャンパ・スカートは「そういう場面」で困ることが多いので、苦手なんですよね。ムードが出しにくい。──なんのことか分からない人は、分かろう。

作者は「胸から下がスッキリしたデザイン」が好きですね。小野寺の私服もワンピースだし、制服も似たような形です。──この手の服は、女の子に「バンザイ」して もらわないと、難しいんだよなぁ(品格は?)。


デート中もコッソリ(隠れてないけど)ついてくる組員たちは、もうすっかり仲良しな気がする。一条と桐崎の仲とは無関係に、平和が訪れそうな気もするけれど──そうは ならないだろうなぁ……。

ニセのコイを成立させている条件が「一条は小野寺が好きで、約束の子も気になる」・「桐崎は恋愛が分からず、一条とは付き合いたくない」・「ヤクザとギャングは 2 人を付き合わせようとしている」なので、何一つとして崩せません。


ナンパ男から千棘を引き離す楽が格好良かった! 桐崎に押されっぱなしで、良いところの目立ちにくかった一条が、ここに来て輝いています。良いセリフなので引用しましょう。

ああいう 殴る価値もねえ奴を 殴るって事は 自分も同じ土俵の 人間だって 認める事に なるんだよ!

言いかえると、「争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない!!」ですね。


楽に声をかけようとして、「猫まねきポーズ」になっている小野寺がプリティ!

「デートしたい相手の名前を思いっきり しゃべった直後に本人が登場する」という分かりやすいベタを積み重ねるから、たまに来る どんでん返しに引っかかります。この作品の本質は、ミステリィなのかも。

第 4 話 「ソウグウ」

何… 考えてた の…?」の小野寺が暴力的に かわいらしいぞ……! 「クラスメイトの 1 人」にしては接近して親しげな話し方で、フラグ立ちまくりです!

──しかし直後にトゲでフラグを折られる。

鈍感な登場人物が多いなかで、小野寺は普通の感覚です。そうでなくても、目の前で「ダーリン」と呼んでいたら分かりますよね。


あきらかに小野寺は一条が好きだから、「恋人」の出現に かなりショックを受けています。焦っている彼女の表情も愛くるしい!

すぐさま桐崎を持ち上げて一条の恋を応援したり、ペンダントの件を否定する。その小野寺の心の内を考えると──萌えるッ!

ここで「三角関係」へ突入させず、いったん小野寺を引かせるところが効果的でした。そのせいで、読者には ますます「約束の女の子」の正体が分かりやすいけれど──。


ところで、お手洗いから帰ってきて「思ったより ずっと時間 掛かっちゃって」というセリフは、考えてみると味わい深い。全部 脱いだのかな──と想像してしまう(ごくり……)。

あと、言うまでもなく、千棘のワキにも注目です!

第 5 話 「イッパイ」

この絵本の話は ほのぼのとしていて、楽の優しさが良く出ていました。絵本を上手に描き直すなんて、想像力と創造力が優れていますね。

その才能は、今では小野寺への妄想に生かされている。

驚いたことに一条楽は、子どものころからヘア・ピンで髪を留めています……! 今でこそ男性でも髪のピン留めは珍しくないけれど、10 年前は最先端ファッションだったに違いない。

父親は極道の組長なのに、よく「そんな女みたいな格好をするな!」と怒らなかったですね。もしかしたら、母親の形見なのかな……。この作品に まったく登場せず影も見えない「一条楽の母親」が、ものすごく気になる。

そういえば、朝から普通に朝食を作っている一条は、組員からしたら「お母さん」的な存在なのかも。


人間は、他人の悪いところが目につきやすい。口を開くと他人の陰口という人をよく見ます。

その一方で、楽の良いところをスラスラ挙げられる小野寺が素晴らしかった! 小野寺は、普段から他人の長所に目が行くのでしょう。優しい人である証拠ですね。

「カギ」を落とした場面は、小野寺のポーズが笑えます。なんだか小野寺と一条が戦っているみたい。ある意味では彼女にとって正念場ですね。

第 6 話 「ニタモノ」

完全に「約束の女の子率: 400%」な小野寺です。焦って赤面したところも最強に かわいい!

落としたカギの形状は もちろんとして、それを「持ち歩いていた」点も重要な証拠になるでしょう。第 6 話にして重要な秘密が明かされそうで、読者としてもドキドキしました……。


みんなの前でアツアツなカップルを演じるなんて、見ている分には楽しそうです。家でも学校でもモブ(群衆)が同じノリで おもしろい。

しかし、このアツアツさが千棘の孤独を生んでいた。

金髪美人の帰国子女という目を引く利点は、時には──いや多くの場合は他人とのカベを生む。そこを「ラブコメだから」と偶然で ごまかさずに、桐崎自身の努力で友だちを作ろうとさせる点が良かった!

楽の親友であるメガネくん(本名不明)は、『ニセコイ』で最高レベルの察知能力を誇ります。桐崎が女子と話している場面は、一条も親友も見ていた。しかし、彼女の孤立に気がついたのはメガネくんだけです。

今の一条には親友がいるけれど、桐崎にはいない。

そして一条も、以前は同じような環境だった。

「友だちノート」作りの共同作業を始める楽と千棘は、やはり仲が良いカップルにしか見えませんね。かつての自分を思い出す楽の思いやりも、「女の子座り」で へたり込む桐崎の愛らしさも素晴らしかった!

「友だちを作る」という言葉が出てきたけれど、友だちは普通に集まって遊ぶ仲の人を差す言葉であって、努力して作るものではない──と多くの人は思っているのでしょうね。

楽や千棘とは まったく違う環境でも、友だちがいない人には、彼らの気持ちが痛いほど良く分かるはず。

なんでも話せる親友が いることは、最高に豊かな人生です。たいていは学生時代の一瞬だけで終わるけれど、できれば一生の親友が いてほしい。


本作品で一番の「偶然の女神」である小野寺が、またもや重要な場面でキター! おまけページによると動物にも好かれるし、ラブコメで このポジションは主役ですよね。

「小野寺が主人公の話」という視点で読むと、また違った読み味になります。彼女のスピンオフ作品か二次創作が読みたい!

第 7 話 「テヅクリ」

調理実習に燃えている千棘が浮き浮きしていて、こちらまで楽しくなってきます。まだ桐崎には女友だちが いないけれど、一条に秘密を打ち明けて気が楽になっている。

「秘密も すべて話せる 2 人」だから、やっぱり普通にカレシ・カノジョだよなぁ……。

クロードが用意した桐崎のエプロンも良かった! エプロンだから当然ですが、やっぱりジャンパ・スカート型のデザインです。──着替える時に制服も一緒に脱いでしまわないか心配だ! (心配してない)


家が和菓子屋だけあって、エプロンではなく和風の前掛けを着た小野寺が あでやかです! いい奥さまになりそう。

今回は「小野寺がケーキを渡す相手は誰だ」という謎を出してきました。読者を引っ掛けに来ていますね。自分はコロリと だまされました!

小野寺は、一条と密着に近いほど接近することが妙に多い。そりゃ、楽じゃなくても好きになってしまいますよね。

中学生のころの小野寺は、今ほど男子に人気はなかったらしいから、かなり地味だったのでしょう。その時に楽が優しくしてくれたから、こんなにも自然に接近してくるのかな。

また、小野寺のことを気にかけている一条を見て、2 段階アップで描かれているメガネくんが気になる……。


「驚異的に料理がヘタクソな女子」も、ラブコメのテンプレートどおりで安定しています。個人的には、レシピどおりに作るだけの料理で「上手・下手」という概念が生まれる意味が分からないけれど……。

桐崎は、料理のヘタさが目に見えて分かるから、まだ救いようがありますね。

彼女を手伝う一条の「ちゃっちゃと 作るぞ ハニー !!」という優しくて乱暴な かけ声に笑いました。

「調理実習で友だちを作る」と意気込んでいた桐崎のためにも、真っ黒焦げのケーキを食べる楽は、やはり思いやりのある男です。ただし、今回もメガネくんの おかげでした。いいヤツだなー。


キョドりながら「一条だけにケーキを渡す小野寺」を見れば、彼女の本心は分かりそうなものです。それなのに、楽はサッパリ気づいていない。どんだけ鈍感なんだよ……。

一方、ただの クラスメイトと してなら贈り物ができる小野寺は、「三歩下がって男に付いていく」的な時代後れの控えめさではなく、意外と積極的で驚きました。今後も「これくらいなら……」と急接近 間違いなし!

まるで小野寺は、カロリィ控えめでありながら、しっかりと甘くて満足できる お菓子みたいな女の子ですね。もちろん、作る人は彼女の母親で お願いします!

おわりに

軽~く読める感想にしよう──と描き始めたら止まらなくなって、いつものように長文になりました。読んでいて・書いていて楽しいマンガだからです。でも次からは、もうちょっとダイエットしよう。

「王道テンプレ・マンガ」なんて言われている本作品ですが、ちゃんと独特な面白味が あります。その外し具合が絶妙で、ベタベタばかりかと思っていると意表を突かれる。カギの謎も すぐに解けそうで解けない。

今のところ お色気は皆無ですが、自分の大好きな「ある人物」の登場をきっかけに、だんだんと牙を剥いていきますよ! ああ、待ち遠しい!

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