『バクマン。』 77 ページ 「大好きと否定」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 15 号)
この作品には、「天才」と呼ばれるマンガ家が何人か登場します。
まずは、天才といえば新妻エイジでしょう。『バクマン。』の登場人物の中では、一番売れているマンガ家です。
しかし、エイジは子どものころからずっとマンガを描き続けている、「努力の天才」でもあるんですよね。いわゆる「王道バトルマンガ」しか話を思いつけないという、欠点もあります。しかし、優秀な原作者(と編集者)がいれば、いくらでも化ける余地がある。
自分が思うに、『バクマン。』で一番の天才は、平丸一也です。彼こそ本来の意味での「天才」の名にふさわしい。
なにしろ、ろくにマンガを読んだこともない・もちろん描いたこともない、というところから勢いで脱サラして、すぐにジャンプで連載を始め、アニメ化までこぎ着けた、という……。恐ろしいほどの才能を持つ平丸ですが、彼の才能(と扱い方)を見いだした、優秀すぎる編集者である吉田の力が大きいですね。
そうやって見ていくと、亜城木夢叶コンビは、たんなる「努力家」という感じがします。
面白いことに、バトルマンガに似た構造をしている『バクマン。』なのに、主人公は平凡な生まれ育ちなんですよ。──ジャンプに載っているバトルマンガって、どれも「親の七光」ですからねぇ。
さて、我らが静河流はどうか。これがいまだに、彼の才能は「未知数」です。
山久との関係が、静河の今後の大きなカギを握っているのは間違いない。しかし、静河の持ち味は、「超・自己投影」にあるわけです。山久と静河は、まるで友だちのような接し方をしている。これが、悪い方向へ進まなければいいのですが……。
遠回しに 言わないで
服部の「奥歯に物がはさまったような」言い方に、サイコーがキレる!
それを受けた服部も、祝いの席だ
と諭しながらも、「式が終わってから話そう」とは言わないんですよね。いますぐ、ただしどうしてもと いうのなら 席を外そう
、と言うのです。
──これは明らかに、初めからこの場で話をしよう、と服部は考えていたのではないでしょうか。もしそうなら、本当に服部は策士だなぁ……。
サイコーと服部のタダナラヌ空気を察して、シュージンが「いつもの目」に戻った気がします。まだまだ、これくらいのことでは、以前のように燃えているシュージンは返ってこない。
ものすごくイヤな視線で見れば、いまの亜城木夢叶が低迷している原因の一つは、カヤとシュージンとの結婚です(最大の原因は港浦だけど……)。
しかし、亜城木の復活を支えるのもまた、カヤだと思う。彼女のしっかりしたところがシュージンを元気づけて、自分たちの進みたい道をまた見つけてくれるはずです。
そろそろ 帰るか
静河流、ふた言目のセリフが聞けました!
僕でも できるでしょうか…
(「74 ページ」)、がひと言目です。今回の、ネーム 見て いただ ける で しょう か……
と似ていますよね。しかし、意味あい的には「自分へ向けた質問」と「相手に対するお願い」という、まったく方向が反対なんです。
ひととして 1 から成長し直している静河は、山久と一緒に進化し続けるでしょう。亜城木夢叶の強力なライバルが、まだここにいるのです……!
正直なところ、『タント』の連載前には気が抜けていて、連載が始まってからはイヤダイヤダとダダをこねている亜城木夢叶よりも、自分は静河流を応援したくなりました。
直接言えば いいじゃ ないですか
式場では聞いてもいないことまでベラベラと喋っていた服部が、ここでは黙っている。そのせいで、サイコーは一方的に話す。
──これはいつもの、服部マジックですね! 「上げて落としてまた上げる」というヤツです。こうやって、人の気持ちをコントロールするのが、バツグンにウマい。
『バクマン。』の世界に「キラ事件」が起こっていたら、捜査本部──というか【L】に引き抜かれてもおかしくないくらい、服部は優秀な捜査官になれそうです。
君達の手本になる
ようやく、服部の考えが語られました。思えば、亜城木の 2 人に服部の本音をぶつけたのは、面白いマンガ 読ませてくれ
(「35 ページ」)以来ではないでしょうか。
編集者の立場を離れて、マンガ家に対して自分の意見を言うなんて、普段の服部はしないはず。たぶん、サイコー以外のマンガ家には、服部が自分の真意を見せることはないでしょうね。
服部は、心の底から亜城木夢叶は新妻エイジを 抜けると 思っている
。そこには策略も何もなく、ただただ信じて待っているだけなんでしょう。だからこそ、いまの亜城木を見ていると、もどかしい……。
そういえば、クリスマスに「福田組」がエイジの仕事場に集まりました。その時に、サイコーとシュージンを含めた全員(岩瀬のぞく)が、エイジの「喝」をもらっています。それ以来、福田組の面々は、アンケートの順位が上がっている。──亜城木夢叶は、変わらない(新連載だから比較は難しいが)。
ここまで亜城木の 2 人のためにオゼンダテが整っていて、服部から面と向かって励まされて、──それで何も変わらなかったら、もうオシマイですね。もちろん、そんなことにはならずに、何らかの「次の一手」を出してくる、と期待しています。
それは、『タント』をやめることなのか、続ける事なのか……。
