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『アフターダーク』

村上春樹氏の作品は大好きで、『海辺のカフカ』を積ん読(つんどく)にしています(ようするに、読んでいない)。『~カフカ』は、つまらない小説を 3 冊くらい読んでしまったときの口直し用」に取ってある、と書いてから半年が経ちましたが、まだ「外れ」をあまり引かないのでキープしてあります。

ただ、ここのところハルキ力(りょく)が衰えてきたので、補給のために『アフターダーク』を読みました(風邪気味で何言っているか自分でもわかっていないので、勘弁してください)。

あらすじ

これは、(いつものように)妙に礼儀正しい主人公の「僕」と、「デニーズ」の店内で出会った女の子との一夜を描いた作品です。

──と、あらすじを書いたところで面白そうに見えないし、実際にものすごい大事件が起こるわけでもありません。ちょっと不思議な記述の部分がありますが、たんなる錯覚や幻覚かもしれない。ましてや、この一冊から何かを学ぶ、という類の本でもないでしょう(拾えるところは多いです)。

「雰囲気」とか「空気」を味わう。そういう作品ですね。

ミステリィ好きとしては、最後にミステリィらしいオチや謎解きが欲しくなるような展開ですが、それは春樹作品には似合わないですね。

たった一晩の出来事だし、読むのに半日もかからない。でも「なんとなく、いいな」が残る。そういう作品でした。

無について

一番心に残ったセリフは、次のところです。

登場人物の二人が、時間つぶしで会話をしています。ひとりが輪廻を信じているか聞くと、もうひとりは信じていないと答える。すると、輪廻を信じている人が、こう続けます。

「私はね、輪廻みたいなもんがあるはずやと思てるの。とゆうか、そういうもんがないとしたら、すごい恐い。無とゆうもんが、私には理解できないから。理解もできんし、想像もできん」

「無という物は絶対的に何もないということだから、とくに理解も想像もする必要ないんじゃないでしょうか」

「でもね、もし万が一やで、それが理解やら想像やらをしっかり要求する種類の無やったらどうするの?」

『アフターダーク』 p.243

──なるほど。それはたしかに、恐い。

あらすじのところで、とくに何も起こらないと書きましたが、ちょっと背筋がゾクッとする場面、人間の狂気に触れるところなどがあって、最後まで飽きずに読ませる力は、さすがです。

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