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τになるまで待って

Gシリーズの 3 冊目は、いつもの大学院生トリオが洋館へ向かいます。

人里離れた森林に建つ、異様な外観の洋館・伽藍離館(がらりかん)。突然の嵐──そして起こる密室殺人。出口が開かず、警察もすぐには来られない!

──と、イカニモなミステリィ要素がたっぷり。登場人物も怪しげな人たちばかりで、館の主は超能力者(メイドさん 2 人つき)。「τ(たう)になるまで待って」とは──?

こういった部分だけを見ると、「新本格ミステリィ」なのかと思いきや──。そこはそれ、森博嗣の作品ですからね。当然のように、普通のミステリィではありません。

ミステリィ小説ではおなじみの「探偵(役)が事件の真相を語る」シーン。本作でも出てくるのですが──、「犯人はだれだ」を言い当てる際に、ミステリィでは前代未聞(?)の展開が!(森ミステリィではよくあること)

「ふ」女子ふたたび

赤柳初朗(あかやなぎ はつろう)は、加部谷恵美(かべや めぐみ)・山吹早月(やまぶき さつき)・海月及介(くらげ きゅうすけ)をアルバイトとして雇います。仕事の内容は洋館での調べ物。到着した時刻が遅く、とてもその日の中には終わらない。

洋館には宿泊の部屋が 3 つしかないことを見た加部谷は、

「だけど、四人ですよね、どこかの部屋が二人になりませんか? うーん、えっと、どうなるのかなあ。どうなるのかなあ」

τになるまで待って (講談社文庫 も 28-36)』 p.61

駄目だこいつ… 早くなんとかしないと…

いや、女子ひとりの状況では当然の心配でしょう。しかし、発言者は加部谷ですからね。どう考えても「山×海」なのか「海×山」なのかで悩みもだえているに違いない……!

──と考える脳みそこそ腐っている、というワナでしょうか……。

以前からおなじみのコンビ、西之園萌絵(にしのその もえ)と犀川創平(さいかわ そうへい)も元気に登場します。

この 2 人の活躍する場面のほうが、「G シリーズ」の登場人物よりも謎解きよりも、もっと気になる! という人も多いのでは?

しかし、「S&Mシリーズ」のときも「2 人の(恋の)進展を書くことが、最大のネタバレ」と言われてきました(要出典)が、いまとなっては──。いや、書くまい。皆さんの目でお確かめください。

ネタバレというか、佐々木睦子(ささき むつこ)を見続けてきた読者なら、萌絵はどうなるのか簡単に想像できるはず──。犀川に幸あれ!

エピローグの謎

「ミステリィらしい設定と、ミステリィらしからぬ結末」

──そんな印象の作品でした。

しかし、前作もそうでしたが、作品全体に漂う不穏な影を感じます。そしてエピローグを読むと、もっと大きな事件へのつながりを予感させます。

背景にある「力」の正体は「あの人」しかいないのですが、どういった形で現れるのか……。

まとめ

「G シリーズ」は、シリーズすべてで 1 つの作品という構成になっているのでしょう。作者は機会があるごとに「著作すべてで評価して欲しい」と語っていて、本シリーズはとくにそのことを強く感じます。

けっこう文句を言いながら感想を書いている気もしますが、感想の書きやすさはこれまでのシリーズで一番かも。ほかの森作品に比べて、すこし隙(すき)のある感じ。

──そう思わせて後半の作品で一気にひっくり返す、ということも考えられます。ところどころ、謎の描写がありますからね……。ミステリィ読者は「だまされるために読む」という変わった人たち(自分含む)なので、いまから楽しみです。

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