『バクマン。』 19 ページ 「デビューと焦り」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 04・05 合併号)
誰もが手軽に他人を評価する世界に生きている。
テレビを見ればゴシップに笑ってタレントの評価を下げ、ネットを見れば匿名の書き込みで昔の歌手を再評価する。人の意見で簡単に左右され秒単位で上下する評価に、一喜一憂する人たちが多い。
昔は評価する側の人間がほとんどだった。「テレビの向こう」は別世界だったのだ。
今では「ネットでデビュー」する人が増え、ネットで評価する機会は さらに増えた。不特定多数に評価されたい人には、間違いなく「いい時代」だろう。自分には理解できないが……。
サイコー・シュージン・エイジ・亜豆と見吉との差は、「夢を目指す者とあきらめた者」と以前に書いた。評価をされる立場かどうかの違い、と見ることもできる。評価をされ続けて生き残る世界──何とも過酷だ。
今回でようやく「19 ページ」の感想を書き終えた。そこでいま気が付いたが、合併号なので来週はジャンプが出ない。しまった、もっとゆっくり感想を書けば良かったか……。
見た目がいい
今さらだけど、亜豆が声優を目指している理由がよく分からなくなってきた。
いや、メタな視点で見ると「サイコーとシュージンのマンガがアニメ化した際には、声優として亜豆がヒロインを演じてもらう」ことが、この作品の主軸になっている(余談だが、マンガの作者がアニメの声優を決められるのか?)。そうではなくて──。
「亜豆美保」という人物を考えてみると、声優という自分を売り込む仕事が、まったく似合わない。それに、過保護すぎる父親(娘の学校のために引っ越しするか? フツー)から反対されたに違いない。反対を押し切って──という性格にも思えない。
ちょっと気になったのが、亜豆は自分の見た目
と歌
をどのように評価しているのか。不安げな表情をしているが、「自分の容姿と歌唱力に自信がない」のか、「アニメの声優なのに関係ないのでは」と思ったのか、判断できない。
不安ながらも亜豆がオーディションを受けるのは、サイコーの姿を思い浮かべたからだと思う。普通なら「真城くんが がんばっているから 私も……」みたいな独白を入れる。そうしないのは、読者にも亜豆の不安を味わってもらうためだろうか。
合格
「聖ビジュアル女学院高等部」
などという、後頭部までハゲ上がったオヤジが考え出したようなベタでアレなアニメ(言い過ぎ)の声優に、亜豆が挑戦する。心配だ。声優なのに容姿まで要求している時点で、おかしい。亜豆に危険フラグが立っていないか?
学園のアイドルがメディアを通してメジャになって、そのせいで危ない目に遭って──というと、やっぱり『I”s』の葦月 伊織(よしづき いおり)を思い出す。
しかし、仮に亜豆がピンチになっても、イチタカと違ってサイコーは駆けつけることができない(ことになっている)。さて、どうする?
そもそも「危ない目」に遭うどうかも分からないウチから(このブログ名物の)当たらない予想を書く。ズバリ、亜豆のピンチにはエイジが通りかかる! しかも、じつはエイジはケンカが強い、という──(どこかで見たような設定)。それか、亜豆が合気道などの達人だったりして。
燃える一方
熱しやすく冷めやすい自分から見ると、何かに一所懸命な状態を長く続けられる人がうらやましい。
ここでサイコーにも不安なフラグが立つ。読者から見れば二人は急成長し続けている。しかし、マンガ家を目指して一年が過ぎた今、サイコー自身はデビューまでの遠さを思い知った。
「百本足で器用に歩くムカデに歩き方を尋ねると、とたんに歩けなくなった」という話を思い出す。初めからサイコーの夢はムチャだった。亜豆との約束は、その場の勢いだけだったように思う。そのムチャさを忘れることによって、今までがんばって来れた。しかし──少しでも目標の困難さに目を向けると、心が折れてしまう。今回は危ないところだったのでは。
夢に近づいてる
亜豆から届いたメールを読んだ、二人の反応が面白い。二人の性格の差が良く出ている。
しかし、カレシ(では まだないけど)の反応としては、シュージンのほうが合っている。サイコーは「先を越された」気持ちでいっぱいのようだ。このあたりがサイコーのユニークなところだが、読者からするとヤキモキする。
極端な話、亜豆が「セクシー系グラビアアイドル」路線で売り出されることになっても、サイコーは「オレより先にデビューか……」とか言っていそう(さすがにそれはない?)。やはり、亜豆が道を踏み外そうとしたときには、サイコーのそばにシュージンがいないと危ない。
──あ、そうか。いちおう亜豆はサイコーに会えないのだが、シュージンとは問題ないのか。何かあったときはシュージンが助けに行く、という展開もありそう。って、カヤがいるか……。カヤが武闘派なのは、このための伏線なのかも。
変わっているよな
そうそう、シュージンのセリフで改めて思った。サイコーは変わっている。
というか──とくに今週号のサイコーは「ズレている」。エイジへのセリフは少し的外れだし、亜豆のメールへの反応も(未来の)彼氏らしくない。それと、たまたま今回は真剣に絵を描いている場面がないので、正直なところ『バクマン。』の主人公にふさわしくない、とまで思ってしまった。今回だけは。
次回はサイコーが激・執筆していることを祈りつつ、感想を終わる。