バクマン。 #57-4 「フリワケと引き分け」 特別な決定と読者の判断

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『バクマン。』 57 ページ 「フリワケと引き分け」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 46 号)

Weighed in the Balance (by Lawrence OP) (by Lawrence OP)

シュージンが描く「お笑い」と「SF」は、どちらも甲乙つけがたいデキです。これはスゴい。両方とも描けるマンガ家は、かなり貴重なのでは? 『バクマン。』の原作者である、大場つぐみさんくらいしか、名前が浮かびません。あとは、木城ゆきとさんかな?

しかし、よく考えてみると、両方の要素を持っている作品は多いですよね。『BLEACH』や『銀魂』・『ONE PIECE』など、人気の作品ほど笑いとシリアスのバランスがいい。

マンガだと強調して描くので、「シリアスな作品」と「ギャグマンガ」とは明確に分ける傾向がある、ということかもしれません。

連載に なってほしい…

連載会議の当日は、作家であれば誰でも緊張するのでしょう。サイコーと違って、シュージンは『TEN』でも連載になって欲しいようです。シュージンであれば、あまり描いてこなかったギャグマンガでも、器用に描くでしょう。

サイコーとしては、『TEN』で連載が決まってしまうこと、を心配している。かなり複雑な心境ですね。連載会議に出された作品がボツになることを待つ、などという状況は、本来であれば あり得ない。

連載会議の場面は、独特な空気が好きです。ピリピリしている。おもに子どもが読む(はずの)マンガについて、オトナが真剣に話し合う──これが面白い。人生に不必要なモノに力を注ぐことは、芸術や文化に必要なことです。

出来もいい

編集長と相田は、ギャグマンガとしての『TEN』を評価していますね。マンガに対してキビしい目を持った 2 人から認められるとは、さすがのシュージンです。

しかし、吉田は『Future watch』を推薦する。編集会議に出席している編集者の中で、亜城木夢叶の一番の理解者が、吉田でしょうね。亜城木の 2 人から詳しい事情を聞いたわけでもないのに、2 人が本当に描きたい作品はどちらかを、吉田は把握しています。

イカすぜ、吉田!

とくに、器用さに賭けるのならば展開が見えない方に賭けてみる、という説得の仕方に感心しました。この人、やはり、相当の切れ者ですね。

2 号連続だ!

なんと、『TEN』も『未来時計』も、読み切りで掲載されることになりました。この過去にない決定というのは、現実世界のジャンプにも言えることでしょう。同じ作家のギャグとシリアスを二週に渡って載せるなんて、聞いたことがない。ぜひとも、読んでみたいですね。

この決定は、亜城木夢叶の笑いも アリと編集部が判断した証拠です。本当に、シュージンの才能はスゴい。ただ、サイコーが心配していた結果、でもあるワケですね。

これなら ハッキリする

シリアスと笑い──両方の作品を掲載して、読者に決めてもらう。かなりゼイタクな結果になりました。亜城木夢叶にとっては、これ以上はない、望ましい展開でしょう。

今までの流れからすると、「シュージンはシリアスを描くべき」というサイコーの願いの方が、正しいように読み取れます。しかし、シュージンのシリアスが「より多くの読者に受け入れられる作品」になるかどうかは、まだ分からないのです。『疑探偵 TRAP』の読者が途中で離れた、という事実は無視できない。

言うまでもなく、現時点で、どちらの作品が連載されるかは、作者の中で決まっているでしょう。いったいどんな決着を付けるのか、今から楽しみです。