『バクマン。』 88 ページ 「表現力と想像力」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 27 号)
今回の服部が言った、エイジの勝っているところ──マンガとしての 表現力
とは、基本中の基本のことでした。
マンガを読むだけではなく、描き方まで知っている人には、「そんなことなの?」と拍子抜けしたでしょう。
──それでも、基本こそ大事です。
基本ができていなければ論外だし──、基本だけできていても面白くない。マンガは──創作は、「基本・プラスアルファ」の繰り返しです。
例えば 遠近感のつけ方
新妻エイジのように、子どものころからずっとマンガ一筋で、デビューしてすぐに人気作家となった人が、いまだに、
──キャラに入り込んで描けている
。
飽きたりせず、妥協したりせず、計算高くもならずに、ずっと(公私ともに)キャラクタになりきってマンガを描き続ける事は、ムズカシイ。だからこそ、エイジは天才なのです。
『+NATURAL』の原作を持ってくる、と服部は言う。いくら原作者本人──岩瀬(秋名愛子)が見せたがっているとは言え──、
──何かの規約違反なのでは?
人気を取るためならば、本当に手段を選ばないつもりなのか、服部──!
やる気出して くれたってことだ
──と思ったら、公表して何の問題もない「原作」だった。
小説版の『+NATURAL』は、『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』に似ている。──と思って本のデザインを調べたら、ぜんぜん似ていませんね。
──どちらも「黒い」というだけだった。
──原作者の「腹の中」──ではなく本が。
岩瀬の原作を読んだサイコーは、エイジの想像力を評価しています。ほかの編集者たちと同様に、
「この原作からあのマンガに仕上げられる──新妻エイジはスゴイ!」
という結論になりそう。
おそらく、岩瀬は自信満々で、原作を亜城木夢叶に──シュージンに読んで欲しかったに違いない。マンガ『+NATURAL』が世間に評価されているのは、原作の──自分の力だ、と。
しかし、現実には、よりいっそう──エイジの評価が高まっただけでした。
省けるところは省き
原作を完全に自分の マンガにしている
ところが、エイジの優れている部分ですね。原作以上の作品に仕上げている。
ただし、だからといって「岩瀬はダメだ」というわけではありません。
エイジをここまで熱くさせた原作者は、いまのところは、ほかにいない。それに、まったく話を変えているわけではないのだから、やはり、岩瀬の書いた原作も面白いはず。
サイコーが発見した、亜城木作品の弱点は、間のコマ
がないことでした。
これまた基本的なことのようで、案外ウマく間を取っているマンガは少なかったりします。
──間のコマを意識して入れることは、技術でできる。
──入れた間によって、作品に深みを出すには──、
──センスが必要だ。
『HUNTER×HUNTER』を見れば分かるとおり、冨樫義博先生は、間のコマの入れ方が絶妙にウマい。単純な「状況の説明」で終わっていないのです。
ちゃんと引き継ぎもせず
元気に去っていく港浦の姿が、頼もしい。
ただ、この場でもうすこしだけ、ネームの作り方や打合せの方法を学んだ方が──、港浦にとっても良かったと思います。
──こういう点が、港浦には抜けている……。
おかげで 迷いが晴れたよ
港浦が言うとおり、服部は、秋名へ港浦をちゃんと紹介するべきですね。いつものように、そういう場面はあったとしても、カットされているのでしょうか。
でも、港浦を紹介する服部と──、無言でキッとにらむ岩瀬を、ちょっと見たかった(悪趣味)。
本当に 頑張らないと
、という港浦の決意は、これで何度目だろうか……。
