『バクマン。』 134 ページ 「独走と鈍足」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 26 号)
最近は ずっと王道バトルが 上位
──とシュージンは言っています。この「最近」は、『バクマン。』の世界のように 5 年後も続いているのでしょうか。すくなくとも、原作者の大場つぐみさんは、そのように想像しているようです。
現実世界の「ジャンプ」では、シュージンが言うところの「邪道バトル」──心理戦が増えてきました。「特殊能力や腕力の強いほうが勝つ」という単純さも良いけれど、「頭が良くて応用力がある人間は強い」という描写のほうが、現実的です。
個人的には、最近の『めだかボックス』と『奇怪噺 花咲一休』の頭脳バトルが好きです。『エニグマ』に出てきた「これまでの認識をすべて ひっくり返す」という描写もたまらない。
これからのバトル・マンガは、頭脳戦の要素が必須でしょうね。だから──、いつまでも「修行編」を描いている場合じゃないと思うなぁ……(どのマンガのこと?)。
模倣犯を題材に
不調な時に どう行動するかで、その人の真価が分かります。いつもゴキゲンで大好きだった人が、ピンチになった時の姿を見て幻滅した──ということはありませんか? 自分は、自分自身にそう思ったことが何度もあります……。
好調な時でも調子に乗りすぎないサイコーとシュージンは、これからも危機を乗り越えていくでしょうね。2 人の強みは、精神力の強さと性格の良さです。──ほかの作家との交流は、ほとんど ぶち切っているけれど。
2 人の学生時代から見守っている服部にも、今回の復活劇は感激したことでしょう。それが表情にも表われて──なかった。
『PCP』の模倣犯・六塚を見た犯人は、いま何を思っているのだろう──。たしかに、「マンガの中の話」では片付かない問題です。「そうか──、もう犯罪行為なんて出頭しよう!」なんて、犯人は考えない。
さらなる「勘違いした報復」が起こることは十分に予想できるけれど──、たぶん、もう『PCP』のモノマネ犯罪は起こらないでしょう。その理由は、「話の都合上」で説明できてしまう──。
新妻さんの 存在も
今までは あっという間に ネームを 描いていた
新妻エイジは、プライベートの時間を どうやって過ごしていたのでしょうか? 現在のエイジは 2 作品を連載しているけれど、『CROW』だけを連載していた時には、もっと時間が ありあまっていたはずです。
仕事場に雄二郎が訪れた時には、いつもエイジは机に向かっている。もちろん、締め切りよりも前に原稿は完成しています。いったい、彼は何を描いているのだろう?
おそらくエイジは、絵の練習をしつつも、別のマンガを描き続けているのでしょうね。未発表の読み切り作品が、山ほどあるに違いない。雄二郎が真の「やり手」だったら、読み切りのコミックス化を考えるはずだけれど、その気配はない──。
2016 年も絶賛休載中と思われる(?)『HUNTER×HUNTER』の代わりに、エイジの読み切りマンガが毎号のように載っていたりして。──いや、ずっと 1 位を獲っていたのは、じつは『H×H』だったとか!?
完全に 立ち直りました
いつもいつも新妻エイジを意識してきて、時には焦りすぎていたサイコーは、少しずつでも 差を縮めていこう
──と余裕のある発言をしています。彼の精神的な成長が うかがえますね。
よくよく考えてみれば、エイジよりも票を集めるためには、話の魅力のほうが重要になってくる。それに、話の傾向を急に変えることはできても、絵柄を変えるのはむずかしい。けっきょくは、シュージンの頑張りしだいなんだよなぁ……。
3 週 連続 ですね
いつもとは様子が違うエイジに、かなり驚きました。彼につられて雄二郎まで変顔をしているから、このページだけを読むとギャグのように見える。ところが──、今回のエイジは、ずっとこの調子です。なんだか、こわい。
そもそも、きちんと担当者の方向を向いて原稿を手渡す──という時点で、すでにエイジらしくない(もしかして、この動作は初めて?)。普段のエイジなら、完成した原稿を床に散らかしておきます。
雄二郎は、なぜエイジに真意を聞かないのでしょうか? エイジなら、いつでも本心を語ってくれるはずです。いつもは気安く話しているアフロだけれど、エイジとの間には いつもカベを感じているのか──。編集者は、全員そうなのかも。
ちゃんと 描いてます ケド
どこまでも他人任せな港浦の態度にあきれました。まるで、『+NATURAL』の順位が下がったのはエイジのせいだ──と言わんばかりの口ぶりです。
上位を獲れない理由は、話が 面白くない ですから
──とエイジは言う。こういうハッキリと自分の気持ちを言うのは、「いつものエイジ」に見えます。
しかし──、どうも今週号のエイジからは、「『+NATURAL』は仕事で描いてます」というオーラが出ている。いや、それは当たり前のことだけれど、エイジの口から原作 僕じゃない ですから
という言葉は聞きたくなかったな……。
初めて『+NATURAL』の原作を読んだエイジは、心の底から楽しそうな表情をしていました(『バクマン。 (8)』)。けっして「仕事で描こう」とは思っていない。
自分には 考えられない 面白い話を描くのも 楽しいです
。そう言っていたころのエイジは、どこへ行ってしまったのだろう──。