よつばと!
この作品は、毎日読んでいます。──何の誇張もなく、「毎日のように」でもなく、毎日。これからも読み続けるでしょう。
とはいえ、読み始めたのは先月の頭からです。単行本の第 1 巻が発売されたのは 2003 年なので、かなり出遅れました。いまでは最新刊の第 10 巻までそろえて、次の巻が楽しみな作品の 1 つです。
主人公は小岩井よつば(こいわい──)という 5 歳の女の子と、とーちゃん(父親・下の名前は不明)で、引っ越してきたばかりの借家や隣家での日常風景を描いた作品──と書くと、よくある「日常系」のマンガみたいですよね。そのとおりではあるけれど──、
類似品とは一味も二味も違う。
基本的には 1 話完結型で、2 話にまたがる話や増ページがあります。そういったスペシャルな回に、「牧場へ遊びに行く」や「お祭り」を描くのは分かるけれど、「ヤマダ電機へ買い物へ」という話で 2 話を使うところが『よつばと!』らしい。
ほかの作品には見られないような、「笑える部分の外し方」が絶妙なマンガです。次から次へと消費するだけで読み捨ててしまう、ファストフードみたいな作品に飽きた人は、ぜひどうぞ!
しつけは しっかりと
普段はズボラな とーちゃんが、たまに厳しい面を見せる。よつばが約束を破ったり、ウソをついた時には、ちゃんと「しかる」のです。「怒る」のではありません。
子どもを育てるのは大変です。イライラすることもあるでしょう。それでも、親の「個人的な怒り」を、暴力という形で子どもに向けないで欲しい。そう強く願います。
とーちゃんは、よつばを殴ることもあるけれど、そのコブシには愛情が こもっている。だから、泣かされたよつばも、性格が ゆがんだりしません。
しかし──、よつばを下のように言い聞かせる感動的な場面の直後、とーちゃんもウソをつくんですけどね……(「仁王像は夜に目が光る」)。
失敗するのは よつばの仕事だ
でも 嘘はつくな
風香はウザかわいい!
登場人物の中で一番好きなのは、綾瀬風香(あやせ ふうか)です! なんといっても、容姿が愛くるしい。プールや海で描かれた水着姿は、マニアックな体形で本当にドキドキしました。
最初は「しっかりした娘さん」という感じで登場したのに、第 2 話目にして「おっちょこちょい」な部分が見え始め、単行本の第 2 巻で すでに「ウザキャラ」と化しています。でも、それが良い!
彼女のウザさが出始めた第 14 話は、かなり特殊な 1 話です。ほかの話は「よつばと──」というサブ・タイトルなのに、この回だけ「あさぎのおみやげ」になっている。よつばも最後まで出てきません。
その同じ回で、沖縄土産のシーサーに「シーザー」と名付けて、おまえもかー
と言う風香は、失神しそうになるくらいプリティ!
風香の最高潮は、前述の電器店へ行く回ですね。(やや濃いめの)まゆ毛を剃ったほうが良いか、とーちゃんに聞いたあとの反応がキュートすぎる! ジョーバにまたがる姿も「ごくり……」です(?)。
こんなコに、まるで無反応な とーちゃんって……。
心もジャンボ?
男性陣で好きなのは、ジャンボこと竹田隆(たけだ たかし)です。体が大きいわりには神経が細やかで、気配り上手なところが良い。第一印象と中身が、とーちゃんとは逆という感じです。
初対面の風香には美少女
と言い、早坂みうら(はやさか──)にはチビッ子
で男か女か分からないとジャンボは言う。正直(すぎる)性格で、誰とでも同じ距離感で接する(あさぎは除く)という点では、よつばと似ていますね(つまり同レベル?)。
上で書いた できごとがあったため、いつもより「女の子」な格好をした みうらが最高です! 彼女はボーイッシュなだけに、たまに見せる女の子らしさが目立ちますね。そして、そこにすぐ気がつくジャンボも素晴らしい。彼が言うと いやらしくないし、イヤミにも聞こえません。
みうらの格好で一番有名なのは、「ダンボー」だけど。
ジャンボが、いつまでも「とら」のことを勘違いしているところも面白い。とらの初登場は沖縄で、水着姿だったため、性別がすぐに分かりました。普段着なら どちらかが分かりにくい(失礼)から、ジャンボと同様にしばらく悩みたかったな。
難解な内容?
これだけ書いておいて最後に言うのは反則ですが──、ハッキリ言って、『よつばと!』は人を選ぶ作品です。
かなり以前から、「はいはい、ここが笑うところですよー!」という演出が、テレビ番組では一般的になっている。芸能人の(作った)笑顔や字幕を かぶせたりして──。あれは、テレビを見なくなった自分の目には、異様に映ります。
多くの(ギャグ)マンガでも、擬音を載せて読者に「笑うポイント」を知らせる。ところが、『よつばと!』には、そういった演出が極力すくなくなっています。「このページの面白いところは──」と自分のほうから探していくマンガになっている。
つまりこの作品は、「分かりにくいマンガ」と言えるでしょう。一昔前の「ズコー!」とコケるギャグマンガに慣れ親しんでいると、どこが面白いのか分からない。かわいらしい絵柄だし、むずかしい言葉は出てこないけれど、
しかし、『よつばと!』で笑えない人は、その人自身が面白くないと思う。とくに、「いまどんな作品が人気か」とか「あの場面が分からない」ということを他人に聞いてばかりいる人は、『よつばと!』で笑えない。
──ということで、個人的には「リトマス試験紙」的な作品と思っています。ぜひ、お試しあれ!