HUNTER×HUNTER 17 巻 「三つ巴の攻防」 1 – 離れない愛の快勝

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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.17 「三つ巴の攻防」

Dodge Ball
ボールを追う姿から──目を離せない

リアルに描かれたキルアと犬の表紙が、鮮烈に目を引く第 17 巻です。いよいよレイザーとのドッジボール対決が盛り上がり、次の展開へと華麗に繋がるのですが──、

この巻には疑問が多かった

話の本筋に関わるほどの問題でもないけれど、「それは あり得ないだろう」と思う場面が全巻にも後半にも出てきます。普通のマンガであれば見すごせる点も、現実味がある『ハンター×ハンター』では かなり気になる。

──と言うことで今日と明日は、連載時から 10 年越しの「なぜ?」を書いてスッキリするという目論見なのでした。

No.164 「対決 7」

No.13 と No.2 の連携は見事で、美しさを感じます。巨体と小型の 2 体を残していたのは、このコンビネーションを描くためでしょうね。

ゴレイヌは あえなく退場になったけれど、レイザー本人に大ダメージを与えた人物は、『H×H』史上で彼だけです。

また、強大な 13 番の一撃を、完全に不意打ちで顔面に食らったのに、「あまり原形と変わらないくらいに腫れた」程度で済んでいる。

──ゴレイヌ神の強さは測り知れません!

この場面を見て、中学生のころに授業でやったドッジボールを思い出しました。体育教師に思いっきりボールを顔に投げられたのです……。もちろん「顔面への 攻撃もアリ」ではない。いまでも時々(日本での地震の回数くらい)腹が立つ!


レイザーの投げた「シュート」は、少し かすっただけなのに、ビスケの衣服が一部分 消し飛んでいます。この「ビスケのスカート部分が破損していること」は覚えておきましょうね──。

恐ろしい威力と速度のボールに反応するキルアは、「思考の瞬発力」が素早い。ゴレイヌ先輩とは比べものになりませんね!

また、レイザーの球を楽にキャッチして即座に投げられる No.5 も小型なのに強力でした。ほぼ完全に反応できたヒソカの指が 2 本も複雑骨折している。その痛みを想像する──のは やめておこう……(イテテテッ!)。


ゴンは いつでも、あきらかに自分よりも強い敵に向かって、まったく恐れることなく立ち向かっていきます。あくまでもレイザーに「完全勝利」を目指している。

ほかの作品でよく見る「オレが倒さなければ」という使命感ではなく、「オレはすっごく 頭に来てる」から「ハンパには 勝たない」という姿勢が好きです!

なにしろゴンは子どもだし、今は「ゲームのプレイ中」ですからね。「オトナの事情」で動かされたり、責任感に燃えるのは、まだまだ先のことです──。

No.165 「対決 8」

ジャンケンのグーで勢いよくボールを打ち出すゴンですが──、このボールは普通の物だったはずです。そこで冒頭に書いた疑問が襲いかかってくる──。

なぜ、ゴンの攻撃にボールは耐えられるのか

レイザーの場合は、「ボールをオーラで覆い(『周』)、そのまま投げつける(『放出系』)」──で説明が できます。熟練した念能力者ならではの技だな──と理解できる。

ゴンも「溜めたオーラをボールへ移しつつ、オーラごと放出する」技なら良かったけれど、後半の展開を見るようにゴンは「放出系」が苦手です。

この矛盾を解消するには、たとえば「オーラを吸収して強化されるボール」だったら納得ができました。ところが、ゲームの前にレイザーは「普通のボール」だと明言している。

──たぶん、グリードアイランドの制作者たちが研究に研究を重ねて作り出した「地球上で もっとも柔軟性があって壊れにくい素材──を使った普通のボール」なのでしょうね!!!1


上記の矛盾は ともかくとして──、ドッジボールという種目は、まだまだ修業不足のゴンを強く描くために、作者が選んだと見ました。

じっくりと「練」でオーラを溜めて、のんびりとした かけ声の「発」で打つなんて、実際の戦闘中で やっていたら──途中で首が飛ぶ。

ビスケが、イヤミったらしくその点をレイザーに指摘しているところも良かった。下で書いたように、レイザーが得意なスポーツは別にあるだろうから、このイヤミにも深みが増します。


レイザーのレシーブによる捕球は躍動感が見事でした!

ところが、「伸縮自在の愛」(バンジーガム)のほうが一枚上手で頼もしい。この捕球方法であれば、右手を負傷していても使えます。本当に使い勝手がよい念能力ですね。

No.166 「対決 9」

さすがに一つ星ハンターだけあって、ツェズゲラが局面を一番正確に理解しています。それだけに、自分が戦場にいないことを悔しがっている。

ヒソカも指の負傷でボールを投げられないから、No.2 を倒しつつ捕球──ができない。

究極の回復呪文である「大天使の息吹」を使えない状況が効いていますね。すべてが「レイザーとの直接対決!」を盛り上げるために状況が作られています。

ロールプレイング・ゲームでは回復アイテムが大量に出てきて当然なのに、作中では ほとんど描かれていませんね。たとえば「No.47 睡眠少女」や「No.48 発香少女」で心身ともに休めるはずなので、どんどん描くべきですッ!!!1


キルアの手を強引に見せたビスケは、現時点でのリタイアも考えていた可能性が高い。彼女は師匠だから、2 人の成長のためにも、体のことを一番大事にしたいはずです。

ビスケ
「てか べつにブループラネット手に入らないし」

ビスケの行為は、キルアの状態をゴンに見せる意味もあったと思う。ところが、ゴンが気づいていたとは意外でした。「キルアじゃ なきゃ ダメなんだ」なんて言われたら、誰にも止められません。

──途中でギブアップして、メンバを入れ替えて出直せば良いだけですが、そんなことは頭にない。ツェズゲラと交代することすら「逃げたことに なる」なんて思っているくらいです。

その頑固さは、いつか身を滅ぼすのでは……。


必殺技の前に「フッ まさか(以下略)」なんてセリフを吐くなんて、レイザーが一気に「二流の敵」みたいに見えました──が、その実力は やはり桁外れでした。

念獣・「14 人の悪魔たち」からオーラを戻すことで、レイザーは完全に力を取り戻す──。この場面を描くために、すべて計算されていたことが よく分かりますね! 作者は、いったい どれだけ未来を見ているの だろう。

本気の本気で出す技がバレーの スパイクであり、捕球がレシーブという点から考えて、レイザーの得意種目はバレーなのだと思いました。

もしも対決がバレーだったら、ゴンが「練」をする余裕はないし、まったく勝ち目がない。グリードアイランドの運営前に制作者たちと相談して、「こりゃ無理ゲーすぎるわ」ということでドッジボールに決めたのかも。

「無理ゲー」と言えば、『Trials Evolution』の「忍者級コース」の映像が すさまじかった! 次の記事の下のほうにある動画をぜひ ご覧くださいね。プレイしたことがない人でも、その難易度は一目で分かるはず。

『Trials Evolution』が発売直後から神ゲーと話題。“無限に遊べる”バイクゲームの魅力とは | APPGIGA!!(アプギガ)

No.167 「対決 10」

ゴン×キルア×ヒソカの合体で「フ女子」大歓喜!

──か どうかは知らないけれど、3 人の特色を最大限に発揮した斬新な捕球の方法でしたね。

そもそも、天空闘技場でヒソカと別れた時には、再会した時は「ゴンとヒソカが真剣勝負で戦う」と思っていました。その予測は当たっていたけれど、こういう連携技で助け合う形になるなんて読めない!


この合体技でもキルアの優秀さが光っています。話の中心にキルアがいる──という印象を受ける。そして その傾向は、今後も強くなっていきます。

レイザーとビスケが見たように、攻防力移動という念での戦いの奥義を、キルアは すでに極めつつある。実戦を重ねることで、さらに強くなるでしょう。

キルアの「天才的なセンス」は、産まれた直後からの死にものぐるいの日々が あったからです。たんなる「恐ろしい才能」では片付けられない。

──こうやって見てみると、ゴンは才能に助けられている所が大きいですね。レイザーも「ジンの息子だから『怪物』だと恐れている」ように思える。

No.168 「対決 11」

ヒソカが「バンジーガム」でボールを捕まえる場面は、素晴らしく格好良かった! 今までの「おいしいところ」は すべてゴンのために用意されていたから、この不意打ちにはシビレます。

レシーブで威力が減っているとは言え、よくレイザーの攻撃を受けて返せましたね。それだったら、今までの球もヒソカひとりで返せたのでは──と思ったけれど、両方の指が壊されているくらいだからダメか。

また、最後にゴンが打ったボールにも「ガム」を付けておけば良かったのでは──とも思いました。ただ、それだとヒソカもダメージを受けそうだし、ボールの威力も減るかも。

ヒソカに とっては「楽しいバトル」が生き甲斐だから、ここまで がんばったのでしょうね。双葉杏のように「はたらかない」を幻影旅団で徹底していたのは、戦う相手がマフィアなど弱くて退屈だったからかな。

まさかヒソカが、「全員(チーム)の勝利って やつさ(はぁと)」なんて言う日が来るとは思わなかった。ゴンとキルアが次にヒソカと会う時も、両者は良い関係で いられる──のかなぁ……。

ツェズゲラの仲間たちは、「ヒソカは いい人」という印象で帰ったに違いない。でも、外野の顔なんてヒソカが覚えているわけがないから、道ばたで軽々しく あいさつなんかしたら、トランプで首を──。

No.169 「宣戦布告」

「ゲームマスター」としてでも「敵キャラ」としてでもなく、ひとりの人間として・ジンの仲間として語り出すレイザーが印象的でした。初対面の時に感じた不気味さは皆無です。

レイザーは劣悪な環境で悪人になった。しかし、現在のレイザーは「世界中に たった 1 人」「1 人だけでも 自分を信じてくれる 人間がいれば 救われる」ことを知っている。

同じような環境にいたビノールトも、グリードアイランドを出て更正できると良いな……。

客観的に見れば、レイザーは「孤島に幽閉されている死刑囚」であり、「プロ・ハンターに雇われている身」なのですが、誇りを持って「海賊の船長」を演じている。第二の人生を満足して生きていますね。

ただ、誰かがゲームをクリアした後は、レイザーたちは どうなるんだろう? それと、ツェズゲラとゴレイヌのように、「一坪の海岸線」を「複製」(クローン)したら、2 度とレイザーに挑戦する人物もいなくなるはずです。

──なんだか、さみしい。

グリードアイランド制作前のジンは、「数年後のゴン」といった感じですが、それよりは『幽☆遊☆白書』の浦飯幽助に似ていますね。現在のジンは、どんな姿をしているのだろう?


おそらく念で具現化した女性による「一坪の海岸線」の入手イベントは、最高の難易度を誇るカードだけあって、かなり凝った話になっています。

ゴンが複雑な表情で女性を見ているけれど、その「彼女の家族の命を奪った海賊」って、さっきまで話していたレイザーたち(という設定)なんですけどね。

──似たような「一坪の密林」も、正規の方法で手に入れるには感動するドラマが あったのかなぁ……。誰かに「宝籤」で当てられたから、永久にイベントは封印でしょうね。


ビスケが言う「意味のある嘘しか つかない」と「意味のない嘘もつく」というウソつきのタイプ分けが おもしろかった。ウソつき一筋■十年のビスケが言うと重みがありますね。

キルアは「ドッキリテクスチャー」を知らないから、たしかに深く考えると 泥沼に はまる。 そして その泥沼は、この作品の いたるところに仕掛けてあるのだった──。

よく見ると、いつの間にかビスケのスカートが直っています! ゴンとレイザーが話している時くらいに着替えた可能性もありますが、そもそも彼女はバッグなどを持ち歩いていない。

ビスケの衣服は、彼女の念能力で作り出しているのかも しれませんね。ゴンとキルアの修行中にも、いつもビスケだけはピカピカだったし。


ゲンスルーの「取引」は、完全に強迫です。一時的とは言えども仲間だった人たちを襲われて、ゴンが怒るのも無理はない。

しかし、「爆弾魔」の標的はツェズゲラだけだったのに、ゴンの「宣戦布告」で事態が悪化しました。まぁ、それも いつものことか……。