森見登美彦一覧

『新釈 走れメロス』 森見登美彦 – 男の友情とは「ちょっと手加減」

『新釈 走れメロス 他四篇』

20080405 哲学の道・鴨川の桜 201 (by merec0) (by merec0)

この本は、大切な友だちから借りて読みました(そればっかり)。

最初は「新訳(しんやく)」かと思って、なんだかお堅いイメージがあったのですが、よく見ると「新釈(しんしゃく)」となっている。「新しい解釈」のことで、ようするに「パロディ物」ですね。「生まれ変わった釈由美子」──のことではありません(書いて後悔した)。

本の題名にもなっている『走れメロス』の新釈は、パロディらしく思いっきり笑える話になっています。自分が過去に読んだ 2 作品と同じで、オモシロオカシイ大笑いできる内容になっている。

ところがほかの短編は、シンミリとしたセツナイ話に仕上がっているんですよね。そういえば、上に名前を挙げた作品も、芯の部分は切なさが流れています。それをオモチロイ要素でコーティングしてある、という印象でした。

全 5 篇の中で自分が一番好きな話は、『桜の森の満開の下』です。笑える部分を徹底的に削ぎ落とし、正体の知れない不安が全編を包み込んでいる。そして、最後のなんとも切ないこと……。

森見さんが書く小説は、ほかの作品とリンクしているところが面白いです。『走れメロス』の 5 篇もそれぞれ同じ人物が出てくるし、ほかの本ともつながっている。ファンサービスというよりも、「自分の子ども」たちに対する作者の愛情を感じました。

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『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦 – 日々是なむなむ!

『夜は短し歩けよ乙女』

Daruma-4 (by KO-ROCK) (by KO-ROCK)

大切なおともだちから、小説をお借りしました。──そう、こんな(どんな?)自分にも、大事な大事なトモダチがいるんですね。自分でビックリです。

同じような事が一年ほど前にもあって、その時にも森見登美彦さんの本を借りました。

『有頂天家族』 森見登美彦 – タヌキ鍋すら恐れず面白く生きよ : 亜細亜ノ蛾

前に読んだ『有頂天家族』はジャンル分けがむずかしくて──うーん、「動物が主人公のドタバタ日常冒険活劇」、かな?(何だそりゃ)

『夜は──』は簡単で、「恋愛小説」と言って間違いではないでしょう。この作者のことですから、もちろん、ヒトスジナワではいきませんが……。

上で名前を出した 2 つの物語は、それぞれフンイキが異なります。ところが、読後のスッキリ感は同じでした。「世の中にはオモシロオカシイことがある──それを見つけに行こう!」と思ったのです。良い本を読むと、行動を起こしたくなる。

ああ、この本に出会えて良かった! 未読の方は、ぜひどうぞ。

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『有頂天家族』 森見登美彦 – タヌキ鍋すら恐れず面白く生きよ

有頂天家族

Sake? Yes, Please. (by Jon Christall) (by Jon Christall)

「狸であったらだめですか」というまったく工夫のない台詞は、その頃の私が口にしたものだ。弁天は「だって私は人間だもの」と答えた。

さらば初恋。

『有頂天家族』 p.021

本書の主人公は狸(たぬき)である。──そう聞いただけで読む気を失う人は、はっきり言って損だ。

タヌキが人間に喰われそうになったり、タヌキ同士で争ったり、天狗(てんぐ)に恋したり──たくましく「うごうご」生きている面々の騒動が描かれている。タヌキ社会の何気ない日常が出てくるのだが、われわれ人間には特異に見える。

タヌキだけあって、主人公の矢三郎は人間によく化ける。そして、人間社会に溶け込む。同じように、天狗が普通にアパートで暮らしていたりする。

こう聞くと、よくある「タヌキの形を借りた人間ドラマ」に見える。しかし、そうではない。そういった一面もあるが、作者の「タヌキも天狗も大好き!」という思いのほうが強く伝わってくる。どちらかというと、「タヌキや天狗が描きたい」が主題で、分かりやすくするために仕方なく「人間ドラマを借りている」感じ。

矢三郎を始め、タヌキは「タヌキ的思考」をしていて、人間の感覚からすると異常に見えたりする。そこが面白いのだ。

まぁ、作者のブログ・「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」を見ても、「タヌキ好き」な一面は強調されていないので、自分が読み誤っているのかもしれない。それでも、面白ければ良いのだ。

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有頂天家族
森見 登美彦
幻冬舎 2007-09-25

きつねのはなし 新釈 走れメロス 他四篇 美女と竹林 夜は短し歩けよ乙女 四畳半神話大系 (角川文庫)

by G-Tools , 2009/02/09

有頂天家族 – Wikipedia

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