『カンガルー日和』 村上春樹・著
部屋の明かりをすこし弱めて、読書をするのにピッタリな夜ですね。こんな夜には、物語が恋しくなります。
そう、人間の想像力こそが、人間を幸せにする。
村上春樹氏の小説を読むと、物語の力を思い知ります。とくに、短編小説が素晴らしい。短い枚数の中に、よくこんなにも奇跡を詰め込めるものだ──と感動します。
『カンガルー日和』もバツグンの切れ味でした。
本を開くと、中には 23 編もの素敵なストーリィが眠っています。さっと読めてしまうページ数なのに、ひとつひとつの話が 1 冊分の長編に化けそうなパワーを秘めている。事実、長編になったり映画になったり(!)しました。
楽しい比喩も満載です。エサをあさる父親カンガルーのことを、才能が枯れ尽きてしまった作曲家のような顔つき
と表現している。こんな言い回しは、ほかの誰にも思いつけません!

