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『シグマ DP1 マニアック・マニュアル』 横木流スナップショット 2

シグマ DP1 マニアック・マニュアル

Live (by williamchu) (by williamchu)

「シグマ DP1」という、「超」が 256 個くらい付くマニア向けのカメラがある。コンパクトデジタルカメラの外見でありながら、中身は一眼レフデジカメの映像素子を持っているのだ。

そのほか、マニュアルフォーカス用にダイアルがあったり、JPEG で撮ると 460 万画素しかなかったり、3 連写するごとに 15 秒も待たされたり、とマニアックすぎる仕様である。「漢(おとこ)のカメラ」と言えるだろう。

さて、今回紹介するのは、その DP1 について書かれた唯一の本である。ほかの高級デジカメは何冊も(軟弱な)マニュアル本が出ているのに、この魅力的なカメラの本を出す勇気があるのは何人もいないようだ。

ところが、カメラと同様に、内容にはクセがある。

タイトルに「SIGMA DP1」とハッキリ書いてありながら、中身は「横木流・撮影術」という感じなのだ。

著者の横木 安良夫(よこぎ あらお)氏といえば、スナップショットの名手である。ここでいうスナップショットとは、「構図や露出などを考えず、お気軽に散歩道などで簡単に撮ること」──ではない。盗み撮りとか速写と言われる手法のことだ。

──念のために言っておくと、「盗み撮り・イコール・性犯罪」と短絡して考えるのはやめよう。むしろ、その思考には注意が必要だ。

本書では、横木氏のお得意とするスナップショットについて、多くのページを割いてある。「DP1 でタクのレオナルドちゃん(ウェルシュ・コーギー)でも撮ろうかしら」というマダムが、うっかりと本書を手に取るとビックリするだろう。

なんだか本書を読むと、氏と同じようなスナップショットの愛好家のために DP1 は作られた、というように思えてしまうのだ。──どちらかと言うと、スナップショットに最適なカメラは「RICOH デジタルカメラ GX200」だと思うが、それはまた書く。

とはいえ、DP1 を買って本書に手を出す人が、「子どもの運動会」や「ウチのペット」ばかりを撮るだろうか。もっといろいろな被写体を求めて街や野に繰り出す人には、本書の作例が大いに参考になる。すべての写真には、撮影データが明記されているのだ。

後半には横木氏が提唱する「CreCo(クリコ)」というレタッチ法も載っている。写真の良さを引き出すこの手法を、ぜひとも試して欲しい。自分も最近ハマっている。

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