『菫画報』を読もうキャンペーン
まだまだ続く、「ゴールデンウィークはマンガを読もうキャンペーン」。今回は『菫画報』(スミレガホウ)。 作者は小原 愼司氏です。
『菫画報』は、1999 年に発行されたコミック 4 巻で完結しています。新品で手に入れるのは難しいかもしれませんが、マンガ喫茶やブック○フなどを利用して、ぜひとも読んで欲しい作品です。
どんな話?
20 世紀最後の「おてんば」という言葉が似合うヒロイン・星之スミレ(ホシノスミレ)が主人公。非常に活発に学園中を引っかき回すパワフルさを持ちながら、趣味は読書で高校の新聞部に所属している(いわゆる文科系女子、ですな)。
すべて一話完結で、どの話も乱暴にまとめると「スミレとちょっと変な人たちが出てくるドタバタコメディ」。「なぁんだ、よくあるマンガか」というと──うん、その通りなんだけど、とにかく抜群にセリフのセンスがいい!
絵柄が独特で、ちょっと人を選びますが、合う人にはたまらないマンガです。──ぶっちゃけ、『銀魂』と通じるものがあると思うので、お好きな人はぜひどうぞ。
主人公・スミレ
毎回、スミレというキャラクタの魅力とセリフ、そして絶妙な「間」で読者を引っ張っていきます。
まず、「第 1 報」の 1 ページ目がすごい。「マンガの第一話」の見本のような見事な出だしです。
「偉大な新聞記者クラーク・ケント」の言葉、「ペンは剣よりも強し」を引用(突っ込んだら負け)しながら新入部員の入部試験をする、ショートボブでセーラー服、黒ソックスのスミレが魅力的!
この第 1 報は、『菫画報』の魅力がたくさん詰まっているので、この話でノック・アウトされた人は、そのまま 4 巻まで止まらず読み進むでしょう。
スミレは「百合」な人たちに好かれているというシーンが何回も出てきます。「ほのめかす」程度の描写なので抵抗なく読めますし、好きなひとには、たまらない……。
てか、「ほしのすみれ」といえば、パーマン 3 号だよなぁ──(今の若いコたち、知ってるかな?)。藤子・F・不二雄スピリットが生きているのが、すぐに判るネーミングですね。
ref.: パーマン – Wikipedia
「第一印象は怖かった」
親友の琴子(ことこ)がスミレと初めて出会った頃を回想するシーンによると、
「遅刻は多い 時々いなくなる 男の子でも平気でひっぱたく て ゆうか ぶんなぐる」
「男のコ達とは仲いいケド たいていはひとりで つまんなそうに座っちゃってる」
『菫画報 2 巻』 第 10 報「第一印象は怖かった」
──とのこと。後でスミレと琴子は親友になっていきます。森博嗣さんの第一印象は悪い方が良い
(MORI LOG ACADEMY: お客様多数)という話を思い出すエピソードです。
どう読んでも「不良」とか(時代的に)「スケバン」というセリフが浮かびますが、本編を読んでみると、「落ちこぼれ」てはいても、不良には見えません(タバコは吸いますが)。作者がスミレというキャラクタに惚れ込んでいるのがひしひしと伝わってくるので、ひいきされているのか、もしくは──ひょっとすると、世の中の「不良」の中には、スミレのような「いいキャラクタ」がいるのかも知れませんね……。ちょっと、「みんな」からははみ出しているだけで。ようするに、誤解されやすいキャラなんですよね。
スミレの性格は、一見すると「ガサツ」とひと言でまとめられそうです。しかし、世話焼きでよく気がつく性格であることが徐々に判ります。もしかして、細かいところに気が付きすぎるので、大雑把に生きないと息苦しくなるから、かも。
ヘンな人たち
毎回、「ヘンな人たち」が出てきます。マンガのキャラクタはそういうもの、と思って読んでも、「お人形さん」のような、「5 分で考えた」ような人は出てきません。
個性的といえば個性的、むしろアクが強すぎるキャラが多数出ていながら、どの話も『菫画報』の色でまとまっている──そのあたりも、『銀魂』と通ずるものがあるなぁ、と感じました。
おまけ・「おてんば」の意味
今回の記事を書くために「おてんば」という言葉の使い方を誤っていないか調べました。もう、ほとんど「死語」ですが、語源が面白かったです。