HUNTER×HUNTER #286『本体』 悲しげなキルアと危険なゴン

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HUNTER×HUNTER No.285『本体』 (週刊少年ジャンプ 2008 年 50 号)

今回の後半も見どころが多い。

──と、毎回書いている気がする。見どころしかないようにも思う。たまには「おっと、ここの描写はおかしいぜ、冨樫サンよぉぉ!」と言ってみたいものだ。ウソ。

いま思ったけど、今回のどの場面が一番好きかによって、その人が本作品に何を求めているのかが分かる。可愛らしいシャウアプフの姿か、心理戦の説明か。あるいは、今後の伏線を見つけることに力を入れたり、切ない描写に心を動かされる人もいるだろう。

自分は、主人公の危うさが好きだ。ヘタをすると、作品の世界をすべて壊しかねない。それは、作者にも言えることか……。

条件づけ

モラウがナックルに説教している場面が笑える。『銀魂』だったら「3 年 B 組 なに八先生だよ !!」とツッコミを入れるところだろう。モラウの髪の色が金色だったら「金髪先生」だ。どうでもいいけれど……。

この二人の関係は、『幽☆遊☆白書』に登場した浦飯幽助と幻海との間柄に似ている。というか、冨樫キャラで完全に師匠を尊敬しているのは、パームくらいか。ほかは、師を師と思っていないヤツばかりだ。

ひょっとして、作者自身が生意気な弟子(アシスタント)だったのか、それともそんな弟子を持ったのか──。調べてみたが、「冨樫義博は『レベル E』からアシスタントを使っていない」という有名な話(※後述)ばかりが見つかる。

その中でも面白い記事がこちら。コメント欄に圧倒される。3 年前の記事だが、つい最近までコメントが付いている……。

徒然話:冨樫義博という漫画家について – livedoor Blog(ブログ)

冨樫先生がアシスタントを雇っていない件については、いろいろなウワサを聞いている。時期は『幽☆遊☆白書』の後半から、という説が有力だ(根拠を示せ、と言われるだろうか・ドキドキ)。それに、『レベル E』の第 1 話が掲載された週刊少年ジャンプ 1995 年 42 号の作者コメントで、一人でやりたく思い、月イチになりましたと明記されている。作品同様に、この言葉すらウソが込められている──と考えるのは勝手だが、それは世間では偏屈という。

アシスタントがいるかどうか、作者が天才かどうか、作品の面白さの前にはアリに等しい。──そのアリは、キメラアント(無視できないほど強大)だったりして。けけけ。

さて、昨日から、なるべくネタバレなしの感想を書こうと努力している。そうなると、シュートの場面は どう書いたものか……。まぁ、いつもの通り以前の予想が外れていた、とだけ言っておこうか(それこそネタバレだ)。

HUNTER×HUNTER No.284『15 分』 プフの自信とピンチのモラウ : 亜細亜ノ蛾

オレの獲物

「超」(関西なら「鬼」)が付くほどの慎重派であるウェルフィンは、裏でコソコソ動いている割に、成果がなかなか現われない。一方、行き当たりばったりで楽天家に見えるヒナは、いつの間にか「棚ぼた」を手に入れている。

本当に作者は、異世界の話を描きながら日常の「あるある感」を演出するのが上手だ。──ウェルフィンみたいな上司や、ヒナのような新人 OL が、アナタの会社にいませんか?

いまさらだが、ここまで宮殿が破壊された今となっては、ウェルフィンが裏の王を目指す意味があるのだろうか。王とネテロの戦いがどう終わるか分からないが、仮に王が生き延びた場合でも、今の宮殿は捨てるだろう。ビゼフは用なしになると予想される。もちろん、ウェルフィンは そこまでの事情を知らないのだが、それでもビゼフに恩を売る機会は逃している。

自分にとって、ウェルフィンは憎めないキャラだ。今のところ、ウェルフィンが人間を殺した描写がない(と思う)のも良い。これは、ウェルフィンも仲間になるフラグ──と見るのは浅はか だろうか。

最悪心中

宮殿に突入する前後から、キルアとゴンの立ち位置が変わった──気がする。ここで言う立ち位置とは、ほかの人物との距離感だ。

初めのころは、ゴンの周りに仲間が集まってきた。キルアは、誰からも一定の距離を取っていた。それが、いまはキルアのほうが近づきやすい。──いや、そもそも、ゴンは昔から「言う事を聞かない子」だったか。キルアのほうが素直かもしれない。

改めて考えると、「単純で一途──なのに変なところで頑固すぎる」ゴンと「気まぐれで嘘つき──の割に素直で読みやすい性格」のキルアは、絶妙なコンビだ。それに、その性格の設定もスゴい。マンガの世界では極端に偏った性格のキャラクタが多い中、本作の人物は じつに生き生きとしている。

メレオロンの「空気を読む」描写も素晴らしい。そうそう、自分自身が「空気と同化」しているような人って、けっこう空気が読めるよね(それなんてオレ?)。格好いいぞ、メレオロン!

お前には関係ない

危うい主人公の真骨頂を発揮したラストだった。

この場面で最高に面白いのは、ピトーがゴンのことを語っていることだ。ゴンが具体的に動いたわけではない。

ピトーとゴンは接触した時間が短い。会話も、ほとんどゴンが一方的に要求しただけだ。それなのに、ピトーはゴンの心情を理解している。ゴンの考えは、プフからすれば理解できない。そして、読者も……。

最後のページなんか、誰が悪で誰を応援していいか、分からなくなる。その直前である、お前には関係ないのコマも、絵だけ見るとちょっと笑えてくる。しかし──そのセリフは、ゾッとした。

冷静に見れば二対一であり、実力の差も計り知れない。だが、この場にいる者と読者は、完全に飲まれている。ここにキルアがやってきたら──どうなるのだろうか。

コメント

  1. 永空 より:

    今回一番、しびれたのは、ピトーとゴンとプフのやりとりの場面で、
    次点はキルアとメレオロンのシーン。
    ここにキルアが来たらどうなるのかも気になりますが、
    それよりもここでプフが、「一度人形にした人間を元に戻すことはできないはずでは」
    なんてセリフを吐いたとしたら・・・。
    キルアの悲しげな顔もよかったですね。
    ゴンの闇の部分を見せられ、関係ないとまで言われたことによる悲しみだとずっと思ってたのですが、
    心中することになる可能性まで考えてのあの表情だったんだなと今更ながらに気づきました。
    メレオロンも無茶苦茶いいやつで、ゴンに惹かれて結果として討伐隊に入ることになったのに、
    たったこれだけのやりとりで、メレオロンはキルアのことを理解し、
    ゴンよりもキルアにより強く惹かれたんじゃないかと思いました。
    ゴンは、今回のようなことがなければ誰に対しても思いやれる人間で素直で一途で、
    そういうところに惹かれて人が集まってきていたわけですが、
    対してキルアは、ゴン自身やゴンの我侭のためなら、自分の体を張ってまでそれを成し遂げる、
    というキャラなんですよね。
    ビスケが、キルアにゴンの前から姿を消すようにいったのも、
    キルアにとってのゴンがどういう存在なのか知った上での、親心のようなものですし、
    今回のメレオロンがキルアの気持ちを察したのも、そんなキルアを理解してのことで、
    キルアが、他のキャラに惹かれる要因として
    キルアのゴンに対する想いが挙げられるのではないでしょうか。
    ウェルフェンは、姑息な感じが凄くよかったですねw
    しかし笑ってばかりもいられなくて、イカルゴにとってはさらに状況が悪くなりましたが^^;
    シュートはビスケはいなかったもののほぼ予想の通り、
    ノヴの回収されマンション内で治療を受けてる模様。
    あと、一回目読んだときは、プフがパームを発見できなかったことに疑問をもったのですが、
    もうすぐ生まれる蟻って、パームのことなのでは・・・。
    その事実をゴンが知ったとすれば・・・考えただけでも恐ろしい。

  2. asiamoth より:

    意識的に「その可能性」を考えないようにしていましたが、パームの件、あり得ますね……。うーん、ただでさえ結末が読めないのに、この上さらに問題を投げかけるのか(あの作者なら やりかねない)。
    自分には「その属性」は(少)ないのですが、キルアとゴンの関係って、男女のそれと同じように見えます。いや、それ以上か……。
    この作者のキャラクタは、みんな魅力的過ぎるのが欠点かもしれません。むやみに切れない。だから、死なないことが予想できる。そうかと思ったら、ヂー(ry

  3. 永空 より:

    確かにキルアは、最愛の恋人の負の面を見せ付けられ、
    その上で、振られること、心中することになるかもしれないことを恐れている女に
    見えなくもないですかね^^;;
    ところで話がまたとびますが、イカルゴが何らかの方法でヒナを殺して
    操り、除念を使えるようになりカイトを戻す、という流れはないんでしょうかね。
    (ただ除念するだけだと、死んでしまう?)
    あと、ピトーは必死にコムギを治療していてゴンを迎え撃つ選択を取らなかったわけですが、
    それはつまり、いくらピトーでもコムギを一度死なせると生き返らせることができない
    =カイトを生き返らせることは不可能ということのような気がしてならないんですがどうなんでしょうね・・・。
    (カイトは一度殺された上で操り人形にされてるようですし)
    ともかくこの作品は、キメラアント編に限ったとしてもパーツが多すぎて、
    何がどう転ぶがさっぱり分かりませんね^^;