HUNTER×HUNTER #284『15 分』 プフの自信とピンチのモラウ

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HUNTER×HUNTER No.284『15 分』 (週刊少年ジャンプ 2008 年 48 号)

シャウアプフとモラウの戦いが続く。

「戦い」と書いたが、殴り合いでも銃撃戦でもなく──プフは念すら使っていないように見える。プフは、初めから戦う気はないようだ。

だが、発言の上だけとはいえ、モラウの仲間たちをプフは倒す自信がある。それは意外だった。

最後のほうでは、懐かしいコンビ技が見られる。肉食ってドン! とか、「残像だ」という作品ではないだけに、どんなトリックが出るのか楽しみだ。

買いかぶっていた

前回の謎だった発言の真意をプフは語る。15 分もの間ぬけがらを前に立ち尽くす行為を、モラウは見くびられたと言い、プフは買いかぶっていたと言い返す──。

この直後のプフを見て、ゼノの「龍星群(ドラゴンダイヴ)」が思い浮かんだ。ひょっとして「この姿」はゼノの技に衝撃を受けて生み出したのでは、と思った。よく見ると、まるで違う技なのだが……。

プフのこの技(体質?)は、念能力の範囲を超えている気がする。「翼を生やす」程度ならキメラアント特有の能力といえるし、「電気で肉体を操作する」キルアの念能力も許容範囲だ。しかしプフのこれは──何なのだろう?

それと、前回までは「すり抜け」には長い時間がかかると思っていた。だが、今回の描写によると、プフは一瞬にして超細かい粒子になれる。煙の結界ですらすり抜けるプフを閉じ込めるには、「円」を応用した念能力を利用するしかないだろう。

──そう考えると、今までに登場した念能力で、プフに太刀打ちできるモノはないのでは? 意外と、サダソの「見えない左腕」で、あっさり捕まえられたりして。

HUNTER×HUNTERの能力・技 – Wikipedia

冗談はさておき。普通に考えて、この状態のプフなら体内から壊す攻撃ができるのでは。お、恐ろしい──。これが、冒頭のプフの自信なのだろうか。

それだけの事

閉じ込められた状況に困っていた、とプフは言う。モラウは矛盾を指摘するのだが──。

今回、一番よく分からなかった場面である。それだけの事はプフの口癖そのものなので、よけいに言いたいことが見えない。

──さぁ、みんなで考えようー!(チャラチャラ……♪)

ちょっと思ったのが、結界を解かない状態で何が残るかというと──サナギだ。あのサナギが抜け出せない状態では分身技が使えない、ということではないか。

──それでも、冒頭にプフが語っていたこととは一致しない。モラウが「監獄ロック(スモーキージェイル)」を解除しない状態でも、モラウの仲間を始末することができる、と言っている。

いったい、どれが「ダウト!」なんだ? それとも、プフの言うこと、すべてつじつまが合っているのか?

だまされるな !!

プフの言動を心理作戦であると判断したモラウは、惑わされることなく次の行動に移る。

だまされるな、と作中でキャラに語らせる場合、たいていは作者からのメッセージだ。──まさにいま、読者をだましている、という……。

プフが話すことを「虚」、起こったことを「実」とする。虚構にだまされず、事実だけを整理して考えよう。

じつは──プフがモラウに触れたのは、この場面しかない。このシーンだけが「実」なのではないか。

つまり、煙の結界からすり抜けたプフと、分裂するプフは、どうもフェイクくさい。しかし、それだと、以前に約 100 兆匹──と書いてある文(『HUNTER×HUNTER NO.26』 p.169-170)を疑うことになる。小説でいう「地の文」にウソを書くことは、禁じ手とされている。よって、苦しい。ただ、あのナレーションは微小な生物群とだけ語っている。プフ本人ではなく、新たに生み出した生物──と考えるのは、もっと苦しいか。

それにしても、服装や髪型・能力までもプフとモラウは似ている。ただ、ここで急にプフは二面性(というか豹変)を見せた。モラウは初登場のころから、ほとんど性格が揺らいでいない。そのような違いが見られて、面白い回だった。

誤解のないように書いておくが、冨樫キャラは話の都合に合わせて性格が変わったりはしない。たとえば、現実の世界にいる楽天家でも、落ち込むことはあるだろう。おとなしい性格の人でも、怒るときは怒る。そういった人間の多面性を、作者は『ハンター』の中で描いているのだ。仲間思いなゴンが冷たい言葉を吐いたり、冷静なキルアが八つ当たりをしても良い。

そうやって同じ人物の複数の感情を描きながら、それでも各キャラの軸がぶれていない。素晴らしい。

ようするに、「飛影はそんなこと言わない」。

にゅーあきばどっとこむ NEWS060509 「本日の用語:飛影はそんなこと言わない」

エスパー

存在を完全に消せる能力者がいる──そのことにユピーは気が付いた。丸腰のモラウを見つけたユピーは、彼がその念能力者ではないかと疑う。

モラウ、死亡フラグか──と思ってドキドキした。

そこへ、完全に「キれた」状態でやってきたナックルが格好いい。なんだかナックルは作者に愛されている気がする。分かりやすい性格──の割には面倒くさい念能力、というギャップも面白い。

ナックル・モラウの師弟コンビ技は、かつてヂートゥ戦で見せた。あの時は一発を入れるだけで十分だったが、今回はその一撃が命がけだ。

ユピーは、モラウたちの狙いを「ニセモノに紛れてナックルが攻撃する」と読んでいる。はたして、それだけだろうか? ナックルもモラウも、もう隠している大技は なさそうだが……。

おそらく、シュートを隠したのはメレオロンではないか。いまさらだけど、ナックルの能力は効果の出るまでが遅い。メレオロンの「神の共犯者(かみのきょうはんしゃ)」とシュートの「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」がベストだったかもしれない。いま、メレオロンたちは、そのコンボ技を狙っているのではないか。

まとめ

引っ越しの準備で忙しい中(昨日の記事を参照のこと)、なんとかコンパクトにまとめた。シンプル・シャープ・スパイシィという、自分が理想とする文章には遠いが……。

Vシリーズ (小説) – Wikipedia

ところで、今週号のジャンプは『ネウロ』が面白かった。人間の狂気を描かせたら、『ネウロ』の作者がトップクラスだろう。『ハンター』は『レベルE』に比べるとマイルドになった気がする。別に、狂人マンガではないので良いけど……。あと、違う意味で、『BLEACH』の登場人物はみんな狂人だと思う(狂言師と言うべきか)。

コメント

  1. 永空 より:

    >新たに生み出した生物──と考えるのは、もっと苦しいか。
    すりぬけと分裂を念の範疇で考えるなら、すり抜けは念で作った生物で、
    分裂も念で作ったものかもしくはスピチュアルメッセージを使った幻覚を見せているのか、
    ということになりますかね。
    すり抜けで念生物を外にだして討伐隊を叩くことは可能でも、
    やはり自身が外にでて戦う方が楽で確実だからスモーキージュエイルを解除してもらった方が、
    ありがたかった、ということかなと。
    にしても、プフはどこに向かい誰に会うのか気になりますね。
    ピトーとゴンのところまで行くとしたら面白いなと思いますがそれはないですかね・・・。
    ピトーはゴンに懇願して待ってもらっている立場上、プフがゴンと戦うのを阻止しようとし、
    そうなるとプフとピトーの関係やピトーに対するゴンの心情に変化が起きるんじゃないかと思ったので。
    モラウ(「モウラ」ではない)とナックルがユピーに対峙するというのも面白い展開でしたね。
    ナックル自身はユピーに逃げ切る力があるし8発殴ってプライドも満たせていたので
    ユピーと戦う必要はまったくないわけですが、
    一方、モラウはユピーと一人で戦うことも逃げ切ることも難しい。
    そこにシュートをユピーに隠された(殺された)と勘違いして怒り狂うナックル登場とw
    (8発殴って逃げたナックルに先回りしてユピーがシュートを隠すなんて事は不可能なわけですがw)
    まぁそれでもユピーに勝つのは難しいでしょうから、
    メレオロンと組んだ誰かが援護射撃してくれるだろうなというのは私も思いました。
    でも、ナックルがほんの数分で死ぬと判断したシュートが戦えるのか、
    メレオロンが戦わそうとするのか、は疑問です。
    (ただ、シュートの強い意思に逆らえずにメレオロンが一緒に戦うことを決めるといった場合や、
    ノヴがビスケを連れてきてマンション内で治療後、戦わせるとかならありえますかね)
    とはいえ、あそこで消えたキルアが再び充電してユピーと戦うというのも流れ的にないような気がしますし、う~ん。
    ここでノヴがマンションからいきなり現れて参戦とかも・・・ないですかね。
    もしそうならユピーはノブこそが消えることのできる能力者と勘違いしてくれるかなとか思ったのですが。

  2. asiamoth より:

    おっと! 指摘されるまで、ずっと「モウラ」と思っていましたよ。「もうもうとした煙」のイメージで。恥ずかしい……。こっそりと直しておきました。ありがとうございます!
    おお、ここでビスケの登場は熱いかも(もちろん有料だけど)。シュートが消えたまま──または、ひっそりと現世からリタイヤ、という展開はやめて欲しいですよね。
    思ったんですが、当初は一番ありえなかった「王側もゴン側も全員生還して終了」という道も、今ならありそうな気がします(コルトの例もあるし)。『幽白』とは違う形でそれを実現できたら、作者は神だなー(今でも神)。
    ──それで、平和的な解決が見えてきたところで、ジャイロが出てきてぶち壊し♪(ここ、「どんぐりころころ」のリズムで脳内再生)、とか。

  3. 永空 より:

    >王側もゴン側も全員生還して終了
    ピトーに関していえば、コムギとカイト治療後も
    少なくともゴンに対しては積極的に戦うことはできないような気はします。
    極悪非道だったピトーですが、王のためにコムギを助けることを
    許されたということはピトーにとって決して軽いことではないと思うので。
    でもまぁ、そのピトーをゴンがどうするかは分からないですが^^;
    ただ、ここで一命をとりとめたコムギが現状を把握したなら王と討伐隊との戦いを止めたいと願うでしょうから、
    それによって、和解というのもありえる・・・んでしょうかね?
    その場合ピトーはおとなしく言うことを聞きそうですが、プフは酷くショックを受けるでしょうし、
    戦闘の楽しさを知ったユピーもおとなしく言うことを聞くかどうかは分からないですよね・・・。