HUNTER×HUNTER No.295 『決意』 (週刊少年ジャンプ 2010 年 10 号)
今週号の『H×H』は、センターカラーから始まりました。
前回のパームを見て、好感度うなぎ上りな読者が 8 割以上です(asiamoth 脳内調査)。──それなのに、今回の表紙を見ると「ラスボスは──パーム!」みたいな感じ。あるいは、『レベルE』のバk──王子のように見えました。
たしかに、パームは異形の者となってしまいましたが、なぜここにきて、こんなにもオドロオドロしく描くのでしょうか。もしかして、前回で見せた「めでたしめでたし」な展開から、まだ二転三転させるつもりなのでは……。
本当に、この作者だけは、油断できません。
まず言って おきましょう
いきなり、衝撃的なシャウアプフの告白から始まりましたね。
ゴンの近くにいるプフが分身であることは、一番言ってはならないことであるはず。それが、なぜこのタイミングで言うのか……?
──と驚かされたのは、作者の策略どおりにハマった証拠ですね。いつものことながら、コロコロとだまされていまいました。チクショーーー!
なるほど、ナックルがこの場に来てしまった以上は、分身のことを早々に話しておいたほうが良いわけです。考えてみると、ごく普通の展開だったという。長年の読者であるのに気がつかず、くやしいです(満面の笑みで)。
それにしても、王以外──モントゥトゥユピーやシャウアプフでさえ、自分の意のままに動かなければ、プフにとっては排除すべき敵になるという……。ここまでの危険な思考を、いつからプフは持つようになったのでしょうかね。──もしかすると、生まれた直後から?
嘘つけ
「蝿の王(ベルゼブブ)」の能力を使って、プフの本体が王の元へ向かったことを、読者は知っている。ゴンは知らない。とはいえ、この状況で、ここにいるプフが本体か分身かを疑うことには、どんな意味があるのでしょうか?
ゴンの視点から見ると、先ほどからプフはこの場を離れたがっている。おそらく、鱗粉でゴンたちを操ろうとしているのではないか──とゴンは考えているのでしょう。プフの言葉からすると、本体しか鱗粉の能力が使えない、という可能性がある。ならば、ここから動かさないほうがいいワケです。
ゴンの「思考の瞬発力」は相変わらずスゴい。ネフェルピトーに対するゴンの怒りはまだ燃え続けているが、頭のシンは冷えている。
それよりなにより、プフの言うことはいっさい信じない、とゴンは決めたのかもしれません。
こいつ 厄介だ
プフが見たとおり、ゆるがぬ意思
を一番持っているのは、ゴンでしょうね。そういえば、これまでの戦いで、ほかの討伐隊メンバは、少なからず戦う意思がゆらいでいる。いや、ピトーやユピー・王ですら、戦う意味を考え始めたり、ニンゲンたちに対する意識が変わったりしています。
ゴンとプフは、能力の相性から性格から、何から何まで合わなさそう。この戦いの最後まで、この 2 人の考えが交わることはないでしょうね。ネテロと王、ユピーとモラウ、ゴンとピトーが和解することはあり得ても、ゴンとプフとは絶対に許し合わないと思う。
10 分…
ピトーはゴンを 畏れた
。しかし、冷静に考えてみれば、ピトーがゴンを倒すことは簡単なはず。
いままでの描写(対カイト・対ネテロ)を見る限りでは、現在の状況(コムギを治療中・片腕負傷)でも、ピトーならゴンのノドを裂くくらいはできそうです。なぜ、そうしないのか?
もちろん、ピトーがゴンを襲わない理由は、コムギの治療を成功させるためです。万が一にも失敗できない。仮にゴンを倒せても、かわりにコムギを道連れにされては困る。今の 2 人は、ギリギリのバランスで成り立っているんですね。
ただ──コムギを 8-9 割くらい治せれば、「玩具修理者(ドクターブライス)」でコムギを安全な場所に隔離(上空に持ち上げるなど)しておいて、ピトーがゴンを倒すことはできそう。あるいは、瞬時に能力を解除してから「黒子無想(テレプシコーラ)」を発動させる、とか。
ところが、ピトーは命懸けに なる
と思っています。ゴンよりも格上であるはずのハンター(カイト)を倒したピトーが、そこまでゴンをコワがっている。それは、ゴンの意思の強さだけを見ているのか、それとも、ゴンの戦闘能力が護衛隊と同等になったのか……。
ゴンは、突入の前後でまったく戦っていないんですよね。突入の直前、モラウに見せたゴンの「発」はすさまじく、ひょっとしたら無防備のモラウなら殺していたかもしれない。しかし、それが戦闘時にどこまで有効かは、まだ分かりません。──けっこうゴンって、ハッタリ屋さんだからなぁ……。
オレ一人で 大丈夫
ゴンがナックルに、南だよ 王は
と言う場面は面白い。ピトーと同じく、ピトーとプフとの会話からゴンは判断したのだ、と自分も思ってしまいました。
ゼノの飛ばした龍に乗って、王とネテロが「南の方角へ」向かったのは、作中の時間ではわずか数十分前のことです。ところが、ワレワレのいる現実世界では、もう何千万年も昔に読んだデキゴトですからね( 『HUNTER×HUNTER (NO.26)』に掲載)。ほぼイキかけました──ではなく、ほぼ忘れかけていました。
なんと しても…
意外なことに、この段階でようやくピトーはゴンを殺さねば ならない
と決意しています。いままでは、ゴンと戦うことは意識していても、命まで奪う気はなかったのでしょうか。
──いや、そもそもピトーの(まだ短い)人生の中で、本気で他者を殺そうと思ったのは、これが初めてでしょうね。カイトを含めて、ほかのハンターたちと戦うときも、「猫がじゃれる」程度の遊びだったのかも。
ピトーのなかで持ち上がってきた問題は、コムギの治療を終えたあとで、まず治した彼女を 誰に任せる
のか。もうコムギの治療を始めてから、リアルタイムで何十年も過ぎていますが、イマゴロ気がついてしまった。たしかに、誰がコムギを見守るのか?
ただたんにコムギを一般人として保護するだけなら、ナックルでもメレオロンでもいい。しかし、ピトーがそれを許すはずがないのです。王にとって大事なニンゲンを、「敵」に渡すなんて、考えていないでしょう。これは大きな問題です。本当に信頼できる部下がいないという、護衛隊の弱点ですね。
泣いてる 場合か !!
久しぶりに登場のタコ(「タコってゆうなー!」)です。
そうそう、イカルゴと言えば、「『HUNTER×HUNTER (NO.27)』はタコの巻だよな」という書き込みをどこかで見て、面白かった。みなさんも、27 巻を読み直してみてください。──じつは、イカルゴは 2 話分しか出ていないんですよ!
なんという、「時間の圧縮」でしょうか! 1 ページ 1 ページに詰まっている情報量が、ものすごく多いのです。どこぞの、キャラクタのミリョクと演出ばかりで内容がスカスカなマンガとは、大きな違い……だと…… !?(どのマンガかバレバレ)
この場面での疑問は、ウェルフィンの「卵男(ミサイルマン)」が発動したように見えないことです。彼の能力を、おさらいしてみましょう。
- 「対象者(ねらい)」を定め
- 「質問・命令(タマ)」を込め 偽った者・逆らった者が いた場合
- 攻撃が開始される
『HUNTER×HUNTER (NO.26)』 p.123
ウェルフィンが出した、動くな
とおかしな 素振りを 見せれば 殺す !!
という「タマ」にイカルゴは従っていない。振り向く前にミサイルが発射されないと、オカシイのです。
「裏の王」を目指すウェルフィンからすれば、イカルゴからできるだけ情報を聞き出したい。だから、攻撃は極力さけたいところです。イカルゴが動き出した時点で、卵男を解除したのかもしれませんね。
それとも、読者には見えないだけでミサイルは撃たれていて、本当に相討ち
になるのでしょうか……(どうしても、「たこ焼き」って言葉が頭に浮かぶ)。