HUNTER×HUNTER 8 巻 「オークション開催 !!」 1 – ホームとホームズ

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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.8 「オークション開催 !!」

It's Murder, Watson!
執事を撃った犯人は──という場合でもない

おまけページでは、奥さま(マンガ家・武内直子さん)と新婚旅行へ行った時の様子が書かれていました。エッセイ集として 1 冊書けそうなネタが満載です!

このエジプト旅行の話は、本編では あまり生かされていない──と思いきや、つい最近の週刊連載で似たような場面が出てきました。すぐに作品で出さない所が冨樫先生らしい。

作品で持論を語りたがる作家とは大違いですね!

No.064 「帰郷」

久しぶりにゴンの自宅が登場しました。ゴンは黒髪なので日本人のような印象を受けるけれど、家は思いっきり西洋風です。キッチン・ドランカなミトさんが飲んでいたお酒も、日本酒や焼酎ではなく洋酒だった。

ひさびさの我が家で くつろぐでもなく、ゴンは「何か 手伝おうか」とミトに声を掛ける。本当に いい子なんだよなぁ。でも意地っ張りな部分も強い(強すぎる)。その芯の強さは、ミトゆずりですね。

マンガの世界ではタブーな話ですが、ゴンの衣装は一着だけなのかな。そして いつも背負っているカバンの中には、いったい何が入っているのだろう? キルアのカバンには、お菓子がギッチリだと見た!


地味な場面こそ作者の力量が問われます。森の場面は味わい深かった! なにげない会話で読者の心を導くことは、冨樫先生の得意技です。

魚を見たキルアは、「おかえり」の あいさつだと受け取っている。最初は意味が分からなくて、魚が「私を食べて(はぁと)」と陸に上がったのか──と勘違いしました。言うまでもなく、キツネグマのコンが取ったのでしょう。

「やりたいことが見つからない」というキルアは、ゴンをうらやましがっている。しかし、十代の前半なんて それで当然でしょう。

大学の 4 年間を過ごしてすら、「世間の常識」によって自分の人生をボンヤリと考える人が大半です。「何をして食っていくか・どこへ就職するか」を決めることが、いつの間にか「自分が本当に やりたいこと」よりも優先順位が上に来る。

ハンターの世界でも普通の企業は存在するはずですが、ハンターになれるだけで暮らしには困らない。現実世界のプロフェッショナルとは違いますね。現実ではそこまで優遇されている例は すくない。


ゴンが大人びて見える理由は、同じような年齢の友だちがいなかったからでした。島にいる大人たちは日々の生活に追われているだろうから、ゴンと遊んでいる暇はない。ゴンも、家事や漁の手伝いで一日が終わっていたでしょう。

そう言えば、ミトも おばあちゃんも家事しかしていないけれど、ちゃんとした収入は あるのだろうか? おそらく、ジンが仕送りを送っているのでしょうね。

バスケットに夜食を詰めて森まで来ていたミトのことを、キルアとゴンなら気配に気がついているはずです。2 人とも優しいから、気がつかないフリをしているのかな。

ゴンもキルアも、お互いに初めてが最高の友だちで良かった! 自分の初めての友だちって、誰だったかな……。

No.065 「ジンについて」

すこし髪型が違うだけで、昔のジンはゴンにソックリです。そしてゴンが持っている釣り竿は、やはりジンの持ち物だった。ゴンの育ての親であるミトは、複雑な心境だっただろうなぁ……。

ゴンもキルアも、「父親が強いから、強い」と言える。「ジャンプ」マンガの主人公たちは、ほぼ例外なく「親の七光りキャラ」です。なにか決まりでもあるのでしょうかね?

ジャンプキャラは親の七光り | 亜細亜ノ蛾

ところが、ジンには当てはまらない。どうやらジンの父親は、ごく普通の人だったようです。そしてジンもミトも、おばあちゃんから血がつながっている。──じつはこう見えて、ネテロ会長なみに強かったりして。

おばあちゃん
「ネテロ? その名を聞くと昔の血が騒ぐねぇ……(ズズズ……」
ミト
「おばあちゃん!?」

ミトはジンのことを嫌っているのかと思っていたけれど、それはゴンのために怒っているからでした。「父親としてのジン」には腹が立っている。

昔のジンを思い出したミトは、なんだか「女の顔」をしています(ドキドキ)。ただ、おそらくジンに対するミトの気持ちは恋心ではなく、実の兄のように思っていたのでしょうね。

ジンの話が聞けた上に、ミトがジンのことを嫌いじゃないと分かったからか、ゴンは楽しそうです。うれしそうなミトの顔を見て、自分も喜んでいる感じがゴンらしい。

そして、キルアとミトとの会話は一度も なかった


ジンが島にいた 10 年前も現在も、くじら島には ずっと子どもがすくない。ゴンよりも年下の子・ノウコが 1 人いるくらいです(アイドルでもありマンガ家でもある中川翔子さんの作品・『脳子の恋』とは──関係ないのだろうな)。

そこそこ栄えていそうな島だけれど、若い男女は少数で、みんな出て行ってしまうのでしょう。このままでは島民はジジ・ババばかりになる。

──これはミトさんに がんばってもらうしかない……! くじら島は、ネット環境や電気は整備されているようだし、自分がマンガの中へダイブしたいです! がんばるぞー!(?)


念と似た力を持った模様」は、マンガで よくある「便利な設定」として出したのだと思う。

しかし、遠い未来の展開を見ると、この「異世界から来たような模様」も特別な意味を持っている──ように思えてきます。冨樫義博先生は、この「意味ありげに見せる技術」が ずば抜けている!

No.066 「テープ」

お前 オレに 会いたいか」なんて、父親が息子にする質問としては ふさわしくない。しかし、なんだかジンの気持ちも分かります。なぜかと言うと──。

自分が幼いころ、父親が酔うと暴力を振るうため両親は別れました。高校生のころに一度だけ再会した父親は、自分の子どもと再会できてうれしい──というよりも、「もうしわけない感じ」が強かったですね。

どんな理由にせよ、子どもと離れてしまった親は、なかなか子どもの前に顔を出しにくい。

ただしジンの場合は、「捕まえて みろよ」なんて言ってゴンのハンター魂を燃やしているから、単純に「身勝手な親」では ありませんね。同じ 1 人の男として息子と向かい合っている。


現在のジンはヒゲ面をしていて、いかにも冒険者といった感じに見えます。そう、『HUNTER×HUNTER』は、最近の「ジャンプ」では意外と珍しくなってきた「ファンタジィの冒険もの」なんですよね。

この部門には、ほかに『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』という強大すぎるカベがあるから、なかなか新人には描きにくいのかもしれません。日常に異世界を持ち込む「学園バトルもの」のほうが、説明を省略しても受け入れやすいから、今後も増えてくると思う。


10 年以上も前に仕込まれた念は、念能力者から離れた場所でテープ周辺の動きを制御している。たぶん「放出系」と「操作系」両方の念能力でしょう。これがジンの能力なのか?

ここまで手の込んだことをしなくても、単純に「止めたら燃える」で良かったですね。そもそも再生専用機だったら どうなったんだろう。

ジョイ ステーションという冨樫先生お得意の架空ゲーム機が出てきた所で、いったんゴンたちの物語は休止です。そして再開する直前の p.96 に「カードゲームには興味がある」なんて書いてある。じらしが上手だなー。

No.067 「人体収集家の館 1」

ようやく本編にクラピカが再登場しました! この独特な衣服は、クルタ族の民族衣装なのかもしれません。そしてヒモがないカンフー・シューズは、作者の お気に入りですね。

依頼を受けるために集まった全員が、一癖も二癖も百八癖も ありそうな面構えをしている。キレイに整った顔をしたクラピカのほうが、逆に この面々では浮いています。じつは 一番の「やっかいさん」が彼だけれど……。

とんでもなく広大な庭を持った屋敷は、今回の話を読む限りでは、「新入り試験のために作った施設」のようです。想像を絶する富と権力を持った人間の持ち物なのでしょう。


クルタ族の眼球」を依頼主は希望している。それを知ったクラピカの心境を想像すると──おそろしくも悲しい。

依頼主からしたら欲しい「オモチャ」の 1 つでしかない物に、クラピカは全人生を賭けている。そして、今後は その依頼主から使われるのです。

理路整然と頭の中で予定を組み立てているクラピカは、本当はハラワタが煮えくりかえっているでしょうね。それで使命のために自分を捨てている。

たとえば、もっと規模が大きい金持ち──ゾルディック家に反吐の出る欲望を比べ合う下衆共がいたら、クラピカは どうするだろうか……。

No.068 「人体収集家の館 2」

自分が書く『H×H』の感想は、当時の黒歴史を告白する場でもある。

ということで──、クラピカの「鎖付きの指輪」をマネしていました! 連載時に好きだった女の子から もらった誕生日プレゼントが、よりによってクラピカの指輪と同じように鎖をつなげられる形だったのです。

そのへんで鎖を買ってきて、毎日のように手首をジャラジャラと鳴らしていました……。まぁギリギリ「オシャレ」で通るかな? あと、その女の子には 1 か月の内に 4 回告白して 4 回フられました。

クラピカの鎖は、今回の話では「導く薬指の鎖」(ダウジングチェーン)しか出てきません。これ 1 本でも かなり使い勝手が良い能力ですね! 鎖で弾丸を止めるなんて使い方は、今回限りでしたけれど。


念で作られた人形の謎解きをするクラピカは、まるで探偵役みたいです。「クラピカ探偵が学園に起こった怪奇事件を解決する話」なんて おもしろそう!(それ、『幽☆遊☆白書』で やったよ)

シャッチモーノ・トチーノは、わざと「君達 4 人」という言葉で「潜入者」の存在を明かしたのでしょう。モミアゲの男は いち早く気がついている。おそらく ほかの参加者も同じなのでは?

それなのに われらがクラピカ探偵は、芝居がかったセリフで「解決編」を演じています。シャーロック・ホームズ的な彼のために、音楽家のような「彼女」がワトソンを買って出る。真面目な場面だけに笑えてきます。

みんな酔うとるんちゃうんか!


いかにも「二丁目」に いそうなモミアゲこと芭蕉(バショウ)の「流離の大俳人」(グレイトハイカー)は、最強の念能力ではないか──と一時期「ネットで話題」になりました。

なにしろ、質問しただけで相手を丸焼きにできるからですね。そこまで強制力を持った念能力は、たしかに今後も めったに出てこない。

ただし、この場の全員がバショウの言葉に飲まれているだけで、実際は「殴った物を燃やす」ことしかできない可能性も あります。たとえハッタリでも効果的だ。

ところで、バショウのセリフは ほとんど五七五調です。例外も多いから、連載時には気がつかなかった。

ぜひともクラピカに向けて「オレ様の 目を見た者は 恋をする」と一句詠んで欲しいものですね! そして、ちょうど そこへヴェーゼが通りかかるという『To LOVEる』展開になる。

クラピカ
「そうか…… 2 人は そんな仲だったのか(プイッ」
バショウ
「ち 違う! 誤解だーーー!」

(オレ、なに書いてんだろう……)


犬使い・スクワラ(←役得)に口づけしたヴェーゼの「180 分の恋奴隷」(インスタントラヴァー)も、ある意味では最強の念能力と言える。意外と「人間を操作する念能力」は貴重です。どうやって修行したんだろう……。

しかし、実戦で相手にキスできるくらいなら、すでに勝ったも同然です。あまり実践的ではありませんね。

でも、あのマンガでも そのマンガでも、お互い戦闘状態に入っているのに、平気で相手の後ろ側に回り込んでいるからなぁ……。そして背中から切りつけても避けるし。そんなことが可能かどうか、実際に作者が試してみると良いと思う。

架空の世界にこそ現実味が大事です!