バクマン。 #79-1 「わがままとアドバイス」 担当と 2 人の才能

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『バクマン。』 79 ページ 「わがままとアドバイス」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 17 号)

Positive painting (by mdezemery) (by mdezemery)

『走れ! 大発タント』の連載を始める前あたりから、サイコーとシュージンはダレていました。正直なところ、ちょっと 2 人のことをキライになっていたかも。

──まぁ、このマンガの主人公は服部哲なので、いいですケド(え?)。

それが、今回の亜城木夢叶はよかった! 今度こそ後がない、というところまで来て、2 人ともようやく復活した、という感じ。このコンビは、切羽詰まってからようやく燃えます。

亜城木夢叶の物語は、やっと始まったばかり──なのかもしれません。

何言ってんだ

サイコーは、新妻エイジに勝つためならばどんなことでも──たとえジャンプとの契約を切ってでも、次の作品を描く覚悟があった。しかし、シュージンはジャンプ誌上で戦いたい。

──この二人の意識のズレが、またコンビ解消のきっかけになるのでは、とドキドキしました。それ以前に、この場所が「普通の会社」で、亜城木夢叶が「普通の社員」だったら、現時点で「クビ」ですよね。まさか、編集長の独断で契約を切られるのでは、とも思ったり。

この場面では、シュージンが新妻エイジや秋名愛子に 勝ちたい、と言ったところがよかった。彼が「誰かに勝ちたい」と思ったことは、かなり久しぶりです。ああ、シュージンが帰ってきたのだな、とひと安心。

「タント」 じゃ 勝てない

佐々木編集長からすると(聞き耳を立てていない限りは)、「なぜ急に亜城木が連載をやめたがっているのか」が分からない。サイコーの発言を聞いてようやく真意がつかめた、という感じでしょう。

説明の順番としては逆ではないか──と思ったのですが、こう言うよりマシですね。

サイコー:
「てゅーっす www ウチら、マジにーづまに勝ちたいんでェ、連載やめていいスか wwwww」
佐々木:
「まじスか w パねェなソレ www どーぞどーぞ wwwww」

そういえば、亜城木夢叶と新妻エイジとの関係を、編集長はくわしく知らないハズ。ということは、「人気作家にテレビでライバル発言されたくらいで、なに舞い上がってんの?」と思っているのではないでしょうか。

自分で言います

勝てると 思っているんじゃ なく 勝ちたいと 思ってるんです、とサイコーは言う。このセリフは、亜城木の 2 人が初めて参加したジャンプの新年会で、マシリト──鳥嶋取締役(早口言葉)から聞いた言葉に似ています。いつか、鳥嶋に対しても「勝ちました」と勝利宣言をしたいものです。

雄二郎が無責任に声援を贈り、服部が焦っている。なるほど、こういう場面でヘタに外野が騒ぐと、編集長の心証を害する可能性もあります。さすがは「人心掌握の術」の使い手である(?)、服部らしい反応の早さです。

担当は 港浦だ!

雄二郎によると、今回の亜城木のように、自分から作品を終わらせたいと言ってきた作家は、ほかにいないそうです。平丸のアレは、本気ではないですからね……。

──でも……、あれ? 『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』は、作者の方から「終わらせて欲しい」と申し出た、のではなかったかな? 『バクマン。』の世界ではそうなっていないか、アフロが知らないだけですかね。

ここから先は、編集長の発言の一つ一つが重要になってきます。

まず、佐々木編集長は、雄二郎の言い分を聞いて判断するのではなく、担当の編集者である港浦の見解を聞こうとしている。なんとなく、「編集長のドクダンとヘンケンで、ある程度は作品の行く末を決定できる」というイメージがありましたが、違うんですね。あくまでも、担当の意見を聞く。

ところが、この場におよんで、まだ港浦は煮え切らないことを言う。まぁ、ほんのすこし前までは、『タント』を終わらせないことだけを港浦は考えていたので、仕方はないけれど。港浦からすると、「亜城木夢叶は新妻エイジを抜こうと考えている」なんて、本気にしていなかったのでしょう。

亜城木夢叶は ギャグじゃない

エイジにとうてい 勝てるとは 思えないが、とシュージンに向かって佐々木編集長は言う。この場面は、ビックリしました。面と向かって、そこまで言うか……。

ただ……、たしかに、いままでの亜城木夢叶は、エイジほどの結果を残していない。だから、本当に佐々木からすると、「なぜ、この若者 2 人組は、ここまでの自信を持っているのか」が分からないのでしょう。

ところがところが、ここに来て、瓶子副編集長が亜城木の肩を持つんですよ! 普段がボケボケしているだけに、ちょっとこの場面にはシビレタ。瓶子も、『タント』ではなく、『この世は金と知恵』や『疑探偵 TRAP』を見て、亜城木夢叶を評価しているのでしょうね。よく言った、瓶子!(何様?)