HUNTER×HUNTER #309 「勝負」 散布されるのは──ゆがんだ忠心

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HUNTER×HUNTER No.309 「勝負」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 25 号)

A Natural Mosaic (by drurydrama (Len Radin))
(鱗粉の中に狂信を隠した蝶もいると聞く──)

今までに、メルエムに勝負を挑んで(ムリヤリ挑まされて)生き残っているのは、軍儀(ぐんぎ)では無敗のコムギだけです。それ以外は、すべてこの世から去っている。

この唯一無二の王に限っては、「ふっ 今回の所は見逃してやる」などと(カビ臭い)セリフとともに情けを掛けたり、

お互いに胸のド真ん中を刀で貫き合う──けど無事!

という超・高難度な「峰打ち」をやってのけたりするような、「崇高ナル大殺戮」ではないのです!(オレもしつこいな……)

止めねば…… !!

いつもながら、シャウアプフは次から次へとよく策を思いつきます。王が勝負好きであることを利用して、ウマく足止めができたようですね。

王に対して「勝負」と言うことは、命を懸けた「死合い」をするということになる──。

──と思って読んでいたので、「プフ──、死ぬ気か!」などと早とちりしました。どうも、本当に「余興」として提案しただけの、時間稼ぎなんですね。プフには死ぬ気など、ハナからない。

能力者を 探し出す

プフの目的は、明らかに、コムギを始末するために王を足止めすることです。そのため、プフが残りの人民に 催眠をかける までの時間を使って、コムギを見つけ出す計画なのでしょう。

それに、この時点では、プフにとって勝負の勝ち負けはどうでもよかったはず。コムギを仕留めたあとで、催眠の作業が終わった──と王へ報告するだけです。モントゥトゥユピーにも、コムギを探させるつもりだったのかも。

自分にとって不利な条件である、ネフェルピトーの居場所が分からないという点を強調する、といったプフの話術も絶妙です。

──でも、この場面に「いまのピトーの姿」をかぶせてくるのは、ちょっとキツい演出ですね……。

あと、このコマだけを見ると、現在いる場所も 不明ですと言いながら、

プフの分身がピトーを見ているのでは──、

とも思えます。ちょうど、宙に浮いた視点から見ていますよね。──あ、ひょっとして……。

いや、この時のプフがあまりにも冷静すぎるし、あとの展開から見て、プフはピトーの状態を知らないはずです。もしも本当に、プフがピトーを見ながら王にこんな態度を取っているならば──、

“L”:
プフの精神は既に 神の域に達している
(『DEATH NOTE (3)』のネタ)
あと一回だけ!

王に“円”の使用を制限させるとは──、さすがプフは切れ者ですね。

メルエムが普通の暴君(というのもヘンだけど)であれば、自分が不利になるような条件は認めない。ところがこの王は、戦い方が限定されているほうが喜ぶ。そこを上手にくすぐったワケです。

すでに「賊」たちが逃げたと思われる現在、“円”が一度しか使えないのであれば、使い所を考える必要がある。

予想される「賊」の隠れ場所──彼らの狙い──“円”の届く範囲──すべてを瞬時に計算して、キメラアントの王は面白い、と言った。これもスゴイ。

さらに、プフとユピーへ勝利の褒美をちらつかせながら──隠し事を暴くというプレッシャも、メルエムは考えていた。

このやり取りは、負けたら 左腕を もらう、とコムギに掛けを持ちかけたシーンを思い出します。相手の呼吸を乱すための、王が好きな戦術なのでしょうね。

異体同心 !!

横暴を絵に描いたような以前の王であれば、プフたちの後ろ暗い感情に気付いたら、その瞬間に問いただしたはずです。キチンと答えられなければ──首が飛んでいた。

それが今では、あえて見逃すという道を、メルエムは示している。

絶対の王らしい寛大な処置──に見えますよね。でも、メルエムからすれば、「ただの余興」をより楽しむために、護衛隊たちの本気を引き出すために、このような提案をしただけかもしれません。

気まぐれなようでいて態度に揺らぎがなく、遊び好きなようでいて何事にも本気を出す──。なかなか、メルエムの本心を知ることはムズカシイ。

命をかけて 誓いまする

本心の隠し方で言えば、プフも負けていません。

一見すると、王の心の大きさと勝負への本気さを感じ取って、プフも正々堂々と戦うことに決めた──ように見えます。でも、そんなことがあるはずは──ない。

鱗粉をまいている間は分身が使えない点は、プフには痛すぎる。この条件自体に間違いやウソがなければ、プフの時間稼ぎが無意味になります。

──さて、プフはどうするのか?

まず、プフとユピーには、勝利条件を満たすことがほぼ不可能です。──ペイジンまで行って、「ピトーを連れてくる」なら別ですが……(まぁ、もしもそうなった場合は、勝負自体が無効になるかも)。

そのため、勝負とは関係なく、プフはコムギの件を片付けることを優先するべきです。

ただ、標的の探索と散布とを同時にはできないハズ。そこをプフがどう切り抜けるのかが見ものです。

考えられるプフの作戦としては──、鱗粉で人間を操りコムギたちを探させる、というのはどうでしょう。そんなに都合よく催眠がかかるような描写は、今のところありませんが……。

次に考えたのは、単純に戻ってくる時間を遅らせて、その間にコムギを探すことです。

プフは、時間稼ぎなど 一切せず全力で 鱗粉を撒くことは誓いましたが──、すみやかに戻ってくるとは言っていない。ギリギリ王にウソをつかずに、自分の仕事をこなせる。

何てこと…… !!

王たちの遊びなど、パームには知る手段がない。

考えられないほどの強大なオーラを感じたことは、パームにとって(読者が知る限りでは)二度目です。一度目の時には自害を考えた(だけではなく実行した)のに、今回は耐えましたね。いまのパームの任務は「死ぬこと」ではないからです。

“淋しい深海魚(ウィンクブルー)”によって、ゴンとキルアの様子が見られましたが──、ゴンの生死や状況は分かりません。大きさは、元に戻っているように見えます。

──ゴンの年齢は、念能力の有無は、どうなっているのか……。

(まったく問題なく、腹一杯のメシを食っただけで「元に戻った!!!!」りしたら、それはそれでイヤだけど)

上の予想からすると、プフはパームから離れすぎている。「賊」ならば散布中も逃げ続けるハズだし、プフが探し始めるころには、手遅れになる可能性が高い。またまた予想は外れそうですね。

入るぞ 急げ !!

その「予想の外れの予想」を裏付けるかのように、イカルゴとパームは地下へ逃げました。──それくらいは誰でも考えつくだろうし、これ、どうやってプフは見つけるつもりなんだろう……。

タコがトラックを運転する、という異常な場面でも、二人はいたってマジメな表情です。これこそ、「シリアスな笑い」ですね。──そういえば、ペダルはどうなってるの?

この場面は、イカルゴの推理が面白い!

イカルゴたち討伐隊からすると、王たちが(というかプフが)コムギを狙っている理由は知りません。だから、人質交換という考えが出てくるわけです。まさか、ピトーが全力で治療した娘を、その仲間が殺しに来るとは、予想もできない。

つまり、イカルゴの考えは、本来であればズレているワケです。

しかし、じつは「コムギという存在・情報」こそが、本当に「プフとの交渉」には使える。

メッセン ジャー?

そして──、ウェルフィンがコムギの居場所を話すのは、プフかユピーか──あるいは王か。なんだかドキドキする展開です。

イカルゴの出した条件は、地下倉庫の奥に 娘が匿われている、と王へ伝えることでした。ここが絶妙で、「娘」としか王に伝わらないのかも。そこをプフが何とかごまかす、といった展開が見えてきます。

ジャイロに 会いに行けよ

「ザイカハル」──それが「ウェルフィン」になる前の、彼の名前だった。

ザイカハルの記憶を思い出せたのに、イカルゴ自身は、昔の名前を思い出せない──。なんだか、切ない話です。それでも、仲間のことを忘れなかったのは、良かったですね。

いつか、ウェルフィン──ザイカハルが、仲間の名前を教える日が来るのでしょうか。

そして、プフがどんな策略を考えようとしても、「勝負」をした相手のことを──コムギのことを、王は自分で思い出すのかもしれません。

ネテロ:
「おーい! 誰か忘れとりゃせんか?」

コメント

  1. ゴンザレス より:

    イカルゴが、自分が誰だったか思い出したとき、
    人類に悪意をばら撒くジャイロと、
    おそらくそれを阻止せんとするであろうゴンたちと、
    どちらにつくのでしょうか。

  2. asiamoth より:

    イカルゴは、名前を思い出せないだけだと思います。仲間のことや、自分が何を信じているのかは覚えていそう。
    キルアに会って、今の自分の生き方を決めたイカルゴが、ジャイロ側につくことはない──と信じたいです。