HUNTER×HUNTER 22 巻 「8-1」 1 – 木星と太陽が天を変える

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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.22 「8-1」

Chandra, Hubble, and New Horizon View Jupiter (NASA, 3/1/07)
虫にも人にも──巨大すぎる

第 22 巻の前半は、意外な登場人物たちが再登場して盛り上がりました! あらためて彼らの魅力を描くことで、物語に深みが出ています。

前半だけで終わらせたことも効果的でした。ダラダラと長引かせるよりもスパイスが効いています。また出ていて欲しいですね!

そして、いよいよオマケのページが なくなり、作者の余裕のなさが分かります。あきらかに背景やモブまで冨樫義博先生が描いているからでしょう。正直なところ、前巻のモブは悪い意味で妙に目立ったからなぁ……。

No.224 「10-2」

今回の話は とくに、状況の説明から始まって、ワクワクさせる登場人物の見せ方、ラスボスの存在感、今後の展開への期待──と すべてがパーフェクトでした! マンガの お手本として教科書に載せるべきです。

井上和香さん率 98% なニュース・キャスタと、キメラアントの付き人も良かった!


ネバスカの獅子男」ことハギャがインタビュアにしたことは、これまでの彼の行動からは驚くべきことでは ありません。

しかし、「巨大なエビ」が人を襲った事実は、遠い未来では問題になりそうな気がします。NGL の村にはテレビが なくて良かった。


久しぶりに幻影旅団が登場です! しかも流星街が舞台という見どころ満載の回でした。

言ってみれば「故郷を守る」という重要な任務なのに、新入りのカルトがメンバに加わっています。これはカルトが信頼されているのか、それとも試されているのか──。

ズレたメガネから「頭が ゆるふわ」に見えるし、記憶力に難が あるシズクは、キメラアントについて鋭い意見を出しています。彼女は余分なことを記憶しないようにして、その分だけ頭脳を存分に使えるのかも。

流星街は文字どおりのゴミ捨て場なので、さまざまな病原菌が楽しそうに飛び回っているはずです。そのため、住民たちは保護服を着ている。

幻影旅団の団員たちは、普段の服装で平気なのだろうか。もしかして、「纏」で殺菌できるのかも しれませんね。

議会側の人間から幻影旅団が信用されていることも気になりました。流星街に物資を支給するマフィアを幻影旅団は襲ったのに、まるで問題はないのでしょうかね。


ザザンの「審美的転生注射」(クイーンショット)は、たんなる戦闘員を作り出すだけなら効率的が良い能力です。

ただし「選別」とは違い、おそらく念能力の発現までは不可能でしょう。でもそれは、ある程度の兵隊が集まったあとで殴れば良いだけですね。

この誇り高いザザンもまた、ラモットなどに殴られて念能力を身に付けたと思うと、なんだか胸が熱くなるな……。

No.225 「10-3」

門番などを置かず「御自由に お入りください」状態にしているのは、ザザンの「クイーンショット」が あるからでしょう。入り口で追い出すよりも、生け捕りにしたほうが良い。

ここでの会話からすると、現在はフィンクスが団長代理のようです。たしかに彼は判断力に優れているし、性格的にリーダ向きでしょう。頭脳だけならシャルナークが上みたいですが、こちらは補佐に向いています。

そして すべてを兼ねそろえているのはクロロ・ルシルフルですね。


サソリとクモは、両方とも同じ節足動物です。だからパイクとザザンはコンビを組んでいるのでしょうかね。それとも、「生前」にも似たような関係だったのかな(どんな関係?)。

あと、出陣の用意(と なぜかマニキュア塗り)をしていた付き人の 2 人は、旅団が去った後で どうなったのだろう……。


ついにボノレノフ先輩の戦いが見られる!

元はギュドンドンド族という未開の地で暮らす少数民族だったのに、いまは幻影旅団の団員だったり、なぜかボクサの格好をしていたり──まだまだボノレノフは謎が多い人物です。どんな経緯で入団したのだろう?

もしかしたらギュドンドンド族は、幻影旅団に滅ぼされたのかも しれません。報復を誓って入団したはずのボノレノフは、いつの間にか居心地が良くなった──とか。

戦闘演舞曲」(バト・レ・カンタービレ)は、奏でた音を戦闘力に変えるという説明からすると「変化系」の能力に思えるし、「具現化系」にも見える。この 2 つは見分けが付かないですね。

ボノ先生の相手は、ポンズを狩った(ように見えた)キメラアントです。口だけが達者なアリではなく、頑丈な体が やっかいそう。ボノ師匠が一段と穴だらけになるのかな……。

ところで──、いろんな場所にボディ・ピアスを付ける人がいるから、腕や足に穴を開けることは理解できます。しかし、いくら何でも お腹に穴は無理でしょう。100 万歩譲って腹の穴は良いとしても、背骨まで貫通するのはムチャです。


あの幻影旅団のメンバに紙を貼り付けるなんて、カルトは若い(幼い)のに ものすごい実力者だ!

──と思わせる描写ですが、これは団員たちが わざと付けさせたのだと思います。たとえ仲間と言えども、この強者たちが背中に触れさせるはずはない。「カルトのヤツ うまく付けられたと思ってるんだろうな」と内心は思っていそう。

No.226 「10-4」

前回の紙を使った通信能力と、今回の紙吹雪を操るところから考えて、カルトは「操作系」の念能力者ですね。兄のキルアよりも早い年齢で念を覚えたことになります。

ただし、「オーラが体を覆っている」描写がカルトには 1 度も ありません。「絶」が使えることは確実だけれど、これは「気配を消す」のと同じことで、ハンター試験中のゴンにも できました。

紙製の扇子で鋼鉄製のロープを切りさいたり、蛇咬の舞(ダコウのまい)という技を出したり、すべて念能力なしで実現していた──のは無理があるけれど。


シャルナークの「携帯する他人の運命」は、使い勝手の悪い能力だと以前から思っていました。

彼自身も言っているように一対一なら強いけれど、相手が複数でも 1 人しか操れない。携帯電話の操作で片手が ふさがる。おまけにアンテナが刺さる強度には限界があります。

さらに今回、「操作能力は 早い者勝ち」という致命的な弱点まで明かされました。シャルナークの強みは戦闘能力ではなく、頭が切れる点でしょうね。


フィンクスの「廻天」(リッパー・サイクロトロン)は、威力はバツグンだけれど、ゴンの「ジャジャン拳」以上に時間が かかります。外した時のスキも大きそう。フィンクスが元から持っている腕力に支えられている能力ですね。

そもそもフィンクスの言動からは「短気で大ざっぱ」に思えるのに「強化系」だったり、一方で「マイペース」なフランクリンが「放出系」だったり、ヒソカ式の性格判断に当てはまらない人物が多いなぁ。


敵がゆたりした服 着てたら──」といったフェイタンの しゃべり方が特徴的で楽しい。あきらかに中国系(アジア系)のカタコトな話し方なのに、語尾に「──アル」を付けないことで「マンガ的」なセリフから抜け出している。

また、元々は「っ」が入る言葉を選んでいる点にも注目です。セリフのセンスが ずば抜けていますね! 『中国嫁日記』の月(ゆえ)さんを思わせる話し方です。

中国嫁日記

急に傘を開き視線を釘付けにしておいてから、横へ回り込んで斬る──というフェイタンの戦い方が美しかった。手品師が使う視線誘導のテクニックに通じるものがあります。この場面もカメラの動かし方が素晴らしい!

No.227 「10-5」

ボノレノフの戦術は、演奏時間を長引かせることで長く念を練るようです。かなり体術に自信が あるようだけれど、敵のキメラアントが どれほど素早いのかは分かりません。すくなくとも音速程じゃ無いことは確実らしい。

何十メートルも ありそうな球体を敵の頭上に出す「戦闘演舞曲」の「木星」(ジュピター)が、ボノレノフ最大の奥義でしょう。たしかに強烈な一撃だけれど、もっと逃げ足の速い相手なら回避できるのでは?

まだまだボノレノフは何曲も演奏できるのでしょうね。いつか描かれるのかな……。


シャルナークとキメラアントとの会話が洒落ています。「死ぬまで 女王様のため 働く」ことが「たいして 今までの人生と 変わらない」なんて、人生の真理を言い当てていますね。

そして、従う相手が大事だと言うシャルナークも正しい。できる限り最上の相手に付き添いたいものです。

シャルナークの奥の手は、自分自身を「自動操作」で操ることでした。念能力や筋力を無理やりに限界まで引き出す技でしょう。先ほどの会話の後に「自分で自分の能力に従う」点が見どころです。


シズクの戦闘が まともに見られるのは初めてですね。パイクは頭が弱いけれど戦闘能力は優秀だから、シズクの強さが計りやすい。両者とも十分な強さを感じました。

この城(?)は全体がパイクの糸で覆われています。団員たちが普通に歩けるから、粘着糸では ないでしょう。クモが出す糸は すべてが粘着質かと思うけれど、パイクの糸は特殊なのかな。

Wikipedia によればクモの糸は、鉛筆程度の太さの糸で作られた巣を用いれば、理論上は飛行機を受け止めることができる──とのこと。

クモ #糸の利用 – Wikipedia

シズクの全身を覆った「謎の白い液体」(ごくり……)もとい、「愛の放射線」(ラブシャワー)の糸は、確実にエンピツ以上の太さが あります。この糸を引きちぎるには、ウボォーくらいの腕力が必要でしょう。

パイクは敵に背を向けたとはいえ、この状態から脱出を警戒するのは難しい。意外にもパイクには落ち度のない闘いでしたね。

よく見ると、髪の毛が粘着糸に張り付かないよう、シズクは捕まった瞬間に身を守っています。おそらく、糸が絡むまでの一瞬で、すでに脱出の方法を考えていたのでしょう。かなり頭の回転が速い。


下着姿になってセクシィなシズクですが──、なぜか普段の衣服のほうが よく見えました。『さよなら絶望先生』の藤吉晴美も、コスプレや水着よりも普段の制服姿が色っぽかったり──するのは私だけ?(知恵袋)

セクシィさで言えばザザンのほうが上なので、じつはフェイタンが「腕なまて るね」ではなくて、見とれているだけだったりして。いや、パクノダやシズクで見慣れているか(何を?)。

No.228 「10-6」

相手の血液を吸い取れるのであれば、ほんの かすり傷でも致命傷になります。そしてオークション会場で見たように、複数人でも一気に吸える。戦闘向きには思えなかったシズクの「デメちゃん」は、最強の武器に化けました。

粘着糸の糸でパイクが止血できたとしても、その分だけ動きが遅くなるから、どのみち彼に勝ち目はなかったでしょうね。

ただ、シズクに絞り尽くされた(ごくり……)パイクは、この状態でも攻撃が できた可能性があります。不用意に近づいたシズクは油断していたと思う。できれば、油断するのは格好だけにして欲しい。(キリリッ


イラ イラしているカルトは かわいらしかった! ザザンが出した「放出系」の攻撃も見抜けなかったし、ほかの団員とは差が付いていると知って、かなりショックだったでしょうね。

フェイタンとザザンの異常な強さは、カルトのモノローグ(内心)で効果的に読者へ示しています。前後のアクションをしっかりと描いているからこそ、この「解説役」が生きてくる。

よく冨樫先生の絵柄を「手抜き」だと文句を言う人が いるけれど、これほど「力の入れどころ・抜きどころ」を知っているマンガ家は すくないと思う。何でも描きすぎてゴチャゴチャするか、必殺技の名前を叫んで終わる作家ばかりです。


フェイタンの「硬」(「周」では なくて?)で無防備の背中を狙われたのに、ザザンは まったくの無傷でした。さすがに「練」で全身を守っていたとは思うけれど、それでも並の攻撃では歯が立たない。

交代するらしいボノレノフの「木星」やフィンクスの「廻天」なら、この自称・女王に通じるのだろうか?

──いや、そんなことよりも、衣服が飛び散ってしまったザザンは「元の姿」に戻るのか、それが最大の注目すべき点です!!!1 ということで、続きは『H×H ダークネス』で お楽しみください(エッチなタイトルだ)。

No.229 「10-7」

フィンクスとボノレノフはフェイタンが 殺られたら交代する──と話してはいるけれど、あとの展開から考えて、絶体絶命の状態になったら さすがに助太刀するつもりだったと思う。

そのあたりの「呼吸」や「空気」を知らないカルトから見ると、「こ…こいつら 絶対 変 !!」に見えるでしょうね。自分もヘンだと思った。


カルトが幻影旅団に入った理由は、「兄さんを 取り戻すため」とのことです。──このセリフも絶妙で、「助ける」ではない点が興味深い。

カルト(やクラピカや──)の性別と同様に、「明確な あいまいさ」を出すのが上手な作者です。これだけハッキリと描いてあるのに、何一つ分からない。

このゾルディック家の写真も、いろんな解釈ができてしまう。右端にいる人物は顔が隠れていて気になるけれど──、もしかしたら これがカルトで、左端が初登場の子かもしれません。

そして右端も左端も、どちらも体形だけを見ると男の子だよなぁ……。ただ、このくらいの年齢だと、なかなか見分けが付かないでしょうね。

一方、『ドラゴンボール』の孫悟空はパンパンした。

孫悟空 (ドラゴンボール) #人物像 – Wikipedia


完全にキレた時のフェイタンは、普段とは まるで違う口調になります。まるで『幽☆遊☆白書』の「初期・飛影」みたいだ(フ女子たちは意識して忘れているはず)。

チャイナ系の服装・火炎系の必殺技・髪型──と、やはりフェイタンは飛影に似ていますね。飛影の場合は炎を出しても服が燃えなかったけれど、フェイタンは防火服を具現化しているところが おもしろい。そりゃ、熱いし暑いよなぁ。

許されざる者」(ペイン パッカー)の「太陽に灼かれて」(ライジング サン)は、一瞬で髪の毛が蒸発したところから、何千度もの高温に なっているようです。

痛みを返すぜ灼熱に 変えて !!」という かけ声からすると、「変化系」と「放出系」の合成技だと思われます。防火服もオーラを変化させて作っているのかな?

おそらく、ダメージを受ければ受けるほど、燃えている時間と熱量が上がる技でしょう。発動までのスキも少ないし、知らなければ逃げようもない。これまでに見てきた念能力のなかでも、最高に使い勝手が良くて恐ろしい技です。


派手に 逝けや…!」の場面が悲しくも格好いい。

──でも、犬ちゃんにされた彼は、「どうせなら 彼女たち(シズクかカルト)に お願いしたかったな……」とか思っていたりして。

また、流星街の住人は外部の人間から暴行された時には報復するけれど、ここでフィンクスたちが やっていることも同じなのでは? ジイサン達なら言いがかりを付けてきそうな気もする。

下の名言も飛び出して、さわやかに幻影旅団の活躍が終わりました。──「殺人集団」が「化け物になった仲間」を「大量に殺した」話なのに、どうして ほのぼのとした終わり方ができるのだろう?

シャルナーク
「フィンクスてば 何か片想いの 女のコみたい」
フェイタン
「乙女ちくね」

性格も能力も楽しかったザザンとパイクの退場は残念だけれど、やはり人間の敵だけに いつかは駆除されたでしょうね。キメラアントと人間が共存する道は ないのだろうか──。