『バクマン。』 119 ページ 「過信と宣伝」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 10 号)
いつも思うけれど、大場つぐみさんは、よくもまぁ──これだけ多くのマンガを思いつきますね!
最低限、「ジャンプ」で連載中の作品に似たマンガは、作中作として出せない。他誌に掲載されている作品は、もっとダメでしょう。
架空のマンガとはいえ、こうやって限定された状況で考え出すのは、本当に新しいマンガを生み出す際と同じ苦労をするはずです。それなのに、数々の作品はタイトルと概要だけで消えていく──。けっしてかえらない卵を産み続ける鳥みたい。
そこで、昨日の(やけに長い)感想で書いた「編話者」の登場です。大場さんが生み出したマンガのアイデアを彼らに調理させて、「ジャンプ SQ.」あたりで発表してはいかがでしょう?
バクマン。 #119-2 「過信と宣伝」 大ファンと冷静な分析 : 亜細亜ノ蛾
無理ではないかと …………
「週刊少年ジャンプ」への批判は、『バクマン。』の中で繰り返し描かれてきました。作品を掲載する順番や連載の期間を、読者アンケートの結果で決めることは、もっとも非難される対象でしょう。
アンケート至上主義よりも疑問に思ったことがある。
それは、「ジャンプ」に配属 1 年目
──いやまだ 2 か月
の新人編集者・小杉が、期待の新星・七峰透とたったひとりで打合せをしていることです。
まず、小杉よりも何倍も長くこのマンガ業界にいる相田からして、読み切りを 1 本描く速度が分かっていない。それは相田が無能なのではなく、本当に読めない領域なのでしょう。マンガ家(志望者)本人の技量とやる気しだいということです。
ところが、無理だろう
──と小杉の独断で七峰に告げている。これは、七峰みたいな裏表のある策略家でなければ、一気に気持ちが冷める言葉です。「──ですよね(笑)」と。
たった 2 か月間の勤務で、歴史ある「ジャンプ」の方針をすべて熟知して、過去の作品の傾向と対策を考えた上で──、七峰の読み切りは間に合わないと判断できているのでしょうかね、小杉は。
(いちおう書いておくと、あくまでも『バクマン。』の中で公開されている内容を元にして、残りは想像で補って書いている感想なので、「実際の集英社では──ですよ」といったツッコミはえへへへへ、です)
恥ずかしながら、七峰の次回作である『緊張と それにともなう気体
』というタイトルは、「期待」の誤植かと思いました。この時点では内容が分からないから、何だかお堅いマンガみたいだな──と思ったり。
50 人中 34 人…
いよいよ、七峰の隠し武器──「判定人」たちの登場です。とはいえ、『バクマン。』の世界ではチャット上の文字としてのみ、彼らは存在する。二重の意味で仮想現実の世界にいるわけです。ある意味では『インセプション』っぽい。
感想: インセプション – 回り続けるコマ・倒れる現実 : 亜細亜ノ蛾
七峰の持っているコンピュータが Windows(8 あたり?)というところが、なんとなく「らしい」気がする。マンガや小説に出てくるクリエータは、ほとんどが Mac ユーザ──という時代が長く続いていました。その出版業界の「常識」は、そろそろ通用しなくなっているのかも。
でも 面白くなって ますよね !?
とうとう七峰は、小杉の前でも本性を現し始めました。小杉ひとりでは判断しかねるなら 上の人に見てもらって ください
──とはっきり言っている。
口調は丁寧だけれど、七峰の言葉は「お前のことは信頼できない」と同じ意味です。学校の給食費がなくなった時に 1 人の生徒を呼び出して、「正直に話してごらん(笑っていない目で)」と言うような感じ。
しかし七峰の立場だったら、自分も同じことを言いたくなります。自分が一所懸命に描いてきた作品を、「ジャンプ」の編集部に来たばかりの新人ひとりに観て欲しくない。こうやって強気に出られずに潰されていったマンガ家志望者は、何人いるのだろう──。
こう直してきたか
七峰のネームは、編集部で好評です。おもわず服部が説明口調で解説するほどに。発表する前の作品が成長していく様子を見られるのは、編集者の特権ですね。天地創造に立ち会うようなものです。
とっても! ラッキーマンガ編集者であるはずの小杉ひとりだけが、なぜか浮かない表情をしている。──このことについては、下で書きます。
めちゃくちゃ 面白いって…
このページは、吉田と山久のあせり具合が面白かった。この 2 人は、いつの間にか似た者同士になっていますね。平丸も「吉田化」してきているし、吉田氏の侵略! っぷりはパねぇでヨシ(某・娘をパクろうとしている)。
班員や作家が班長に似てくるなんて、吉田班だけなんですよね。相田班は、てんでバラバラです。
何だか今回の話は演出をミスっているなぁ──と感じました。400 回以上も『バクマン。』の感想を書いてきて、こんなことを思ったのは初めてかもしれません。
若気がない
・新人離れしてる
七峰を「悪」として描き、小杉を「善」として表現している感じですが──、描き切れていない。ただたんに小杉は、世間知らずで・わがままで・生意気に見えてしまう。
七峰のネームを読んだ小杉は、完成度などを批評するのではなく、あまり好きになれない
と言っている。──マンガ家は、担当編集者の好みに合わせた作品しか描いちゃいけないのか……。
普通に考えて(←七峰の口癖)、新人らしく
なくて余裕
があり、もう連載用の形も 大体できてる
ような状態は、すげーな
と絶賛するべきだと思う。現に、小杉以外の編集者は、七峰の作品を素直に認めている。
小杉の主張をすべて受け入れると、「新人のマンガ家は、もっと余裕なくギリギリの状態で描いて、僕の好みに合わせるべきだ!」となります。ようするに、「僕の言うことを聞け」。
──うん、あなた、編集長? それとも神様かな?
