『インセプション』(Inception)
昨日、劇場で観た『インセプション』は、最ッ高に面白かったです!! ──終わり──
──と終わっても良いのですが、この素晴らしい映画について、自分らしい感想を書いていきます。
他人の夢の中に侵入して──という「よくある題材」のようですが、一味も二味も違う。主人公が夢の中に侵入する目的は、ある考えを他人に「植え付ける(インセプション)」こと。
その目的のために、夢を無秩序なままで放置するのではなく、理論的に夢を構築していくところが新しい。「多重構造になった夢」が出てくるので、頭が混乱しそうですが、上手に分かりやすく表現していました。
そうかと思えば、逆に物の道理を壊すような、「凄い、ビルが生えてく!」──ならぬ、「ビルごと街が折りたたまれていく」場面は必見です。
迫力あるアクションも良かった!
無重力の状態で戦う場面があって、「どうやって撮っているんだ?」と思わず首をひねります(二重の意味で)。そのあとには、笑えるシーンも待っていますよ。カーチェイスでは、観客にまで痛みが伝わってくる感じです。
そして、『インセプション』で誰もが気になる──、
ラストはどうなったのかの考察も最後に書きました。
2 人のヒロインと 5 人のハンサム
レオナルド・ディカプリオが演じる主人公のドム・コブ(ドミニク・コブ)は、危険な香りがするタフ・ガイです。正直なところ、ブラッド・ピットのほうが似合うのでは──と思ってしまうくらい(失礼!)。
ただ、ディカプリオが演じたほうが、ヒロインから「守ってあげたい」と思われる要素が強いですね。「母性本能をくすぐられる」からではなく、「危なくて見ていられない」から……。
コブの仲間となっていく人物たちを演じるのは、それぞれが味のあるナイス・ガイたちです。「ほら、その──ディカプリオが主演なんだから、ワキはもっと『実力派俳優』を揃えたほうが良いのでは」と心配になるくらい。
中でも、やっぱり渡辺謙さんが渋い! 『バットマン ビギンズ』では、作品からやや浮いた印象でしたが、本作はビシッと決まっていました。
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ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが演じるアーサーは、二枚目半な感じ。優等生のお坊ちゃまなんだけど、時々ハズすところがチャームポイントです。生真面目すぎるコブとは、良いコンビですね。
イームス役の トム・ハーディは、にくいヤツです。いつも半笑いで、人を小馬鹿にしたような表情をしている。「憎めないヤツ」とは書けないですね。でも、なんだかんだ言って、メンバの中では一番モテそう。
ユスフ(ディリープ・ラオ)をハンサム組に入れて良いのか──と疑問を持った人も多いでしょう。でも、好きな人は好きなキャラだと思う(当たり前)。それに、ほら、たとえば「日本の首都みたいな名前のグループ」にも、いろいろな人がいますからね……。
コブの「仲間」とは言えませんが、ロバート・フィッシャーを演じたキリアン・マーフィーは、文句なしにハンサムでしょう。初登場の際に照明が暗くて、クリスチャン・ベールかと思った。
ヒロイン役は 2 人いて、1 人は「アリアドネ」(エレン・ペイジ)という名前です。たまたま「夢の設計士」にスカウトされた──ただの大学生がこの名前なのは、出来すぎな感じがしますね。野球マンガのピッチャが「勧善 慈哀(かんぜん・じあい)」みたいな。
自分は、主人公とヒロインが、とうとつに接近して、安易にベッドシーンやキスシーンへつなぐ──。そんな展開が大嫌いです。
『インセプション』でも、アリアドネの唇を奪う場面が出てきますが──、これはシャレていて良かった! 「ああ、やっぱり彼は、そうなのか」と一人でニヤニヤしました(キメェ)。この時のアリアドネが、かわいらしい!
もう一人のヒロインであるモル・コブ(マロリー・コブ)役は、マリオン・コティヤールが演じました。不勉強のために初めて知った女優さんですが、ものすごく印象に残る演技です。セクシィな狂気を感じる。
痛いアクション
当たり前ですが、夢と現実の話ばかりが語られる映画です。ところが、アクションもバツグンに良かった!
街なかをコブが走り回るシーンでは、あまりにも細すぎる路地に入り込んでしまい、身動きがとれなくなる。「緊迫感のあるユーモラスなシーン」で、ちょっと笑ってしまいますが、観ていて本当に痛そうだな──と感じました。
そのあとのカーチェイスでは、敵が車に激突される場面が何度も出てきます。これがまた──痛そう!
激突のあとでゴロゴロと路面を転がっていくスタントマンの演技と、「ドン!!」という効果音とが合わさって、最高に迫力あるシーンでしたね。
最近、自分が観た映画の中では、『ウォンテッド』のアクションも良かった。夢の世界を描いた『インセプション』よりも、現実世界で戦う『ウォンテッド』のほうがハチャメチャなアクションです。
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最後に
さて、ラストのシーンですが──、自分は、
「トーテム」は倒れない、と思う。
どういうことなのかを、順に説明していきます。まずは、この映画で何が起こったのか──という共通認識を得るために、下のリンクをご覧ください。上からオススメ順になっています。
上記のリンクを含めて、調べた限りでは指摘している人がいなかったので、ちょっと自分の認識が間違っているかもしれません。その前提でお話しすると──。
中盤あたりで、コブが自分の「トーテム」──コマ(独楽)を回そうとして、途中でやめる場面が出てきました(アリアドネに呼ばれたか何かで)。ミステリィ小説やサスペンス映画のファンとしては、絶対に見逃せない場面です。
そして、それ以降は「コブがコマを回して、最後に倒れた」という場面が、いっさい出てこない(と記憶している)。コブがトイレでコマを回した時も、床にコマを落としてしまい、結果は見なかった。
つまりは、コマを回すのをやめた前後あたりから、ずっとコブは夢を見ているのではないか。マシンの副作用による、昏睡(こんすい)状態とか。
さらに怪しいことに、せっかく作ったアリアドネの「トーテム」は、一度も使われた場面がない。「コブやほかの人に観られたくなかったから」にしても、隠れて使えば良かったはず。観客にまで隠す意味はない。
「中盤からずっとコブの夢」ではなかった場合でも、もうひとつ面白い仮説があります。
第 4 階層──「虚無」からアリアドネが「落ちた」あとで、コブはさらに下の階層──第 5 階層に下りていったのかもしれません。下りた理由は、死につつあるモルを救うためです。
第 5 階層の世界では、サイトーを含めた全メンバは「現実」(本当は夢)に戻り、コブは子どもたちに会えた。そして、もしかしたら、そこにはモルもいて──という理想の世界にコブは下りた(墜ちた)のではないか。
現実世界のコブが生きている間、第 5 階層にいるコブは、十分に一生分の人生を送れるはず。もちろん、そこにいるサイトーやアリアドネ・子どもたち(・モル)は、コブの潜在意識ですけれどね……。
さらなる仮説は──、
たとえ「トーテム」が倒れても、夢の中である。
そもそも、「トーテム」のアイデアを考えたのは、誰だったのでしょうか。それは、モルだ──とコブが言っていたのです。そう、アイデアの元が誰なのかすら、あいまいなんですね。
「トーテム」の効果を本当に信頼して良いのかどうか、観客には知る方法がありません。モルの──というか、コブの言葉を信じるしかない。
ようするに、「トーテム」──コマの回転が正常に止まれば現実である、というアイデア自体が──、
コブかモルが仕掛けた「インセプション」だった。