バクマン。 #116-3 「狙いと評価」 サイテーとペア

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『バクマン。』 116 ページ 「狙いと評価」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 07 号)

cute penguin couple - explored
(ペアを組めるのは──最高だ)

『さよなら絶望先生』と『美味しんぼ』は、エンドレスエイト方式で何度も読んでいます(asiamoth 豆知識)。

ちょうど今読んでいる『さよなら絶望先生 (21)』 p.68 では、少年誌での「アウトー !!」な表現に対して、書いて いいんだ アレ──と某・マンガ家が絶望している。

参考: 週刊少年マガジンの漫画が放送禁止用語を堂々と掲載 – ガジェット通信


まぁ、グラビア満載の「マガジン」だしなぁ──、と油断していたら、今週号の「ジャンプ」でもアウトっていました。

それは、『銀魂』のいいえ それは イボ痔ではなく クリ…ですね! 書いていいんだ……ソレ。

というか、あの九ちゃんが、ちゃんと意味を把握していたことに驚きです。あ、そうか──、女性に関しては、彼女はくわしいのか。納得・アンド・俺得。


われらが『バクマン。』も、限界に挑む!

青井 サイテー

前回の感想では、「南原の体操服を盗んだのは青井なのか!?」という場面で終わっていました。

思えば青井は──、「小学校編」で女子の身体測定中にわざとケガをして保健室に入ってきたり(※)、「中学校編」で水泳の授業中に女子をガン見していたり、「修学旅行編」で女子の部屋へまっ先に突入したり──、といった描写は、ありません。

「急に青井が出てきたので」というサッカー選手みたいな状況の読者には、青井や南原に感情移入はなかなかできない。南原はかわいらしいので、気持ちは分か──いや、分かりません! だから、犯人が誰だろうと、読者にはどちらでも良いのです。

それでも、これはひどい!

「カミ」からすれば、犯人はすでに分かっている。それなのに、わざと出席番号順に質問をしています。その目的は、青井をからかいつつ、犯人を追い詰めていくことでしょう。ほかの男子には、つかの間の安息も与えている。

すぐあとで、どうせ殺すのに。


もう、たまりませんなー! この作者は、とんでもなく性格が悪いですね! 「創作の世界では」と頭についていれば、性格の悪い人は大好きです。

「普通の人」だったら、「ウソつきは消されるルール」までは考えられても、こんなカミの質問方法は思いつきません。「青井が犯人?→『ち、違う!』→ウソなので消された」で良いじゃないですか。

この質問の仕方からして、「シンジツを言う人間は助けよう」という──甘っちょろいことをカミは考えていないでしょう。

いったい、カミは何が目的なのか?


タマラナイと言えば、南原の描き方もイイ感じです。体操服を盗んだ犯人は青井──と疑っている時には、彼の名前を呼び捨てにしているのに、違うと分かった時には青井くん ごめんと謝っている。その謝り方もかわいらしい!

なんとなく、南原はカヤに似ている。あとから分かりますが、『シンジツ』の作者はカヤを知らないはずです。亜城木夢叶の作品に、カヤに似たキャラクタが出てきたのでしょうか。

14 歳 なんだ

助かろうとして志摩が叫んでいるコマも、面白いですよね。「シリアスな笑い」を作者は熟知している。

しかし、状況は笑っている場合ではありません。

自分からでたらめ 言って死のうとしても 駄目というルールは、考えてみるとつらすぎる。カミの質問によっては、どうしても 死にたければ──を本当に実行したくなります。

なにより、ここまで苦しめておいて、カミは志摩を生かしている! これはエグいですね。『美味しんぼ』でやたらと出てくるセリフ──「いっそ殺してくれ」と志摩は言いたくなるでしょう(※おいしい物を食べた時に出る言葉)。

今 何人ですか?

生き残った人数を生徒に聞いたのは、わざとでしょう。圧倒的に有利な立場でいながら、ときどき生徒に対して軽い優越感を与えている。

カミは、本当にイヤミな奴ですね!

そして、カミを創り出した神──作者はどんな人物なのか、気になります!! もしかして、働かないうちに絵柄が替わってしまった──冨樫義博先生では?(ないない)


このページでは、衝撃の事実が明かされました。私の都合で ルールはコロコロ 替わりますとカミは言う──。そんなことを言われたら、対策も立てられない。

さんざん恥ずかしい秘密を同級生にバラされたあげく、けっきょくは消される生徒も出てくるでしょう。大半の生徒は、そのような末路をたどるかもしれない。

高橋くん…… 私と…

ほかの生徒たちは同性同士でペアを組んでいるのに──、佐伯が選んだのは、高橋でした。うらやましい……。

自分がこの場にいたら、同性ですら 2 人組になれるか、自信がありません。あ、書いていて■にたくなってき──はしないけれど(ひとりが好き)、良い気分はしません。

作者の狙いも、この「気分の悪さ」にあるのかも。

死に追い込まれて いったら

最後は力尽くの 殺し合いになると予測する三木は、正しいと思う。すでにこの「生き残りゲーム」は、シンジツやウソといった話ではなくなっているのです。

ただ、自分の「シンジツ」の気持ちを、三木は大勢の前で叫んでしまった。これは明らかに失敗ですね。

このゲームに生き残るには、それなりに協力しながら、頭は最大限に使って、あまり目立たない人物でしょう。高橋と佐伯は、ピッタリとこの条件に当てはまります。


ここまで読んできて、ぐったりと疲れました。次のページに出てくるサイコーとシュージンも同じです。まだ第 1 話の前半だけなのに、これだけ引き込まれるマンガはすごい!

もちろん、『シンジツの教室』は、「ジャンプ」らしくない・掲載できないマンガだけれど──、メタな視点から見れば『バクマン。』の劇中作として堂々と載っています。

この皮肉な構造は、『バクマン。』では意外と珍しい。

福田は、「ジャンプ」編集部に対する不満や批判をぶつけていました(アフロに)。けれども、彼が描いている作品は、なんだかんだ言って──「ジャンプ」らしいマンガなのです。

静河流の『True human』も、最初は「反『ジャンプ』的」なマンガでしたが、山久の教育的指導によって掲載が可能になりました。『バクマン。』に掲載される際にも、それほどきわどい場面は出てこない。


そう、こんなにハッキリと「『ジャンプ』否定マンガ」を『バクマン。』で取り上げたのは、今回が初めてなのです。

『バクマン。』がアニメ化したタイミングで『シンジツ』を出してきたのは、大人気で打ち切りようのないマンガになった時期を狙って、大場さんはこの(以前から温めていた)意欲作をリアル編集部へぶつけたのでは──、といつものように考えすぎてみました。

余談

(※): ちなみに、わざとではないけれど、このエピソードは自分のことです。小学校・低学年のころにケガをして、保健室に運ばれた時に、ちょうど女子が身体測定をしていました。

でも、当時からマセガキだったのに──、痛くて女子を見ているヒマはなかったのが、非情に非情~にくやまれる!

なにしろ、「積んであったコンクリート・ブロックに指をはさまれる」というけっこうな事故で、いまでもその指だけちょっと平べったい。

こんなことを書くと、ほかのエピソードも自分のことのようだけれど、違います。何となく、思いついた。ああ、でも、いまの記憶のまま学生時代へ戻れたら──。

「──などと容疑者は自供しており、」