『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 19 巻 感想・2

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『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 19 巻 「ラブリーバニーガール」

Blue Blue Tree
(部屋から出てこそ──光を見られる)

第 19 巻は「初めてのこと」が多かったけれど、いつでも この作品らしさを保っていました。

「ジャンプ」で『進撃の巨人』の名前を出す──というタブーを描くのも、この作者らしい。この件は『バクマン。』の感想でネタにしました。よかったら、あわせてお読みください。

バクマン。 #115-3 「記念撮影と教室」 7600 枚 とカミ : 亜細亜ノ蛾

第 167 話 「ドキドキする」

「天才・安形惣司郎」という呼び名も、いまでは遠い彼方へ行ってしまった──。妹かわいさのあまり、もはや別人になっています。もしも生徒会室にまだ彼がいたら、椿とバニーとのやり取りに腹が立って仕方がないでしょうね。

この誤解が解けた時、安形は藤崎のことを認められるのかな──(ムリだな)。


部室の大改造は、一話を丸ごと使ったのに──使用禁止とのこと。このアッサリ感が、『スケダン』の持ち味です。歴史に残るような大発明も偉業も、次回には「なかったこと」になっている。

ただ、修学旅行という大事件は、さすがに誰もが強烈に覚えていました。この気まずさと気恥ずかしさは、彼らの世代でしか味わえません。

ヒメコのモノローグで、サーヤが修学旅行で ボッスンに 告って以来、初めてボッスンと会った──と自分もうっかり思いこんでいました。これには、2 点の間違いがあります。

まず、ボッスンとサーヤは『SKET DANCE (17)』で再会しています。──番外編とはいえ、あまりにも普通に接しているため、感想でも完全にスルーしていました!

『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 17 巻 感想・1 : 亜細亜ノ蛾


それに、サーヤはボッスンには告白していません

修学旅行の時にサーヤが話をしたのは、ボッスン──と魂が入れ替わったヒメコです。ボッスン自身は、彼女たちの会話を間接的にしか知りません。

それに、オレの事 好きなのか? と聞いたのはボッスン(ヒメコ)のほうだし、サーヤの答えはよく わかんない けど 気になるよでした。恋の告白としては、ちょっと弱いでしょう。

あの夜のことを思い出したボッスンの回想からすると、どちらかと言えば──サーヤにではなく、ヒメコのことを意識しているようにも見えますね。あの時、サーヤのことを「何とも思っていない」とボッスンは即答していました……。

おそらく、藤崎は本当に、紗綾のことを女性としては見ていなかったのでしょう。でもそれは、「好きではない」というよりも、恋愛が分からないからです。

では、ボッスンがヒメコのことを意識しているのは、なぜでしょうか? これは、「家族のように思っていた対象」が、時々「異性として見てしまう」から、戸惑っているだけだと思います。


サーヤが、ボッスン 好きだよと素直に言えて良かった。上で書いたようなことを、彼女は知らなくて正解でしたね。

2 人の恋が始まるのは、これからです。

紗綾の恋心は本物でも、藤崎はフワフワしたままでしょう。いまは、それでもいい。これから 2 人で作っていく関係が、本当の気持ちになっていけば良いのです。

ヒメコも読者も笑っていられるような、大満足の終わり方でした。このあとの描写は すくないけれど、いつかは 2 人の恋も進展するのでしょうか──。ボッスンのことだから、ゆっくりゆっくり、近づいていくはずですね。

第 168 話 「ゴッツーケピーアッシュボーン」

マジメな恋愛の話を見たあとで、この話は ずるい! ヒメコと一緒に笑いました。

ボッスンとヒメコは、本当に仲が良い。前回と今回を見て、この 2 人の「仲の良さ」は決して恋愛感情には向かわないのだろうな──と再認識しました。

とはいえ、「ボッスンの顔が頭から離れない」というヒメコのセリフに対して、サーヤの告白よりも、ボッスンは照れているような……。


森下小麻もダンテも、スケット団の部室へ来るたび──、イヤな目にあっている。それでも彼らが通い続けるのは、ボッスンの人柄ですね。

ボッスンは、コマの話も自然体で聞いてあげられる。なんて優しいんだろう。自分だったら、どんな態度で聞けばいいのか、分かりません。ペットは家族だから、その死をどう受け入れればいいか、いまだに答えが出せない。

──というイイ感じの話をぶち壊しにするのも、このマンガらしいところです。笑うと失礼な状況であるほど、笑いがこみ上げてくる──というネタで小説を書いたので、こちらもどうぞ──。

絶対に笑ってはいけない洋館 – 亜細亜ノ蛾 – ダイアリー

第 169 話 「集中力を高めみんなで協力し合う勉強会」

おそろしいことに、これが初めての「テストの話」でした。マンガ的に盛り上げることが難しいテーマとはいえ、「学園モノ」なのに皆無だったのは珍しい。

「テスト期間中は早く帰宅できるから、放課後にあのコと街でバッタリ会って──」という展開へは持っていかないのも、『スケダン』クオリティです。


鬼塚家のオカンは、「いかにも」という感じでした。娘に負けず劣らず、数々の「武勇伝」を持っていそうな気がする──。

スイッチは、見た目どおりに勉強ができるようです。ヒメコも、まぁ、見たままでした……。でも、ボッスンが数学を苦手としているのは、意外です。「集中モード」の場面を見ると、計算が速そうな感じですけどね。

第 170 話 「クリスマスカード 前編」

早乙女ロマンが、ここぞとばかりにメタなネタを入れてくる……! そのせいで、すっかり「残念で痛い人」になっているところが、ファンとしては心苦しい。

吉備津百香から見ると、ロマンの第一印象(本当は 2 回目)は最悪でしたね。アニメの声優(もやっている人)とマンガ家(志望者)という意味では、相性が良さそうだけれど──、2 人きりの会話は厳しそう。


森野を救う行為は、スイッチにとっては、過去の自分と向き合うことでもあります。いつもの人助けとは違って、つらい思いがあったと思う。

スイッチは、引きこもりの状態から、どうやって外へ出られたのだろう──。ボッスンのおかげであることは判明していますが、どんなドラマがあったのかは不明です。作者の あとがきからすると、描かれないのかもしれませんね。

第 171 話 「クリスマスカード 後編」

中高生が引きこもりに なる原因を、スイッチが分析しています。これは、いまだから話せることでしょう。

スイッチは、「口を開いて話している」わけではないけれど、誰よりも人との接し方が上手です。つらい経験をした分だけ、同級生よりもオトナだったりする。そのため、彼のことを、みんなも自然に受け入れています。

普通の作品の文脈から行けば、「いつかは笛吹和義も口がきけるようになって、めでたしめでたし!」という終着を目指すでしょう。そうなるかもしれない。しかし、スイッチは、今のままでも良いと思います。

スイッチが、自分でどうしたいか──ですね。


前半の電飾がカギになることは読めたけれど、それをどうするのか分からない。サブタイトルにもなっている「カード」がヒントなのは、やられました!

これが普通の大きさのクリスマス・ツリーだったら、森野が外に飛び出すくらいの衝撃はなかったでしょう。あの大きさが必要でした。かといって、スケット団の 3 人だけでは、ひと晩で飾り付けはできない──。

今回の作戦が成功したのは、協力者がいたからでした。つまりは、スケット団の普段の行ないが良かったためですね。