バクマン。 #146-3 「本番と腹の虫」 初心とクローゼット

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『バクマン。』 146 ページ 「本番と腹の虫」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 40 号)

クローゼット Closet
(思い出が詰まったクローゼットに──光が差す)

「服部流・交渉術」がビシバシ展開されました!

短い会話の最中に いくつもの技を詰め込む──という高等なテクニックが使われています。服部の会話を拾っていくだけで、交渉術の本が書けそうな気がする。

魔法少女を契約させるのも、服部なら簡単なはずです!

“魔法少女まどか☆マギカ” アーカイブ | 亜細亜ノ蛾

原作者の大場つぐみ先生は、このようなセリフがスラスラ出てくるのでしょうかね? 先生自身も交渉上手だったりして。

捨てるには もったいない

いったんは東の言葉を肯定して、気持ちを受け入れる(ように思わせる)。その上で、本当に いいんですか? と問いかけて心を揺さぶり、すかさず自分の意見を言う。

そして決め手の殺し文句は──、

川口たろうが 喜ぶと思いますか?

この大技を静かに決めたあとで、すぐ立ち去るところもニクいですね。満点の交渉だと思いました。

50 歳の私相手に…

「何かを始めるのに年齢は関係ない」

──自分も強くそう思うけれど、いざ当事者になると話が変わってきます。この言葉どおりに行動を始めたり、初心に戻って一から やり直すには、ものすごく精神力が必要になってくる。

川口たろうは、最後まで絶対に 諦めないという不屈の精神が長所です。その彼ですら、二度と花開くことなく散っていった──。

その事実は、東の心に根深く突き刺さっている。「どんなに がんばっても不可能なことがある」と思わせるのに十分でしょう。残酷だけれど……。

今日は これくらいに するか

以前は新妻エイジのことしか頭になかったサイコーが、いまでは七峰透の亡霊が重く肩に のしかかっています。

つねに自分ひとりで戦っているようなサイコーも、意外と他人を意識するんですよね。ライバルが いないとダメになるタイプでしょう。

でも、その意識を、すこしは恋人に向けたほうが良いと思うケド(「あまめ」さん──だっけ?)。

東です 東美紀彦

川口たろうを尊敬する 2 人の、感動の初対面! ──には、絶対に見えない風景です。どう見ても「犯罪が起こる一歩手前」だよなぁ……。

「夢破れてマンガあり」(?)な東に、大ヒットしている『PCP』のマグカップを差し出すサイコーは、なかなか皮肉が効いています。初めて会った人間に対して、「間が持たない」と思っているし。

さすが、冷酷無比な真城先生やでェ!

もっと遅く 帰る時も

昔の仕事場へ久しぶりに やってきたら、以前と同じように夜遅くまで明かりが点いている──。その光を目にした瞬間、東の頭の中では、川口たろうの思い出が蘇ったでしょうね。

東自身は、「川口先生にも甥にも顔向けできない」と思い込んでいます。それでも「真城先生」を待ち続けた彼の気持ちが痛々しい。


仕事場でペンを持ったまま 死んでいたなんて、第三者からすれば「マンガ家の鑑(かがみ)」として語り継がれそうな話です。

しかし──、身近な人間からすると、「そこまでして仕事を続けられるか?」とか「連載できるかどうかも分からないのに」と思ってしまう。

そう言えば、一度も描かれたことは なかったけれど、川口たろう──真城信弘の両親は、彼の死を どう思っているのでしょうかね……。信弘の兄でありサイコーの父親である真城昌弘のように、純粋に応援していたのなら、まだ良いけれど。

参考: バクマン。の登場人物 – Wikipedia

いや、サイコーの母親のように、川口たろうの両親も、自分の息子の健康を心配していたはずです。「死んでも成功しろ」と心の底から思う親なんて、いるわけがない。

おそらく川口は、両親の気持ちを よく知っていて、誰にも近況を知らせずにマンガを描き続けたのではないか──と想像しました。あるいは、まわりの人間のことなど頭になく、ひたすら原稿に向かい続けたのか──。