『バクマン。』 169 ページ 「声と反響」 (週刊少年ジャンプ 2012 年 14 号)
石沢は、北見リリカの人気を底上げするために、亜豆(とサイコー)の顔に泥を塗ることが目的だった。その彼にとって もっとも望まない展開が起こっています。しかし彼の力では、もはや何も できません。
キン肉マン何世だよ! みたいな石沢の顔が痛々しい。
一方、こんなに切迫した場面なのに、「福田 3 兄弟」は鼻からラーメンを出していた。彼らの芸風は いつでもブレませんね。『DEATH NOTE』の時から変わらず、「イケメンは崩す」ことが作者の常道です。
なんだか「顔芸」が多い回でした。
聞いてらんない
サラの発言についてシュージンは、ファンとしては 大事な所
を聞いた──と言う。それは確かでしょうね──「一部のファン」については。
ただ、ファンの代弁者である──あるいは大便のようなファンに代わって質問したサラは、ファンではないと思う。おそらく、今回の騒動をきっかけにして亜豆のことを知ったばかりで、声優には無関心だったのでは?
サラは、亜豆と直接 話したことでファンになったんじゃないかな。このマンガが「声優・亜豆美保の成長を描く物語」だったら、いつかはサラが声優としてデビューする──なんて展開が見られたかも。
次々とサラからセクハラ
な質問を浴びせられているのに──亜豆は なんだか妙に うれしそうです。どうして彼女は楽しそうに見えるのか?
これは亜豆がマz ──だからじゃなくて、こんな話ができる相手は、いままでカヤしか居なかったからでしょう。母親とは恋愛の話は あまりしていないようだし、妹には「まだ早い」と考えているはず。
それにカヤは、サイコーとは結婚するまで「そういうこと」が できないと知っているから、話題にすら上がらないでしょう。でも、ほかの女の子と同じように、亜豆だって恋人について話したかったに違いない。
全国放送で話すことかどうかは一考の余地があるケド。
アズキュンのファンは
カミングアウト
という言葉を聞くと、ドキッとします。『クマン。 (17)』の表紙でカヤと手を組んでいるのは「そういうこと」だったのか──とか、年頃の娘さんがカレシは いなくても平気なのは──とか、思った人は居ませんか!? こらー(ぼう)。
バクマン。 17 巻 「一発勝負と一話完結」 3 連弾と行き着くところ | 亜細亜ノ蛾
亜豆の正直すぎる発言でファンが減る──。この正直な感想と忠告を含めて、サラは いい電話
をかけてきました! ラジオのスタッフは、分かってないなぁ。
あと、サラのセリフが頭に乗っている亜豆は、「ゆっくりしていってね!!!」みたいに見えてウザかわいい。
大丈夫なんすか コレ
亜豆の表情が「シリアスな笑い」を かもし出している。ギャンブルマンガで破滅の手を引いた瞬間──みたいな感じです。
サイコーの声を聞いた瞬間に、亜豆は何を感じたのか──。想像が むずかしい。「カレシの声を聞けて うれしい(はぁと)」という感情は、ほとんど ないでしょうね。
「サイコーに怒られる」と亜豆は思ったのでは?
もはや周知の事実になってしまったとは言え、サイコーとの仲は秘密の関係でしたからね。(このブログでは おなじみの)引いた視点から見れば、「自分のファンを大事にするあまり カレシとの秘密を打ち明けた」ことになる。
サイコーが この程度のことで怒ったり、ましてや夢を捨てるような──そんな器の小さい男じゃなくて良かったです!
いてもたっても いられなくなって
カヤいわくの「セクハラ発言」を聞いて、ムラムラとガマンができなくなったサイコーは、急いでトイレへ駆け込んで──じゃなくて、収録現場まで走ったのかと思いました。意外と近くでしたね。
いつものように意外と冷静なシュージンは、「(寒いから締めて欲しいな……)」とか思っていそう。
この電話で興味深い点は、最初と最後の ひと言ずつしかサイコーと亜豆は「会話」をしていないことです ほとんどが視聴者のためだけに語っている。
つまり、サラの電話にも出てきた「メールだけで励まし合ってる
」・「電話は 10 回より少ない
」を守っているんですよ! ここまで徹底されると感動してしまう。
『HUNTER×HUNTER』(下描き状態・休載)や『銀魂』(生々しい遊郭の描写)並に「ジャンプ」のルールへ鼻クソを付けてきたサイコー先生が、自分の恋の掟だけは遵守している……!
その「誓約と制約」こそが、マンガの原動力なのかも。
今までの 演技が皆さんを
「亜豆美保は 声優です
」とサイコーは視聴者へ訴える。この ごく当たり前の事実が、世間からは忘れ去られていた。スキャンダル好きな大衆は自分の欲望を満たすために、亜豆の職業どころか人間性を無視している。
サラのように素直な質問ができる人間は、個人的には好きです。しかし、下品な発言であることには間違いない。今回は たまたま良い方向へ動いたけれど、いつか痛い目を見る前に、誰かがサラを注意するべきですね(ワタクシに任せて欲しい)。
声優プロダクションの社長やマネージャは、なんとかして「声優・亜豆美保という商品」の価値が下がらないように考えた。それは自体は、彼らの仕事だから正しい。
しかし、亜豆の「商品価値」を守るために、彼女の最大の武器である「声」で「ウソをつくこと」によって信用を取り戻そうとしていた。自社製品の性能を偽って売るようなもので、まったくチグハグだ。
「彼女の声を 信じて欲しい
」とサイコーは語りかける。つまりは「彼女の仕事を評価するべきだ」という当然の主張ですね。
そもそも「亜豆自身を信用すること」は、彼女の身内でなければ本来は不可能です。芸能人を身近な存在に感じることはあっても、その人格まで信じることは──ちょっと異常だ。
そして その異常さこそが、ファンの条件だとも思う。