『HUNTER×HUNTER』 No.364 「思惑」
正規国王軍を兼ねた第一王子の私設兵
は、最悪に厄介な存在です。
ビンセントは「防衛権」を盾にして(むしろ矛にして?)好き放題できる。念能力や拳銃を使い、王子や側近を消せれば良し。あるいは、正当防衛で退場させられることも計算済みでしょう。
たとえるなら、〈伸縮自在の愛〉(バンジー ガム)で全身を覆ったヒソカが襲ってくる感じです。
クラピカからすると、受けても攻めても──もとい、攻撃しても防御しても排除させられる。当然、クラピカのことだから、ビンセントに「協力」するハズもない。
この危機をクラピカたちは どうやって乗り越えるのか?
今回の見どころ
- クラピカの人差し指の鎖に新しい事実が発覚
- ……おや!? ワブルおうじの ようすが……!
- 「エンペラー タイム」には恐ろしいルールが……
- 一難去ってまた四難!
虫取り代行
クラピカの鎖には まだ奥の手が残されていました。
〈人差し指の絶対時間〉(ステルス ドルフィン)は、吸い取った能力を 他人に移動させる
。さらに、念能力を使えない人間でもドルフィンを認識できます。
この能力により、口うるさいイルカの おしゃべりをオイト王妃と共有できました!(そこ!?)
──なんとなく、「本当は自分の気持ちを他人にも理解して欲しい」というクラピカの深層心理が隠されていそうです。
- ビスケ
- ホントは さみしかったんだね
- クラピカ
- BB──ママー!
- ビスケ
- ババァ?(ビキビキ#)
──みたいな やり取りが楽しめたりして(続きは夏・冬の薄い本で)。
いつまでも赤児のままで いられない
急に泣きやんだワブル王子が謎でした。
現時点でのワブルは、「ただの赤子」以上の描写は ほぼ皆無です。唯一、一瞬だけ〈オーラ〉のような気配を察したくらい(No.358 「前夜」)。
それなのに、まるでクラピカの言葉を完全に理解したようなワブルの反応です。あるいは、最低でもクラピカの覚悟を言葉ではなく心で理解できた
ように見える。
そもそも、ワブル王子に(も)向かって「信じて いただけますか?
」とクラピカは聞きました。この点も奇妙です。
どこかの時点で、「ワブルは人語を解する」ことをクラピカは察知していたのか?
ただ、ワブルが「ば あ
」と赤ん坊らしい反応をする場面では、クラピカは驚いているようにも見える(アニメだったら「目をパチクリ」しそうな表情)。
親子の両方にクラピカが呼びかけた理由は、ただたんに「仕事上の礼儀」だったのかも。
まだまだ隠す鷹の爪
ビルの能力は何だろう?
ビンセントに銃を撃たれても、接近して押し倒しても、ビルは基本的な〈念〉しか使っていません。
クラピカが〈奪う人差し指の鎖〉(スチール チェーン)を使わなかったら、ビルはビンセントに倒されていたのでは?
そんな状況でも、ビルは〈発〉を使わない。つまりは、ビルの念能力は戦闘向きではない、ということでしょう。
あるいは、「すでにビルの能力は描かれている説」を考えてみました。どれもショボいな……。
- 国王軍すら見逃しちゃうね、な「ドン」と消えて現われる能力
- 私設兵ですら屈服させる「ヒジ」こそがビルの能力(コマンド: →→→P)
- 銃弾を食らっても「さすがに かなり痛えな」くらいで耐えられる「防御力」
- じつは、〈虚空拳〉を出せなかったのはビルの能力だった
- スーパーサイヤ人のように髪を逆立てて強く見せるスキル
命の価値は
発動時 一秒につき一時間!! 寿命が縮む…!!
〈絶対時間〉(エンペラー タイム)の制約が明かされました。つまりは、「発動時間の3,600倍」の寿命が減っていく……。「長時間 使っていると寝込むくらいに疲れる」程度のデメリットでは なかった。
一週間も発動すると、約69年の寿命が消し飛びます!
「クルタ族は妖怪(例: 蔵馬)並に長寿の種族」──といった可能性は薄い。「(現実的では ないな……
)」というクラピカの独白から考えて、せいぜい他の人間と同じ80-100歳ほどの寿命でしょう。
──ん? ドン゠フリークスは、暗黒大陸を300年以上も冒険しています。究極の長寿食〈ニトロ米〉をクラピカがモリモリと食べれば問題は解決か!?
(「ドラゴンを倒すには、ドラゴンが飲み込んだ剣で斬れば良い」みたいな無理難題)
むなしい戦利品
〈虚空拳〉(エア ブロウ)は、ビンセントの動作から考えて、おそらく放出系でしょう。または、「強化系で威力を増した掌打から空気銃のような飛道具を打つ」──といった念能力だと見ました。
「コブシ」ではなく「手のひら」じゃねーか! とツッコみたくなるのは〈波動拳〉と同じ。
いずれにせよ、〈エア ブロウ〉の発動条件は それほど難しくはないはず。
──「頭を丸めて眉を剃る」という「覚悟」を乗り越えた末に獲得した「制約と誓約」かも しれませんが。
ただ、どう考えても戦闘用の能力で、しかも一発しか打てません。名前の とおりに、誰もいない「虚空」に打って終わりそう。
(──という予想の「その少し 斜め上」を行ってほしい。たとえば、この〈虚空拳〉こそがツェリードニヒから〈緋の眼〉を奪う決定打になる、とか。絶対ムリだけれど)
死を呼ぶ四
もっと悩ましい状況が最後に待っていました。
ベンジャミンは分かるが、さらにチョウライとツベッバまでクラピカを呼び出してきました。この間の悪さは わざとなのか?
おまけに、新たな刺客としてバビマイナが送り込まれてきました。「三下感」が強かったビンセントと違って、バビマイナは そうとうの切れ者だと感じます。
いったい、誰の相手を最優先に するべきなのか?
今回は、「答えは沈黙
」では終わりません。
普通に考えれば、優先順位の最下位はバビマイナでしょう。王子よりも優先する理由は皆無です。
ただし、バビマイナを送り込んだのはベンジャミンでした。バビマイナよりも先に他の王子と話したら、それはそれで反逆行為と みなしてきそう。
やはり、最優先するべきは第1王子・ベンジャミンですね。
その上で、第3王子と第5王子には「第1王子に呼ばれた」と答えるしかない。──なんだか ありきたりな答えですが。
というか、各王子に事情を説明するのは交換台の仕事なのでは?
おわりに
今週号の「ジャンプ」には、『ONE PIECE』の20周年を記念した企画が載っていました。題して「マンガに隠れた麦わら帽子を探せ!!!!」です。ルフィの被っている麦わら帽子が各マンガに隠されていました。
我らが『H×H』も企画に参加しています。それどころか、なぜか他の作品のアイテムまで盛り込まれている!?
- 阪神タイガースのロゴ(作者・冨樫 義博氏の趣味): 1ページ目、下のコマにいるクラピカのジャケット
- 「ジャンプ」の海賊マーク: 2ページ目、「もっとも危険なのは お前だ」のコマ
- ゴルフのクラブ(『ROBOT×LASERBEAM』): 7ページ目、ドンと飛び出すビルのコマ
- 磯兵衛のマーク(『磯部磯兵衛物語』): 9ページ目、ビンセントの上着
- 竈門炭治郎の耳飾り(『鬼滅の刃』): 11ページ目、「
貴様を 拘束する
(キリッ」と宣言するクラピカ - ルフィの麦わら帽子(『ONE PIECE』): 12ページ目、1コマ目にいるビンセントの頭上
- E = mc2の公式(『Dr.STONE』): 13ページ目、4コマ目のカベ
- 制御装置(『斉木楠雄のΨ難』): 14ページ目、2コマ目にいるバルサミコの前
- サッカー・ボール(『キャプテン翼』──もとい『シューダン!』): 16ページ目、3コマ目のカベ
- 定春の置物(『銀魂』): 18ページ目、4コマ目にあるテーブルの上
麦わらとは違う帽子も出てきました。しかも2か所に描かれています。おそらく麦わらとの引っかけでしょうね。
が、個人的には『家庭教師ヒットマン REBORN!』のリボーンが被っている帽子だと思いたい。
- 帽子 1: 3ページ目、1コマ目のカベ
- 帽子 2: 17ページ目、4コマ目にいるドルフィンの模様
この帽子の種類をネット上では「シルク・ハット」と呼ぶ人も いました。しかし、これは「ソフト帽」・または「中折れ帽」でしょう。
あと、『青春兵器ナンバーワン』が個人的に好きです。でも、冨樫先生の お眼鏡に かなわなかったのか、今回のネタには入っていませんでした……。ネジを一本 仕込むだけなのに!
『こち亀』最終回の掲載号でも「両津 勘吉のマユゲ」を作中に登場させる企画がありました。ほとんどの作家は、目立たないように隠してマユゲを描いています。この企画を正しく理解していたワケですね。
ところが、『トリコ』がスゴかった。
かなり重要で感動する場面なのに、全力で「台無しの時間」にしていくスタイル! ギャグを押し出した作風の初期なら分かる。しかし、物語の終盤も近く、マジメな展開が続く時期でした。
そこへ「シリアスな笑い」をブチ込んでいく!
【トリコ 387話ネタバレ】トリコ、覚醒!!→両津化ワロタwwwwww【画像】 : 最強ジャンプ放送局
ところで、本当に両さん愛に あふれているのであれば、すべてのコマの全員を「両津マユゲ」に しても良かったはず。その上で、いつもの作風を押し通す。──そういうマンガが一作でも あれば良かったのに。
それこそ、初期『トリコ』だったら、ごく普通にトリコと勘吉を戦わせたと思う(そして作者・しまぶー本人が「秋本先生、すみません!」と作中で謝る)。
今回の題名は「泣く子と地頭には勝てぬ
」から借りました。「道理の通じない者や権力者にはどうやっても勝てないから、無理を言われても従うしかない
」という意味です。改変する前から本編に合った言葉ですね。
ただし、「泣く子」も「王子」もワブルが当てはまるけれど。ついでに泣き止んでるし。