『バクマン。』 32 ページ 「電話と前夜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 19 号)
大半の読者(自分を含む)が読み飛ばすであろう、金未来杯の結果がジャンプ誌上に載った。
佐々木編集長苦肉の決断
などと書かれている。『バクマン。』の作中では、本当に編集長が迷った上で受賞作品を 2 本にした。しかし、もし、このような事が現実のジャンプに書かれていても、「どうせオトナの事情か何かだろ」と思ってしまう。
どうして書いてあることを、そのまま信頼できないのだろうか?
(ヒント: たまに連載 2 回目で「早くも大反響!」とか書いちゃうから)
──こういうときに「オオカミ少年」のひと言で説明ができるから便利だ。調べてみると、イソップ童話の「嘘をつく子ども」が正しいらしい。思った通り、類似の話がたくさんある。面白い話が多い。
ウソつきは愚かしさから来るはずだが、ウソには高度な知恵が必要である。人間だけにできることだろう。
──そう思って自分の家にいるネコを見ると、
「ニャー!(訳: メシはまだか、よこせ!)」
と、パンパンにふくれあがった腹で言う。人間でなくともウソはつけるようだ。
ネームの詰めに
読者に結果が報告されたころ、とっくに金未来杯は参加者の中では終わっている。サイコーとシュージンは、連載に向けて準備に忙しい。
今週号を読んで何度も錯覚したが、まだ「福田組」の誰も連載が決定していないのだ。なんだか、当然のように『疑探偵 TRAP』と『KIYOSHI 騎士』は連載が始まるように思ってしまった。実際は『hide out door』だって、どうなるか決まっていない。3 作品とも載って欲しいものだ。
ここで新妻先生が「自分の嫌いな漫画をひとつ終わらせる権限」を発動すれば、福田組の作品が載りやすくなる。さて、切られる作品はなんだろうか──という展開には、ならないと思うが。
会議でフォロー
すっかり昔の話になったが、亜城木夢叶のデビューは高校の卒業後、と服部は考えていた。それが今では、サイコーとシュージンが高校に行きながら連載を始めることを、服部のほうから応援している。
猛反対していた人物こそが、のちに最大の支援者になることは多い。『美味しんぼ』でもよく見た。
それは現実世界でも同じ──と言いたいところが、親はいつまでも「世間と違ったこと」には反対を続けるものだ。ザ・コレクターズの加藤ひさし氏は「まあお袋は、今でも「就職しろ」って言うけどね
」と語る。
ネームは 10 話
ここで、サイコー・シュージンに服部が描かせたネームが生きてくる。いよいよ連載が決まりそうになってから準備するのではなく、すでに金未来杯の前から連載を想定したネーム作りを進めていた。
連載会議に出せるネームは 3 話なのに、すでに亜城木は 10 本以上のネームを描き上げている。普通はデビュー前にここまでしない、と以前に服部自身も語っていた。週刊少年ジャンプで連載するからには、これくらいの準備はするべきだ、という服部の考えだけで亜城木にネームを要求したのだ。
このやり取りを見ると、やり手のベテラン編集者の手口に思える。それは、原作者の大場つぐみさんの理想でもあるのかもしれない。準備の足りていない連載が無残に打ち切られるのを見て、嘆いていたのだろうか。
連載会議前夜
普段は雄二郎をバカにしている自分だが、今週号のラストでは雄二郎が格好良く見えた。
改めて見ると、雄二郎は新妻エイジという作家の担当であり、さらに福田・中井も世に出そうとしている。エイジの持ち込み原稿を取ったのは偶然だが、福田と中井を育てたのは雄二郎だろう。ストキンの準キング・蒼樹と中井を引き合わせたのも、ひょっとすると雄二郎かもしれない(相田の可能性が高いが)。
そう、世間では雄二郎のような人を「敏腕編集者」と呼ぶのだ。
どちらかと言うと、いまだにヒット作がない服部(哲)のほうが、編集部での居場所を問われる立場だろう。服部好きの自分には不満が残るが……。
連載会議に出されるネーム
ジャンプ編集部でのネーム原稿の取り扱いが面白い。
ネームの感想を誰が読んでも良いとされ
ているのは分かる。しかし、読んだ感想が ネームの入った封筒に 書き込まれる
のは疑問だ。感想を貼り付けている人もいるようだが、はがれたりしないのだろうか。
たぶん、初めはキッチリとした「感想用紙」を作って別で集計したり、封筒に入れていたのだろう。それが、いちいち用紙を集めるのが面倒だとか、封筒を開けないと感想が分からないのが不便だとかで、今の形になったのではないか。
それはともかく、ネームの感想を良く読むと、敬語で書かれながらもキツいことが書いてある。妙にリアルだ。ひょっとして、本物を使っているのでは……。
ネームを読む編集者の声も恐ろしい。
「また この先生 駄目そう……
」
『チャゲチャ』の先生のことかーーーーーーーっ!!!!(そんなこと書いてない)
イミフwwwうはwwwwおkwwww 悟空「クリリンのことかーーーーーーーっ!!!!」
亜城木くんの評価
意外にも雄二郎と服部の会話は続いている。これほど長く二人が会話をしたのは、『バクマン。』では初めてのことだ。
雄二郎が妙にスタイリッシュなのも違和感がある。CV: 山寺宏一、という感じだ。──完全に自分の中ではスパイク・スピーゲルのイメージになっている。
いままでの雄二郎には、いい加減で出世欲のカタマリという印象が強かった。福田・中井の連載が色濃くなり、急にマトモになってきたのだろうか?
ここで、(このブログらしく変な)仮説を立てる。「雄二郎はジャンプ編集部のディーノ説」だ。──なんだか双方のファンから袋だたきにされそうな説である。
家庭教師ヒットマンREBORN!の登場人物: マフィア関係者 – Wikipedia
ようするに、ディーノが部下の前でしか実力を発揮できないように、雄二郎も後輩である服部の前だと「編集パワー」(なんだそりゃ)が上がるのだ。その真の実力は、編集十刃(エスパーダ)の中でも、一二を争うほどだと言う(なん……だと…… !?)。
──まぁどうせ、4 番手あたりに「ツバサ生えてドン!!!」で抜かれるのだけれど。「仮面かぶってウガガー!!!!」とか。
そうやってマンネリのインフレ展開の中、最近の『PSYREN -サイレン-』は良い。キャラクタを使い捨てにしたり「サシミのツマ」的に出していないのだ。
また、いつものように話が脱線している。でも、こうやって服部と雄二郎は、飲みながらマンガ論
を交わしているのだろう。うらやましい。自分も加わりたいものだ。
上で雄二郎の出世欲について書いた。しかし、たんに金もうけのため、ではないようだ。連載会議のことを楽しそう
と語っている。これは良い。雄二郎を見直した。
願わくは、世のマンガ編集者のみなさんも、楽しい・面白いを基準にマンガを作って欲しい。心から、そう思う。
