料理マンガと味見
つい先日のこと──。バーテンダをやっている女友だちに、こんな質問をしました。
「バーテンダは、カクテルを作る時に味見をするの?」
すると友人は、こう答えました。
「わたしは、必ずテイスティング(味見)をする。たとえ熟練したバーテンダでも、いつも 100% のカクテルを作るのはむずかしいし、わたしの技量はまだまだだから」
語られた内容とは逆に、彼女の口調と表情から、プロの意識と自信が感じられます。いい話を聞けて、すがすがしい気持ちになりました。
──自信に充ち満ちた、彼女の重い言葉。
──その上にフロートする、「むしょく」透明な自分。
両者は混ざり合わないことによって、初めてカクテルが完成する(いやいや、働けよ)。
参考: カクテル #カクテルの作成技法 – Wikipedia
上の質問をしたきっかけは、バーテンダの彼女に貸してもらった『バーテンダー』です。このマンガは大好きで、過去に感想を 2 つも書きました。
『バーテンダー』の主人公である佐々倉溜(ささくら りゅう)は、カクテルの作成中にテイスティングをしません(修業時代は別)。彼の作るカクテルの味は「神のグラス」と呼ばれている
──という佐々倉のことだから、長年のカンだけで完全に味が把握できるのでしょうか?
とはいえ、ほかの人物も同様に味をみない。だから、現実世界でも同じなのかな──と思ったのです。
自分の知らない世界が友人の口から語られるのは、本当に面白い。インターネットなどで知る情報よりも、自分の血肉になっていく。
ここから先は話の範囲を広げて、カクテルだけではなく料理全般を描いたマンガでの味見について、思うままに書いていきます。