鬼頭莫宏一覧

『のりりん』 6 巻 鬼頭莫宏 – 山高く道長し

鬼頭莫宏 『のりりん

Mt. Fuji From Hakone
そこに山があるから──登るしかない

トラベルにはトラブルが付きものです!
前巻からツーリングが始まりました。それぞれのロード・バイクも着ている服もバラバラで、力量も違いすぎる。本人たちは楽しそうでも、見ているほうは不安に なってきました。

『のりりん』 5 巻 鬼頭莫宏 – 旅は「道」連れ | 亜細亜ノ蛾

とくに、「カラモモさん」こと杏 真理子(からもも まりこ)が行方不明で心配していました。連絡すら取れないなんて、現代の女性には考えられない異常事態です。
なるたる』や『ぼくらの』の作者・鬼頭 莫宏のことだから、杏も複数人で輪■のレ■■されている(※)のでは──なんてワクテカ心配していたら、なんと!
カラモモさんが──、車に

2013/01/10 現在、前巻の 5 巻までは電子書籍版『のりりんAndroid 携帯からも閲覧可能!)や Kindle 版『のりりんが登場しています! この機会に ぜひどうぞ!

続きを読む


『のりりん』 5 巻 鬼頭莫宏 – 旅は「道」連れ

鬼頭莫宏 『のりりん』

Litespeed Blade
いつの間にか──日常風景

嵐の前の静けさ」という感じの 1 冊でした。

主人公のノリ(丸子 一典)とリン(織田 輪)がノリ用のロード・バイクを組み上げて、みんなでツーリングに出かける──と ひと言で言い表わせる内容です。

ところが、なんだか不安になってくる──。

同じ作者の『なにかもちがってますか (2)』も、いろんな事件が巻き起こる寸前の ふんいきでした。『のりりん』は「そういう作品」じゃない──と思いたいですが。

続きを読む


『のりりん』 4 巻 鬼頭莫宏 – 老いた松が手渡す刃

鬼頭莫宏 『のりりん』

IMG_4864
(その刃は──丸く収まらない)

「『のりりん』って どんなマンガ?」と聞かれれば、「ラーメン屋の おばさまが語る自転車の うんちく話に萌えるマンガ」と答えます。「なんでラーメン屋?」と聞かれたら、「んがぐぐ」ですけれど。

前巻までの感想はこちらです!

『のりりん』 1~3 巻 鬼頭莫宏 – 性格の悪さが実力差を埋める | 亜細亜ノ蛾

4 巻では、とくに「語り」の傾向が強かった。なにしろ自転車に乗っている場面が すくない。

読者が まったく知らなかった・興味がなかった世界のディープな話を延々と語っていて、それでも面白いのは驚異的です。また、650C 規格の話などは、ロードバイクに詳しい人でも楽しめるはず。

自分の得意なジャンルで たとえると 4 巻は、「キーボードは QWERTY 配列が大多数の現在に、Dvorak 配列AZERTY 配列の逸品を探す」みたいな話でした。

──まず、「キー配列に種類がある」ことを知っている・意識している人が少数だろうし、上記のアルファベットを見た瞬間に脳が情報を遮断してしまった人が大半のはず。

キーボードに詳しい人は、逆に「いやいやぁー、ここは日本なんだから、親指シフトのことを語ってもらわないと困りますよぉー」などと「たいへん気持ちが良い」口調で しゃべり出したくなる。

どちらの読者にも楽しめる内容で、しかもマンガにしようとなると、とてつもなく難易度が高い。

「人間、生きていれば小説の一本は書ける」といった言葉があって、誰でも得意分野の話なら本 1 冊分くらいは書けるそうです。しかし、マンガはムリだ。描いてみると分かるけれど、4 コマ・マンガですら形にすることは難しい。

恐ろしいほどの話の構成力に酔える一冊でした。

続きを読む


『のりりん』 1~3 巻 鬼頭莫宏 – 性格の悪さが実力差を埋める

鬼頭莫宏 『のりりん』

1999 Ford Mustang Cobra rear detail
(出会いは偶然──別れは必然)

なるたる』・『ぼくらの』といった「すこし(どころじゃなく)・ふしぎ」な作品を世に生み出し、メルヘンチックな世界を想像した少年少女の心をへし折った鬼頭莫宏先生が、まさか「自転車乗り」を描くとは思いませんでした。

生まれて初めて幼稚園のころに買ってもらったのは『ウルトラマン』が描かれたイカす自転車で、それ以降はママチャリばかりだった──という自分でも楽しめるマンガです。

新年そうそう・2012 年 1 月 6 日『のりりん (4)』に発売されるこのタイミングで、3 巻までの感想を書きます。

同じ日に発売される『なにかもちがってますか (2)』みたいな世界観になっていないか期待──もとい不安ですけれど。きっと、いままでのような「邪悪な路線」は『なにか』で描ききって、おそらく『のりりん』は平穏無事な展開でしょう。たぶん。

作者である鬼頭莫宏氏のウェブ・サイトを見ると、最近は見事にロードバイクの一色で染まっています。よっぽど好きなんだなー。

パズルピースがこんなとこ
パズルピースがこんなとこ

講談社の作品紹介ページから、『のりりん』の第 1 話が試し読みできます! 自転車の好き嫌いを置いておいて、純粋にマンガ作品の初回として最高レベルの仕上がりをご覧ください。

イブニング|のりりん|作品紹介|講談社コミックプラス

続きを読む


『なるたる』 9~12 巻 鬼頭莫宏 – 少女は地球(ほし)に夢を描く

『なるたる』 – 作・画: 鬼頭莫宏

Torii(Sacred arch)@The Itsukushima Shrine
(いつかまた会える日まで──)

いよいよ終盤まで来ました。

──というタイミングで、いきなり「ロシア編」(仮名)が始まります(『なるたる (9)』 第 45 話 「ロシアの母」)。

これまでも、主人公である玉依シイナ(たまい しいな)の周辺にいる人物を中心とした、短編のような話はいくつかありました。

ところがロシア編は、妙に長いのです。それでいて、竜の子や成竜の核心に迫っているかというと──そうでもない。「竜は、世界各地にいるんだな」程度の印象でしたね。

なるたる (10)』も「米軍編」(またまた仮名)からスタートする。こうやって、短編をつないだオムニバス形式の作品にするのかな──と思わせて、主人公たちにリンクさせてきます。

そして──、この上なく残酷な結果を見せる。

続きを読む


『なるたる』 5~8 巻 鬼頭莫宏 – 天使と華と歯の生えたモノたち

『なるたる』 – 作・画: 鬼頭莫宏

Vienna Natural History Museum - 95
(たしかに、歯が生えていたらコワイ──)

作品も中盤まで来ると、ラストにつながるような伏線がいろいろと張られるようになります。

とくに、鶴丸丈夫(つるまる たけお)と古賀のり夫(こが のりお)のキャラクタを掘り下げる場面が多い。何ということのない話でも、あとの展開につながってくるため、読んでいて気が抜けません。

そして、残酷な描写も増えてくる……。

偶数巻の悲劇」という言葉を、これから『なるたる』を読む人は頭の隅に置いておくといいかも。あ、これは余計なお世話(という名のネタバレ)だったか。

続きを読む


『なるたる』 1~4 巻 鬼頭莫宏 – 海に沈むホシと出会う少女

『なるたる』 – 作・画: 鬼頭莫宏

Sommermorgen
(華の甘い芳香に誘われた者は──)

『なるたる』は、メルヘンチックな童話です!

──頭に「本当は恐ろしい」が付く童話だけど……。

この作品が「月刊アフタヌーン」で連載していたころに、第 1 話から読んでいました(途中で「アフタヌーン」ごと買わなくなった)。その当時は、「小難しいことを話すキャラがいるな」程度の印象でしたね。

ところが、単行本でまとめて読むと、じつに面白い!

ただし、人に伝えにくい面白さを持っている作品です。よく比較される『新世紀エヴァンゲリオン』(旧ゲリオン)や『最終兵器彼女』とも違う。

いわば、「不愉快な痛快さ」を感じる作品です。

少年マンガにアリガチな、「悪を倒して正義が勝つ!」というストーリィ展開に飽きたら、『なるたる』の世界を見てみてください。おそらく、次回作の『ぼくらの』にも手を伸ばすことになりますよ。

単行本は全部で 12 巻ありますが、長い間、絶版だったそうです。出版社側の都合なのか、内容が問題なのか、どちらかは知りません。幸いにして、現在では普通に購入できます。下のリンクからぜひどうぞ!

今回から 3 回連続で、4 巻ずつに分けて感想を書いていきます。まずは、比較的おだやかな展開である、1-4 巻の感想からですね。

続きを読む