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θは遊んでくれたよ

前作とは雰囲気が一変した、G シリーズの第 2 弾です。

『φは壊れたね』 森博嗣 - ミステリィのリアリティとは : 亜細亜ノ蛾

一人が死亡した密室事件の謎を描いた『φ』(ファイ)に対して、『θ』(シータ)では屋外で複数人が転落死する。。どう見ても自殺だが、死体にはそれぞれ「θ」のマークが書かれている──。

死亡した人たちの共通点は? シータの意味とは? そして、前作のファイトは関係があるのか──?

本作の目玉は、意外な人物の再登場です。いや、犀川創平(さいかわ そうへい)・西之園萌絵(にしのその もえ)・国枝桃子(くにえだ ももこ)、と前シリーズからの登場人物が出ている時点で、ある程度は予測できていたのですが……。

1 作目の『φ』は、正直、物足りなかったのですが、2 作目の『θ』を読むと、ひとつの大きな意志のようなものを感じます。一つ一つの事件は余韻も残さず終わっていくのに、じつはまだ事件の真相を見ていないような……。

普段から「死ぬまでに書いた全部を一作と見て評価してもらえれば良い」(『森博嗣のミステリィ工作室 (講談社文庫)』 p.175)と言っている作者らしい作品の構造ですね。

主人公はだれ?

本シリーズの主人公は、だれだろう?

もともと、このシリーズは「Q シリーズ」と呼ばれていました。探偵役が海月及介(くらげ きゅうすけ)なので(「空条Q太郎」みたいなセンス)。ただ、彼は無口なので、友人の山吹早月(やまぶき さつき)がいないと場が持たない。

綾波や長門は主人公くらいの人気だけど、彼女たちが本当に主役を張ると、30 分間のアニメを作るのは難しそう、みたいな(何の話?)。

そうなると、ほとんど「(無能な)読者の代弁役」である語り部──ワトソン役(?)の加部谷恵美(かべや めぐみ)が主人公でしょうか。

トリックについて

本作もまた、「やられた!」と叫びたくなるトリックです。

トリックと謎解きに力を一番そそぐ──、という作品ではないせいか、探偵役の海月も淡々と推理を語り、真相もはっきりとは書かれていません。

そのため、簡単なトリックだ、と思った人も多いのでは。

しかし、読み返してみると、トリックの隠し方が巧妙です。ちゃんと読んでいれば分かる、というギリギリを突いてきます。

「良くできた、だれでも解けるパズル」みたいに、答えを聞いてすぐに納得できる。そんな仕掛けでした。

しかし、繰り返し書くと、事件の真相は明かされていないんですよね。なんといっても森ミステリィなので、これで解決と見ていいか、不安が残ります。

「ふ」女子発見

うーん、それにしても加部谷は主人公にしては、キャラが薄いなぁ──と思っていた結果がこれだよ!。

こうなったら、山吹のアパートへ今晩押しかけてやろうか、という作戦も浮かんだが、どうも不謹慎な光景ばかり頭を過(よ)ぎって、それを振り払うのがやっとだった。

『θは遊んでくれたよ (講談社文庫 も 28-35)』 p.61

この場面は、「女子がひとりで男子の家に行くなんて──」ではなくて、山吹の部屋へ海月が一緒に帰って行ったあと。つまり、山吹と海月が──という妄想。駄目だこいつ…… 早く何とかしないと……

MORI LOG ACADEMY くらいしか読んでいない読者がこのような描写を読むと、ビックリするかもしれません。または、「おじさんが無理して書いているなぁ……」とか。

その昔、同人サークル「グループドガ」を主宰し、同人誌即売会「コミックカーニバル」を開催していた、森博嗣さんお得意の人物描写なんですけどね。本当に、中性的な人物の描写が上手です。ほかの作者だったら、加部谷も語尾を「──わ」と話していることでしょう。

まとめ

出だしが不安だった G シリーズも、これから期待できる、と確信できた。早く次作を読もう。

そういえば、前のシリーズと比べると、事件ごとに「天才」キャラが出てこない、というのも物足りない原因かも。そうか、天才はもう、あの人だけで十分なのか……。

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