『四季 冬』
『四季』四部作の完結編。しかし、いったい、何が終わったんだろう?
『冬』はいつの話なのか、はっきりした描写がありませんが、「S&M シリーズ」や「V シリーズ」よりも後の話であることは間違いなさそうです。そして、四季の「これから」について暗示している場面が多いのです。
彼女は、どこへ向かうのか?
どこへ行くのか?
冒頭に書いた疑問の答えとして、懐かしい場面が四季の中で再生されます。
「私たちは、どこへ行くと思います?」
「どこへ?」
「どこから来た? 私は誰? どこへ行く?」
「貴女は、貴女から生まれ、貴女は、貴女です。そして、どこへも行かない」
『四季 冬』 p.208
そうそう、終わりの方で『有限と微少のパン』の一場面が出てきます。四季からの視点で「あの場面」を見るのですが、四季の天才性を端的に示した、いいシーンですね。これ、他の作家が書いた「天才といわれているキャラ」でマネができる人物って、どれくらいいるのだろう……?
──あ、"L"ならできるかな(ここ、読み流すように!)。
わからない!
全編、詩的な表現がちりばめられています。四季がすぐ思索にふけるのが、まるで、某警部が主人公の海外ミステリィ作品のよう(全く似ていないが)。
中でも面白かったのがこの部分。四季にしては珍しく「わからない」ことがあり、それが理由で人に会うのが楽しみになった、と彼女は言う。
「自分に新しいところがないのに、他人に会ってもしかたがないでしょう? そういうのは苦痛」
「それ、僕には意味がわからないよ」
「そうね、男性にはその概念がないのかもしれない。塗り分け問題のようなものなんだけれど」
「それ、よけいわからないよ」
『四季 冬』 p.31
確かに(男性の)自分も理解に苦しみますが、自分の知り合いの女性が、これと似た発言をしていたのを思い出しました。女性には、よくわかる感情なのでしょうか?
男性にはない概念を使った、つまり男性読者の盲点を突いたトリックが書けるのでは、と発想しました。
また、過去の事件について四季に尋ねるシーンも疑問。
「(……)失礼かと思って遠慮していたけれど、やっぱり、いつかはきかなければならないと思っていたことがあるんだ」
「何?」
「彼が命乞いをしたら、殺さなかった?」
『四季 冬』 p.102
その問いに対する四季の答えが、とても意外でした。「彼」の言動の謎も、『四季』シリーズで何となくわかりましたが、四季の思考はトレースできませんね。
やはり、この作品に相応しい言葉は「わからない!」ですね。わからない、で正解、という感じ。森ミステリィから勝手に学んだことのひとつが、「わからない、と言うのは思考の放棄だけではなく、わからないのが正解ということもある」ということですね。
まだしばらくは、四季という女性、そして森作品に対して「わからない!」と叫び続けたいです。──そう、百年ほど。
