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鬼頭莫宏 『のりりん

Renault Spider 余計な物を取り除き──新しい世界へ

堂々の完結を迎えた第 11 巻です!
──え? もう終わったの!? という思いが正直な所では ある。しかし、「打ち切り感」は少なくてスッキリした終わり方が好印象でした。
いろいろな伏線が、答え合わせのようにパタパタと閉じられていきます。まさか、この作品に「叙述トリック」が仕込まれているとは思わなかった!
また、単行本の特典として、「リンの お母さんの秘密(意味深)」が描きおろしで追加されています。連載派の人も要チェックですよ!

ひなたと雨

自転車の話で時間を忘れる。この作品らしい場面です。
中 日向の乗っている自転車も ある意味ではマニアックですね! ママチャリ規格なタイヤを履いているけれど、どれだけ 楽に遠くに 行くかを追求している。
効率を最重要視するロードと、ヒナタの自転車は、志は同じ方向を向いています。


急に降り出した大雨で、男女は雨宿りする。
お互いに濡れた体で、おまけに二人ともメガネ──(?)。「ナチュラル・ボーン・モテ男」なノリですが、さすがにヒナタとはモヤモヤした関係(?)に ならなかった。
今のところは──。

空元気と継続力

いつものように(カラ)元気な若江 南です。
門真 洋一にケンカをふっかけて──もとい勝負を挑んでいる。ところが、意外なことに、アッサリとドマチが快勝してしまう。読者からすると、「ドマチの格好良い所」をほとんど見ないままで終わってしまいました。
それが彼の持ち味だけれども。


じつは、普段からドマチはロードに乗っています。
等々力 潤と一緒に坂道を上ったりして鍛えている。──という説明が数コマだけ過去に出ていました。忘れ去った読者が大半でしょう。

ドマチとトドローが並走している姿を想像できません。
と言うか、走りの前後は どんな会話を交わしているかな? 軽い あいさつ以外は無言、とか……。
いや、トドローは無口と言うよりは必要な事だけ話すタイプだし、ドマチは誰とでも話を合わせられる(ワリには一定の距離が空く)。案外、話も気も合うコンビかもしれませんね。

10 年越しのトリック

三ツ渕 進は、風のように突然 現われました!
髪型(と言うか金髪)と服の印象から、「チャラ男」にしか思えない。どう見てもリンとは合わない感じがする。
ところが、「優しくて 寡黙な感じの かっこよか人」とリンは評価しています。完全にダマされているか勘違いしている!
プロだけあって、リンですら全力で追いかけたのに追いつけなかった。誰よりも速い──強い男だから惹かれるのか?


そんな「アコガレの人」が「死ねよ くそ」と叫ぶ。
さらに、「方言を地元の人間じゃ ないのに 使うのって 感じ良くない」とまで面と向かって言われてしまう。「ノリと同じこと」を言われて、さぞかしショックを受けたはずだ。幻滅しただろう。
──と読者は誰でも考える。

しかし、作者の仕掛けた恐るべきワナだった!
「10 年間ずっと気になっていた人」は、絶対に引っかかる叙述トリックです! リンは、肝心なことは話さない。奥手な彼女だからこそ成功したトラップでした。
くやしい!(満面の笑みで)

言葉で離れる・繋がる

ヒナタとリン、シンとノリ、2 組の関係が似ています。
ヒナタとシンでは、性格が正反対くらいに違う。それなのに、同級生と打ち解けない理由は同じでした。この時点で、もうすでに運命を感じますね!


リンが博多弁を話す理由も分かりました。
ちゃんと説明したらノリも納得したはずなのに、どうしてリンは黙ってしまったのだろう? それくらい、自分が やって来たことを全部否定されたみたいに傷ついたのでしょうね。
一方、「のりりん」という間違った言葉の由来が ほほえましい。ネイティブ博多っ子から「私の故郷には そんな言葉は存在しません!(博多弁)」という抗議が多く寄せられたのでは? しかし、当然のように作者の計算どおりだった。

初恋が今恋

二人を見守る杏 真理子が切ない……。
初めて 好きになった 人は、誰でも特別な存在です。大切にしたいと思う。カラモモのことだから、ノリのことは あきらめて、リンに譲ってしまうに違いない。
ミムやミナミからは、「告白しなかっただけマシ!」とかなんとか慰められるでしょう。「ウチのノリがスイマセン飲み会」とか なんとかで盛り上がったりして。
(──で、飲み過ぎたオニモモさんが何か やらかす)

今後のカラモモさんは どうなるか?
なんとなく、トドローと くっつきそうな気がする。「初対面が最悪」からスタートするのは、ラブコメでアリガチな展開です。

これからも続く道

「リンが好きな人は誰なのか?」
ニブニブ王子様のノリ以外は、最初から全員が分かりきっている単純な話でした。
それにしても、おそらくミナミからも何も聞いてない東 均まで悟りきっています。あいかわらず察しが良くて、最後まで良いキャラでした。

二人の距離はどのくらい?
──そんな関係が、まだまだ しばらくは続きそう。最後のページのシルエットを見れば分かる。
ロードも恋も楽しんだ方が 勝ちです!

おわりに

「作者が楽しんで描いている作品」
──よく聞くフレーズですが、創作者に対する無礼な文句とも言える。もちろん、上記のことを言う人に悪気は ないでしょう。むしろ自分の好きな作品を紹介するときに聞きます。
とは言え、「話を作ること」とは、「自分の言いたいことを書くこと」では ありません。それはツイッターやブログに書けば良い。または、エッセイにして発表するべきです。「創作」の意味を今一度 考えて欲しい。

とは言え、世の中には例外も ある(手のひら返し)。
どう考えても、『のりりん』は作者が好きなことを好きなように描いたマンガですよね! 作者の考えを代弁するような場面も多かったはず。それが説教くさくなくて良い。
登場人物たちを通して、作者と親密な会話を楽しめました。ノリやリンの今後は見られなくても、また自転車を題材にして描いて欲しい!


連載は終了ですが、同人誌という手もある!
オイちゃん(老松)と陽子さんが、延々とロードの話をする話が読みたいです! 絵は下描き状態で良いし、セリフも手描きで良いでしょう。とにかくダラダラと二人が会話している場面を見たい!

「病気」なほどロード好きなリンママさんです。
彼女の事だから、客なんか放っておいて、自転車や自動車の話題を提供し続けるでしょう。江端 宗弘クマ)やドマチ・ノリなど、それなりの車マニアもドン引きする知識量かも。
で、オチは、お父さんのさんが「早く食え! (ラーメンが)伸びきっちまうだろうが!」


小月 優は何をしているのだろう?
ウソの手紙まで出した手前、簡単にはノリの前に現われないはず。そのことからも、まだノリのことを好きなのでは──?

シンと再開すれば、オヅもノリの様子を聞ける。
しかし、なんだかんだ言って憎めない性格のシンだから、二人の友人ことを考えるはず。「ノリは、新しい彼女と仲良くやってたぜ」とか何とか言うでしょう。
二人の背中を押して、一人だけで厳しい勝負の世界へ戻っていく。シンは、そんな人物に見えます。


この作品とは関係なく、ジョギングを始めました。
もともと短距離走の選手だったため、自分の体を 動かしていることによる 充実感を久しぶりに思い出します。走り終わったあとは疲れているのに気持ちが良い。

でも、スピードによる満足感は自転車には勝てません。
地球上の生物のなかで、持久走に関しては人間が一番らしい。自転車に乗れば速度もトップでしょう。
こんなに 日常にありふれた それでいて 特殊な乗り物に またがれば、誰でもハレの世界に到達できます。

すべては速度のために──快感のために乗る。
原点は動物的な動機で ありながら、きわめて人間的な理性も要求されます。なんという自分勝手で高尚な趣味でしょうか!

おわりのおわりに

ここで、別の作品のことが思い浮かびました。
「10 年前の初恋相手を探す女」のことを「男は忘れている」。そんな「鈍感な主人公」は、なぜか「女の子にモテモテ」です。

──これ、思いっきり『ニセコイ』とカブっているッ!
どちらも主人公が、「ナヨナヨしていそうで男気がある」点も共通しています。

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さて、ここで改めて疑問が わいてきました。
ニセコイ』の場合は、ヒロインと主人公は小学校の低学年で出会っています。だから、高校生の時に 10 年ぶりの再会をしても、お互いに覚えていなくても当然と言える。
ところが、『のりりん』では、高校生のノリが小学生のリンと出会っています。しかも、リンの外見は現在と まるで変わっていません。
シンですら覚えている印象深い女の子を忘れてしまうものか? たとえば、「小学生の ころ、リンはショート・ヘアだった」みたいな分かりやすい味付けだって可能だったはずです。
なぜ、ノリはリンに見覚えが無かったのか?

ということで正解(?)です。
答えは、「すべては第一話で接触事故を起こしたノリの妄想だった」ですよねー! リンは もちろん、同乗者も すべて他界した今、残されたノリは病院のベッドで後悔の日々を送っている──。
と、「あの」鬼頭 莫宏先生だったら、それくらいの非情なエンディングを用意しているかと思いました。 ノリとリンとの勝負の途中で、急に場面が飛んだときには「やはり来たかッ(ガタッ」とワクワクビクビクしたものです。
そんなワケは ない、と断言できるだろうか──。

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